植物用語辞典 利助流家元版

ハ行


【バイオマス】ばいおます
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生態学上の概念で、特定時点に於ける特定空間(二次元のみならず)の生物の量、を意味している。用語として一般的なのはバイオマス(Biomass)であるが、植物生態学ではStanding crop(残存、現存量)が一般的。
意味するところは様々で捉えどころのない概念であるが最も一般的なのは生物資源の意味で、バイオマス資源、バイオマス燃料、などと用いられる。

指標である以上、意味のある数値と単位で示されるが非常に難解で、私如きが解説できるものではない。(はっきり言えばよく分からん^▽^;)
現象として目視できるのは護岸を崩した際の変化で、形成された湖岸湿地には植生が進出し、浄化機能や栄養供給を行うためか沖には沈水植物も復活する。植物量のみならず夥しい微生物の関与もあるはずで、大きなバイオマスが実感できる事例である。

【倍数体】ばいすうたい 【2倍体】にばいたい 【3倍体】さんばいたい 【高倍数体】こうばいすうたい
【減数分裂】げんすうぶんれつ

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本辞典の「交雑」関連項目。尚、本解説は一般知識レベルなので、詳しく勉強したい方は専門書籍を研究することをお奨めする。

植物の遺伝子には倍数性(polyploidy)があり、有性生殖で種子を形成するためには雄性、雌性それぞれが染色体を二つに分割し、1/2+1/2=1という再生を行う。この1/2のプロセスが減数分裂と呼ばれる。(デフォルメした表現です)
倍数性によって生じた変異体を倍数体(polyploid)と呼び、同質倍数体と異質倍数体が存在する。
染色体のセットをゲノムと言うが、同質倍数体(autopolyploid)は同一のゲノムのセットが増加したものである。異質倍数体(allopolyploid)は異種由来のゲノムを持つ倍数体のことで交雑種の染色体が倍化したものである。(難しいネ)
2倍体は2で割れるので正常な減数分裂が行われ、結実(有性生殖)が行われる。極めて普通の状態。式としては2n=46などで表わされる。
2は2倍体の2、つまりn=23本の染色体を2セット持っている状態を表現する。ちなみに人間は22対の常染色体と1対の性染色体、計46本の染色体を持っている。
3倍体は奇数であるため正常な減数分裂が行われず、結実しない。これは交雑種起源に限らず、同種であっても稀に出現する4倍体の個体と正常な2倍体の個体が有性生殖を行う事で(4/2)+(2/1)=3となるため同種の3倍体が出現する。日本で栽培されるサトイモなどがこれに該当する。
倍数体のうち、8n、16nなど大きなセット数を持つものを特に高倍数体と呼ぶ。

【発根バクテリア】はっこんばくてりあ
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植物と土壌微生物の精緻な共生の一例である。発根バクテリアとは土壌バクテリア、濾過細菌などと共に非常に広義の生物群を総称した誤謬にまみれた表現であるが本質をよく示している総称でもある。
この「発根バクテリア」の一種、毛根病菌(Agrobacterium rhizogenes)はその名の通り、病原菌である。植物の根が「感染する」のである。この微生物は植物の根の傷から侵入し腫瘍を形成する。(アグロ感染という)しかしこれは病気ではなく、Agrobacterium rhizogenesが持つプラスミド(plasmid、複製され細胞分裂で分配される染色体以外のDNA)を植物体に送り込み形質を転換するのである。具体的には毛細根の発根となる。毛細根自体が「腫瘍」なのである。

屋外のビオトープなどでは底土に普通に存在する微生物なので問題なく植物が育つが、礫底の水槽で「立ち上がり」が遅い理由には初期の段階で様々な微生物がいないことが上げられる。

【pH】ピーエイチ 【PH】ペーハー
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アクアリストが激しく信奉するわりには実態のない指標。どのように実態が無いのか面倒くさいが少し解説する。あぁその前に正しい標記及び発音を。
ここを見ているあなたが日本人で日本語の会話中、テキスト中で使用する場合は、
・pH ピーエイチ
とされたい。何故ならJIS規格で決められているのである。多くのアクア系の書籍や雑誌にはpH(ペーハー)と書いてあるが完全な間違いである。活字になってりゃ何でも正しいという日本人の民族的特質を考慮に入れた校正怠慢である。それ以前に書いている方も分かっていないと思われる。どうしても専門家風に「ペーハー」と言いたければPHと記述する。これはドイツ風である。その場合はテキストもドイツ語で書く。もちろん私は読まないし読めない。
pHはすなわち準英語圏の日本では当然ながら英語でpower Hydrogen、水素の累乗であり、ドイツでは当然ドイツ語でPotenz Hydrogenii、意味は同じである。さて、どのように意味がないかという話であるが詳しくは別途記事にまとめるとして、以上の話(水素の累乗)が本質を示している。

つまりpHはごく小さな水素イオンの量を対数で示したものに過ぎない。これは酸が水溶すると電離して水素イオンを出し、水のイオン積は一定であるため水酸イオンが相対的に減少、酸性に傾く。ちなみに逆の状態を「アルカリ性」と小学校では教えているし、大人でもこう呼ぶ方がいるが、化学の話をしていると認識している場合、アルカリはアルカリ金属とアルカリ土金属を指す。周期表の一列目と二列目からMgなどを除いたものである。その性質から塩基性と表現するのが相応しい。
でトリビア的に「実は」という話をすると、水溶液中には電子1個のプロトン(H+)は存在しないのである。一つ残らず水和してしまうのである。無いものを測っているわけだ(笑)。一生懸命「水素イオン指数が・・」と言ってもそんなものは無い。あるのはオキソニウム(H3O-)であり、水和を認識しているという前提がある議論上では便宜的に「水素イオン」と呼んでもよい、と化学の文献にはある。で、認識してたかい?
このように小さなものを対数で表現し、しかも計測精度の問題(計測器の校正誤差やセンサーの劣化、そして何よりpH7.0が中性なのは水温24度時である)もあり、たとえ数値が出たとしても「どう読み取って何をするか」という指標足りえないのである。

一部は記事とさせて頂いたが、pHが違うと何が違うのか、という命題に対して「南米産水草が育ちます」とか「赤いエビが増えます」というアンサーではとても自然科学の話をしているとは思えないのである。はっきり言わせてもらえば「かなり馬鹿っぽい」

【ビオトープ】びおとーぷ
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一般的な用語でありながら解釈に誤謬と揺らぎが多い。もっとも多い誤りは睡蓮鉢に植物と魚を入れたものを「ビオトープ」と称することである。なぜならビオトープはその用語の故郷であるドイツの連邦自然保護局の定義によれば以下の通りだからである。

有機的に結びついた生物群。すなわち生物社会(一定の組み合わせの種によって構成される生物群集)の生息空間

まず生物社会の生息空間は水に限らず、草原や森林などの多岐に渡る環境であること、次に生物社会は人間が恣意的に選択した生物のみによって構成されないこと、である。睡蓮鉢も立派な「生態系」であるがアオミドロや微小な貝類を排除し、ヤゴやヒルの存在を認めない時点で単なる「箱庭」である。これをビオトープとするのであれば芝生だけの庭もビオトープである。
語源はラテン語とギリシャ語の組み合わせ、造語であるが日本語で解釈すれば「生物の住む場所」である。生物多様性の観点から「生物の住む場所」を考えると、ビオトープは本来その場所に居る生物の呼び戻しを最大にして唯一の機能としているのである。

【光発芽種子】ひかりはつがしゅし 【暗発芽種子】あんはつがしゅし
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光発芽種子は種子が吸水した状態で一定時間光に当たった後発芽するという条件を持った種子である。反対に光によって発芽が抑制される暗発芽種子もある。どちらも種子が吸水することでシベレリンが合成され発芽のきっかけとなる。ちなみに多くの植物は発芽に光は無関係である。
一般に植物の種を「蒔く」際に風で飛ばされないように土を被せる(覆土:ふくど)が、光発芽種子はこの過程を経ると発芽率が極端に落ちる。ホシクサ等で経験済みである(汗)。逆に暗発芽種子は覆土が必要で、一部の園芸植物はこのパターンに該当する。
一定時間がどの程度かと言うと種によって異なり、吸水もヒタヒタなのか水に沈めるのかモロモロあって一概には言えない。自生種の場合、勝手に種が落ちて翌年発芽するので、水生植物は屋外育成環境で放置が良いかも。
実はワタクシ、リス科の動物とリスカ(茨城県南部の偉大な駄菓子メーカー)の菓子が大好きで、リスの食い残しのシードを野鳥に与えていたが、野鳥の餌台の下から立派なトウモロコシが生えてきて驚いたことがある。小鳥・小動物用のシードは発芽抑制処理が成されているが絶対ではないようで、こんなところから帰化が始まる場合もあるので注意しなければならない。

【被子植物】ひししょくぶつ 【裸子植物】らししょくぶつ
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形態的差異としては胚珠の構造であり、胚珠が露出し風によって受粉するというシンプルな構造が裸子植物、雌蕊内部に隠され、虫媒など精巧な受粉システム(特定の虫による行動と構造に最適化された仕組を送粉シンドロームと呼ぶ)を持つものが被子植物である。進化的にはシダから進化したのが裸子植物、裸子植物から進化したのが被子植物であるとされる。進化の理由は気候変動、特に寒冷化であるが、現代に至るまでシダや裸子植物が残っていることを考えると、もっと妥当な理由があるようにも思われる。裸子植物は松や杉など木本の一部に残存するに過ぎず、本Webサイトでテーマとするような草本種子植物は例外なく被子植物である。

裸子植物のうち最も迷惑なのは「花粉を数撃てば受粉するかも」理論によって不必要に花粉を飛ばしまくる杉である。まさに花粉飛ばし杉(-_-;ゞ。彼らを歓迎するのは耳鼻科医院や製薬会社、ゴーグル製造会社などごく一部の人々である。

【ピート】ぴーと 【ピートモス】ぴーともす
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どちらも同じもの。由来は水蘚、その他複数の水生植物の枯死体の堆積が泥炭状となったものである。日本にも北海道などに産地はあるが、ヨーロッパのような寒冷地では大規模な堆積となるようで、スコットランドには無尽蔵といわれる産地がある。
元々園芸の土壌改良用として用いられており、特に酸性土壌で生育が良く実の付きも良いブルーベリーには欠かせない用土である。本来の性質が有機酸を含むために酸性であり「土壌改良用途」としては石灰で中和した製品もあるが、このタイプはpHには影響を与えず、通気性、保水性、保肥性などの効果を狙ったものである。

アクアリウムでは伝統的なpH調整用土であるが、現在ではソイルやpH調整剤などに主役が移り、水が黒く着色された「ピートを使った」水槽も見ることが少なくなった。
ちなみに成分調整されたピートをアクアリウムに使用すると、pHを下げることはなく、逆に石灰(炭酸カルシウム)からのCaイオンの絶え間ない電離によるKHの上昇、連鎖的なpHの向上、微粒子による導電率の向上と、「水草を育てないための水槽」になってしまうのでご注意願いたい。

【表現型】ひょうげんがた 【可塑性】かそせい
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結果として見られるものはシンプルだが解釈が非常に難解な植物の変化の好例。
拙作「ホシクサの科学」でモチーフとさせて頂いたが、植物、特に環境の遷移が比較的短時間かつドラスティックに起きる湿地植物は進化の過程で様々な形質を遺伝子として獲得しており、環境の影響によって様々な形質を発現する。これを「表現型」と呼ぶ。
具体的な例では通常は湿地で抽水する植物が増水によって冠水した際に水中で生き延びられるように葉茎を変化させることがあげられる。しかし、本来の草姿というわけではなく、沈水植物の沈水葉と同列に扱うことは出来ない、と考える。
余談ながら沈水植物、水中の表現型を発現させた湿地植物を水槽で育成する趣味ジャンル(アクアリウム)では同列に「水草」として扱い、多くの場合方法論は画一である。ヒメミソハギ属(アマニア)やシソ科の湿地植物の育成難が度々話題となるが、完全な沈水植物とは水中での光合成、栄養吸収の植物生理は自ずと異なるはずである。

表現型は基本的に環境に影響を受けて発現するが、もちろん種として「どのような形質を獲得しているか」という遺伝子型に拠る。この形態的形質が、環境の影響によって表現型を変えることを表現型の「可塑性」と呼ぶ。
解釈が難解であるのは表現型が「獲得形質は除く」という条件が付いているからであり、湿地植物であるヤナギタデが水中で赤くしなやかな葉を展開していたり、農薬などの影響が見られない水田でホシクサに班が入っていたりするのを見かけるが、これが獲得形質なのか表現型なのかは素人には知る術もない。この辺りは「希少を尊ぶ」趣味世界では容易に詐欺の温床ともなるので注意したい。

現実問題として多様な表現型を持つホシクサ科など、表現型、獲得形質、個体群の傾向を組み合わせれば容易な同定は不可能であって、花の構造も表現型と考えれば「種とは何か」という命題について考えざるを得ない。
これが「アマノだ、ゴマシオだ、いやクロだ」と狂奔する嵐に翻弄される友人達に贈る言葉である。

【品種】ひんしゅ
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植物学的、生物学的な分類または種小名ではなく、栽培品種あるいは園芸品種の略語として用いられる。言葉の意味するところから次のような様々な解釈が可能であって混乱の原因ともなっている。

(1)自然界に存在する集団中、形質の異なる集団(個体群)。
(2)同種中で、遺伝する形質が異なる集団

(1)も(2)も生物学的な「種」は同一であるが、栽培上、流通上などの必要によって使用されるのが「品種」である。必ずしも人工的に作出されたか否かを問わない点に注意。
身近な例で言えば私も大好きなクレマティス。「クレマティス」はキンポウゲ科センニンソウ属の「属名」であって特定の「種」を指す言葉ではない。もともとは我が国に自生するカザグルマ(Clematis patens Morr.et Decaisne)や中国原産のテッセン(Clematis florida Thunb.)という「」を栽培品種として改良したもので、総称として用いられている。
クレマティスのWebサイトで頻繁に見られる「品種名:何某、学名:clematis sp.」は明らかに間違いであり、園芸品種であることを表現するためには属名+種小名+「’園芸品種名’」または属名+種小名+「cv.」+「園芸品種名」または属名+種小名+「cv.」で表現することが国際命名規約で決められている。sp.は使用してはならない。
*cv:cultivar=栽培品種の意味

水草でも正体が何だか分からないので「雰囲気が似た草名+sp.」で流通させたり名付けたりしている方々が居るが、分からないでやっているならウマシカで分かってやっているなら間違いである。あまりこういう事を行なうとヒンシュクを買うので止めた方がよいね。

【斑】ふ 【斑入り】ふいり
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植物の葉や茎から葉緑素が一部抜けて出来る「模様」を斑、斑の入った植物を「斑入り」または「斑入り植物」という。
遺伝するものとウィルスなどによる一世代限りのものがあるが、外見からは区別できない。カンアオイやテンナンショウなど古典園芸の世界ではこの「斑」の有無により軽く数万円単位の価格差が生じる恐るべき植物変異である。

非常に見つけにくい秘密のスポットのような森林中の祠で斑入り葉のマムシグサを見つけたが、再訪した際には影も形も無かった。バチ当たりである。たとえモノが何でも神域では採集しないもので、泉下の柳田國男博士もお嘆きである。単なる植物の変異が人間の浅ましさと狡猾さを呼び起こす稀有な例でもある。必要以上にマニアックになってはいけないのである。植物を楽しむ、とは集めることではなく育てることである。

【フェノール酸】ふぇのーるさん 【フラボノイド】ふらぼのいど 【ポリフェノール】ぽりふぇのーる
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それぞれ「食品に含まれていて健康によい」という程度の知識があればOK。付け加えるとすれば、ポリフェノールを構成するのがフラボノイド系、フェノール酸系の物質でほとんどの植物に含まれている、という点である。
植物体に於いては光合成産物の一つで、特徴としては苦味の正体であったり色素であったりするが、健康物質として着目されているのは植物細胞を生成したり活性化したりする働きがあるからである。

有名な話で恐縮だがフレンチ・パラドックスは「ワインを飲めば(含まれるポリフェノールにより)健康に良い」という信仰が擬似科学的なバックボーンを纏って独り歩きした笑い話である。
ところが最近でもチョコレート効果なんてのが現れて歴史は繰り返すのである。チョレートとワインを常食すれば健康か?というと心筋梗塞にならなくても糖尿やアル中になってしまうのである。過ぎたるは及ばざるが如し。
この手のものには他にも蕎麦のルチンや納豆菌などが寄せては返す波のようにブームになるが、納豆菌のようにマスコミに作られた「やらせ」もあるのでご注意を。私が言うとまったく信憑性が無いが健康の基本は適度な運動とバランスの取れた食事である。

【複葉】ふくよう 【3出複葉】さんしゅつふくよう 【2回3出複葉】にかいさんしゅつふくよう
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葉身が複数の小葉(しょうよう)から構成される葉を複葉(ふくよう)と呼ぶ。小葉の付き方によって羽状複葉(はじょうふくよう)、掌状複葉(しょうじょうふくよう)に大別される。
複葉ではないが、アフリカ砂漠地方にある「奇想天外」という植物は、多数の小葉を持つように見えて、実は2枚しか葉を出さず、小葉に見える部分は風や何やかやで破れた部分なのだそうである。葉は生涯2枚であるが根は20m四方にも及ぶまさに「奇想天外」な植物らしい。
水草という範疇も奇想天外な植物が多く、我が家の睡蓮鉢の周囲の芝生にはコシロネやヤノネグサ、ハッカなどが芽を出し立派に生長し、草むしり対象となっている。「お前ら水草なんだろぅ」と喉元まで出かかっているが、女房が単なる雑草だと思っているうちは口にすまいと思った。

植物はもともと茎からの葉柄一本に対し葉が一枚(単葉)から進化し、受光面積を拡げるために元が一本の葉柄に複数の葉を付ける進化がなされてきたと言われている。(複葉)
【3出複葉】さんしゅつふくよう
単葉から進化し、小葉が3枚付く状態を称する。水生植物ではその名も「ミツガシワ(Menyanthes trifoliata Linn.ミツガシワ科ミツガシワ属)は長い葉柄に3枚の小葉を付ける3出複葉である。
【2回3出複葉】にかいさんしゅつふくよう
文章では表現しにくいが、小葉が3枚付いた複葉が2回出る(6枚)のではなく、3出複葉がさらに3出する(合計2回、小葉は3×3=9枚)形状である。

*複葉の植物には形状・呼称が多く、まだまだ本稿は書きかけであることをご了承下さい。

【腐生植物】ふせいしょくぶつ 【寄生植物】きせいしょくぶつ 【半寄生植物】はんきせいしょくぶつ 【全寄生植物】ぜんきせいしょくぶつ 【宿主植物】しゅくしゅしょくぶつ 【独立栄養植物】どくりつえいようしょくぶつ
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通常目にする植物の多くは酸素発生型光合成によってエネルギーを生産する独立栄養性物である。ところが世の中には腐生植物(saprophytic plant)というものがあり、葉緑素を持たない。ではどこでエネルギーを調達するのかと云うと根に共生する菌からなのである。
腐生ランはこの代表的な植物で、単に引っこ抜いて来て植えても共生菌が繁殖していない土壌では育つことがない。発生の際のエネルギーも共生菌から得るので実生も現在の園芸技術では困難である。従って園芸店で販売する腐生ランは採集されたものであり、多くの自生地が保護されている事実に鑑みればほぼ盗掘と言うことが出来る。(買わないように)
寄生植物(parasitic plant)は他の植物から養分を収奪する、読んで字の如き植物。寄生される方は宿主植物(host plant)と呼ばれる。 寄生植物のなかにも良心的?な奴もいて自力の光合成と養分収奪を併用するタイプがあり、彼らを半寄生植物、自力調達機能を持たず全面的に宿主植物に頼るのが全寄生植物である。

と、ここまで書いて来て何だか人間社会の縮図のようだな、と思った。

【二又分枝】ふたまたぶんし
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叉状分枝(さじょうぶんし)とも呼ばれ、軸の先端から二つの軸が分岐する様式。古生マツバラン類など海から上陸した初期の植物に多く見られ、原始的な分枝様式と考えられている。
現代に残る植物では、ヒカゲノカズラ属、マツバラン属、カラマゴケ属などに見られる。植物の進化の道筋を考える上で重要な様式。
二又は人間界では倫理的に問題がある様式であるが、二又かけられる程の実力と魅力があればたいしたもんです。私は某若い美女に「安心して付き合える大人=おじさん」と呼ばれているが、私だってやる時はやる(当社比)。世間一般では「やる時はやる」と吼える奴がやったためしがないので、やった後に吼えたほうが良いね。

【仏炎苞】ぶつえんほう 【肉穂花序 】にくすいかじょ
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肉穂花序(にくすいかじょ)は穂状花序の主軸が肉厚に膨らんだ形状のものを指すが、仏炎苞はこの花序を包む包葉(ほうよう)のこと。肉穂花序より派手で目立つためこちらが花だと思われている場合も多い。
サトイモ科特有で、水草で言うとクリプトコリネ、ミズバショウなど、園芸山野草ではオランダカイウ、テンナンショウなどが代表的。
マムシグサなどだんだら模様の恐ろしげな仏炎苞で、花は単なる棒という逆転現象が見られる。仏炎苞という字面もバチ当たり者に向かって火を噴く仏様の波動砲、といった趣ですな。ナニ?ワケワカラン?そりゃそうだろ、書くほうが分かってないのに読む方が分かってたまるかぃ。
進化を続けるデジカメの世界でも、実態は写真なのであるが、やれ画素数だ高感度ノイズだセンサーの大きさだと仏炎苞の議論がやかましい。よく見られる構図であると言えばその通り。

【不定芽】ふていが
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adventitious bud、茎頂や葉腋等、通常発芽する部位以外から出る芽を称する。不定芽を出すのはカルス(カルスの項参照)という通常の植物体の構造とは異なる構造体(一言で表現すると、なんだかよく分からない塊状組織)である。
セントポーリアやカランコエはこの傾向が強く、葉を一枚ちぎって水に漬けておくと葉から新芽が出、次いで発根する。容易に増殖させることが可能。

ホシクサの頭花からの発芽を「不定芽」としているサイトもあるが、実生ではないという根拠があるのだろうか?むしろ株から分かれる新株が発生部位、発生形態からして不定芽のような気がする。頭花からのものは実生のように思えるが、高倍率の顕微鏡を持っていないので何とも言えない。どなたかヘルププリーズ。
英語表記をあえて入れたのは・・・不定芽はアドベンチャーなんすよ。冒険野郎。言ってみれば「住所不定」はadventitious addressってことだネ。この手の連中はふてい野郎も多いことだし。

【ブラキストン線】ぶらきすとんせん 【渡瀬線】わたせせん
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南北に長い日本の国土に於いて生物相による重要な境界線があり、北は津軽海峡を東西に横切るブラキストン線、南は屋久島と奄美大島の間を通る渡瀬線と呼ばれている。
それぞれ北限、南限の種が存在し、タヌキ、キツネ、ニホンリスなどはブラキストン線の南北でそれぞれ亜種とされている。渡瀬線の北は温帯、南は亜熱帯と気候区分の区分線ともなっている。ちなみに「ブラキストン」は、この境界線の存在を提唱したイギリスの動物学者の名前に由来する。別名「津軽海峡線」とも呼ばれる。運賃は必要ない。

首都圏には常磐線という運賃が必要な分布境界線があり、乗車すると雰囲気が一変することに驚くことと思う。(私は慣れたが^^;)特に夜間下り車内は居酒屋状態となり、サキイカ、ピーナッツ、日本酒、チューハイなどの香りが渾然一体となって何とも言えない雰囲気を醸し出す。
個人的には「酒は飲みたいが飲んではいけない」健康状態なので雰囲気に入って行けないのが非常に腹立たしいが、居酒屋に行く=金がかかる(住宅ローンで小遣いが少ない)、時間がかかる(遠距離通勤)という事情を抱えたサラリーマンの気持ちは良く分かる。
酒とつまみの香りも人によっては迷惑だろうし、化粧や香水も時として頭が痛くなるほどなので、禁煙ばかり騒がずに禁酒や禁化粧、禁香水、出来れば禁イカ加工品や禁放屁なども前向きに検討して頂きたい。
以前「異業種交流研修」というものに参加させて頂いた折、JR東日本本社の課長と同じグループになり、「常磐線の40年使っている電車何とかしろコラ、走ってる最中に分解しそうだぞ!」とクレーム入れておいたところ、最近新型車両や通勤用グリーン車など待遇改善されたので言ってみるもんだ、と思った。利用者は感謝するように。(爆)

【プロトコーム】ぷろとこーむ
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プロトコーム(Protocorm)はProto(初期の、原初の、プロトタイプのプロト)とcorm(球茎)の合成語で、その意味するところは球根と同じ性質の発芽前の根茎である。その特異な性質からラン科の根茎に用いられる用語。
単なる球根ではないのは、ラン科の球根がラン菌と呼ばれる共生菌と結合しているためで、この事実を発見した植物学者ノエル・ベルナール(仏、Noel Bernard、1874〜1911)によって作られた用語である。サギソウの根の先端に形成されるプロトコームを特にサギソウプロトコームと呼ぶことがある。

【平行脈】へいこうみゃく
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葉脈(ようみゃく)の形状。網状脈(もうじょうみゃく)に対する。基部から数本の葉脈が平行する形状で単子葉植物に一般的。イネの葉を思い浮かべると分かりやすい・・・と思ったが都会の方はピンと来ないかな?田んぼで学習するように。
単子葉植物の平行脈は涼しげで凛としており、ヒルムシロの浮葉など本当に美しいと思う。その分花は地味であるが。
以前はよく掲示板などでワケ分からん議論を吹っかけられたが、勘違いから始まる議論は落しどころが無くて困りますな。決着する脈がない。この状態を我々専門家は「勘違い平行棒」と呼ぶ。

【フェノロジー】ふぇのろじー
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生物季節(学)、花暦(学)。季節的におこる自然界の動植物が示す諸現象の時間的変化およびその気候あるいは気象との関連を研究する学問。(以下略) (以上 岩波生物学辞典より引用)
昨今ヒートアイランド現象が云々と言われるが、年平均気温が100年間で2度上昇したと言われるより、桜の開花が10年前より2週間早くなったと言われるほうがインパクトが大きい。
フィールド観察が軸となる魅力的な領域。田んぼや池をしょっちゅうウロツク私は「何しているの?」と聞かれた時に最近は「フェノロジーの研究です」と答えるようにしている。「珍しい水生植物を捜し歩いてスキあらば拉致しようとしています」と言うよりアカデミックで怪しくないと思う(爆)。
しかし、アクアリストやナチュラリストと呼ばれることに微妙な不快感があるようにフェノロジストと呼ばれるのにも抵抗がある。エゴイストと呼ばれるほうが居心地が良いような・・・

【胞子嚢(群)】ほうしのう(ぐん) 【嚢堆】のうたい 【ソーラス】そーらす
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繁殖のための胞子を発生させ、収める嚢状の「生殖器官」。シダ植物が代表的だが子嚢菌類や蘚類にも見られる。シダ関係の世界では特殊で馴染みのない用語が用いられるが、胞子嚢群をソーラスと呼ぶケースが頻出する。そーらすぐに分かるでしょ?
シダ植物のデンジソウは本器官が葉柄の途中に形成され、基部に形成されるナンゴクデンジソウとの識別点となっている。
胞子で世代交代するキノコは非常に難しい言い方をすれば「子嚢菌の一部および担子菌類の子実体」であり、植物ではない。いわゆる菌類である。マツタケの世代交代のメカニズムを読むと感動を覚えるほどで、数億の胞子からマツタケになるのは鮭が川に帰ってくる確率並みである。まさに貴重品であるが、食ってしまえば一瞬であるところと費用対効果のアンバランスに儚さを覚える。と言うか簡単に書くと高すぎて食えない。
マツタケは何と言っても炊き込みご飯で、炊き込んでいる時に漂う香りを楽しみながら「待つたけ」である・・・(汗)。

画像はノキシノブ(Lepisorus thunbergianus (Kaulf.) Ching  ウラボシ科ノキシノブ属)に形成されたもの

【補虫葉】ほちゅうよう 【補虫嚢】ほちゅうのう
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食虫植物の獲物を捕獲するための仕掛けを持った葉、及び葉の変形を広く称する。モウセンゴケやムシトリスミレなど粘液を分泌して補虫するもの、タヌキモのように陰圧でプランクトンを水と一緒に吸い込む器官を持つものなど様々。
一般的に「補虫葉」であって、タヌキモやムジナモのそれは見た目の印象で「嚢」と称している通名のようである。
ちなみにウラシマソウの見事な付属体は虫をおびき寄せるのに最適であるが、受粉のためにキノコバエの一種を呼び寄せるだけで捕食はしない。ウラシマソウの花の底に溜まっている虫の死骸は入り込んだ昆虫が出口が分からずラビリンス状態で餓死したもののようである。
葉を食草にされたりムシクサのように住処にされたり一方的に虫にやられる印象の植物であるが、虫を無視せず利用している場合も多々ある。そうも思い庭では一切殺虫剤の類は使用しないが、これ幸いとばかりにクロケシツブチョッキリとかミズメイガとか都会のマンションに住んでいれば一生名前も知らずに済んだ害虫どもがわらわら集まってきやがる。
虫ついでに思い出話だが、東京で一人暮らしをするようになった直後、布団のなかにゴキブリが居たことがあって、これは本当に驚いた。朝起きたら自分が虫になっていたほうが驚かなかったと思う。


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