植物用語辞典 利助流家元版

カ行


【外花皮】がいかひ 【内花皮】ないかひ
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必ずしも用語としては正確ではない。一般的に「花」と言った場合、実は「花」ではなく「萼」や「花冠」などを区別せずに呼称しているがその手の話。外花皮は萼、内花皮は花弁を称する場合もある。
まぁ濾過バクテリアとかニトロソモナスとかで通用するどこかの世界と通じるものはあるな。しかし正確性を追求するあまり無用のやりとりと軋轢が生まれても仕方がないのでその辺は適当に。誰が何と言おうとクレマティスの世界ではモンタナの「花」は白か薄いピンクなのであって「それは萼片の色でしょ」と突っ込むアホはクレマティス界から追放されるのである。

【塊茎】かいけい 【塊根】かいこん
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地下茎が肥大化して塊状、球状になったもの。ただし薄皮で包まれていないものを指し包まれていると包茎球茎(きゅうけい)となる。植物学的には単なる地下茎である。ジャガイモやシクラメンの地下茎を思い浮かべればよい。
塊根の方は植物学用語としてさらに意味が薄く「根が膨れたもの」程度でサツマイモが代表的。ジャガイモは塊茎なので茎が変化したもの、サツマイモは塊根なので根が変化したもの、というクイズがどこかの番組でやっているのを見たことがあるが、植物学的には境界があいまいなので「一般知識」範疇の話ですな。
我が家のアルストロメリア達は評判が良くて、何人かの方にお分けしているが、こいつの地下茎は根の途中が突如数センチ「ボコン」と膨れている。最初は虫コブかと思ったがこういうものらしい。いちいち差し上げる時に説明しないといけない程不気味であるが、本当に虫がいたら非常に怖いので裂いてみたことはない。だって目のない虫が大きな口開けて「シャア!」とか言ったらショックで立ち直れないし。

【開放花】かいほうか 【閉鎖花】へいさか
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開放花とはごく普通の花の構造で、花弁があり雄蕊、雌蕊が外界に通じるもの、閉鎖花は花弁がなくつぼみのような形状の花で内部で自家受粉が出来るものである。
それぞれ一長一短があり何をもとに植物が形態を選択しているのか興味深いが、環境による要因も大きいと考えられる。水中では受粉に困難が伴うのでトリゲモやマツモなど開花期も水面に花穂を出さない種類は閉鎖花で自家受粉、湿地植物ながら水中で生長することの無いヌマトラノオやミソハギは開放花、という選択である。
意外な事にスミレは閉鎖花を付ける。開花期が長い植物であるが開放花は春先のみで、夏から秋にかけては閉鎖花を付け続ける。注意して見ないと気付かないので意外と知られていない。開放花を付けない時のスミレは地味な雑草なので注意深く観察する人は少ないと思われるが(爆)。
「菫のように可憐な」という誉め言葉は春先限定で。閉鎖花を想起すると、まぁその、何だ、「ふぐり」っぽいイメージになるよぉ。

【外来生物法】がいらいせいぶつほう
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2005年6月1日に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」というとても長い正式名称を持つ法律の略称。経緯や意味については「私見外来生物法にまとめてあるのでご参照願いたい。
要するに環境に悪影響を与える帰化種は売買したり飼養したりしてはいけない、対象となる種はこれこれで違反すると重い罰則がありますよ、というもの。環境省のWebサイトに詳しい内容が掲載されているのでこちらもご参照願いたい。
個人的感想は2点あって、一つは議論のプロセスが公開されており、議論の主体や選定委員に民間の専門家が採用された非常に民主的な法律だということ、もう一つはインフォーマルなルールというか暗黙知と呼ぶべきかマナーなのか、とにかく法律で縛らなくても当然に出来ることが出来ない国民にはこういう形しかないのだなぁ、ということ。動植物は様々に分化されたマニア層がいて珍しい種であれば驚くほどの高値が付くので、金になれば何でもする供給者と入手できれば他はどうでも良い需要者がいる、というありがちな図式の積み重ねが現状なのである意味必然である。
ただ、法律で縛って駆除しようとしてもセイタカアワダチソウ、ブラックバス、アメリカザリガニ、ウシガエル、根絶は事実上不可能である外来種が多数あり、「やりやすい所にメスを入れてお茶を濁す」というお役所的結末に終われば意味の無い法律であるので抜本的対策は不可欠である。今後の賢人会議の叡智が期待される。

いまだに(2007年)オオフサモを販売している水草ショップもあるが、Gメンの数が足りないのではないかという当初の危惧が現実になっていると思う。大江戸数百万人を24人の与力で何とかしようとした文化が脈々と(汗)。
公益通報制度、裁判員制度、行政に「協力」することと「補完」することは本質的に違うのでいい加減勘弁して欲しい。保安官が足りなくても皆がワイアット・アープになりたいと思っているわけではない。

【花序】かじょ
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茎や枝への花の付き方や花の付いた部分全体を呼ぶ用語。特徴的な形状のものを「穂状花序」「総状花序」などと呼んだりする。そう言われても形がピンと来ない点は学術用語共通のチャームポイントなので仕方がない。
ちなみにグラジオラスを穂状花序、アブラナ(菜の花)を総状花序と呼ぶらしい。色々ありすぎるので覚えるつもりは一切ない。綺麗ならいいじゃん。
いったい誰が用語を決めているのか知らないが、グラジオラス状花序とかアブラナ状花序とか言えば分かるのにね。

【花成ホルモン】かせいほるもん 【フロリゲン】ふろりげん
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超大ネタで、花咲か爺の袋の中身である。短日にしても長日にしても光受容体というセンサーで集めた情報を開花スイッチにどうやって伝達するのか長年の謎だったのが、フロリゲン(florigen)という花成ホルモンの発見により解明されたそうである。
非常に地味なニュースとしての扱いであるが、特定の機能を持つ器官を活性化させる植物ホルモンの発見は不老不死への夢につながる第一歩で、人類にとっての「火の鳥の血」でもある。自然科学系では冥王星の格下げなど吹っ飛ぶニュースである。
始皇帝があちこちに派遣した(一説には日本にも来たと言われている)不老不死物質探検隊の捜し求めるものは、彼らが踏みしめた雑草のなかにあった、というわけで2200年をかけて完結した壮大な青い鳥でもあったわけですな。ロマンじゃの。

(*)参考 バイオニクス2006年4月号

【カタストロフィック・シフト】かたすとろふぃっく・しふと 【レジームシフト】
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多様な表現が存在するが、生態学上で復帰性が保障されない生態系の劣化、不健全化というニュアンスで示される。霞ヶ浦を始め、各地の湖沼の実態に造詣の深い東京大学の鷲谷いずみ先生が著作のなかでよく用いられる。より耳慣れた言葉ではレジームシフトとも言う。
様々な問題を抱える生態系で特にカタストロフィック・シフトに直結する問題は汚染と帰化であろう。生態系の重要な部分を担う生物が汚染や侵略的帰化種によって絶えてしまえば固有の生態系は戻らず、まったく異なる環境が現出する。具体的に言えばオオカナダモやハゴロモモの群落で繁殖するブラックバスやブルーギル、100年前の生態系と異なる「生態系」は我が国の各所で見ることができる。固有種が戻れる余地は無く、生態系が不健全化していると見ることが出来る。環境汚染に強い帰化種を排除出来たとしても今度は汚染という問題が立ちはだかり、根は深い。
現在懸念されている「カエルツボカビ病」。まさに破壊的なこの病気が蔓延し、両生類が激減すれば連鎖的に爬虫類が激減し、ネズミや昆虫類の増加によって農業は壊滅する、とまで言われている。単にカエルが病気になるだけでは済まないこの「生物兵器」はペット用の外産カエルによって持ち込まれたのである。何がカタストロフィック・シフトのきっかけとなるのか分からない。

【活性汚泥】かっせいおでい
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活性汚泥(法)は排水、汚水処理に使われる処理方法であり、汚泥に十分な空気を供給し好気状態とした上で有機物を分解する微生物を加え、排水・汚水を通して水中の有機物を分解させる方法である。アクアリウム水槽のフィルターの濾材と同じ考え方である。考え方は同じであるが微生物の構成は専門的に考慮されており、ニトロソモナスとニトロバクターで、と簡単に済ませてはいない(笑)。
湖沼学的にはこの機能を砂州や湖岸湿地が持っていると考えられており、護岸の多い霞ヶ浦では復旧工事によって水質の改善、沈水植物の復活なども報告されている。
どちらにしても酸素が行き渡る環境下では好気性の微生物の活動により有機物が分解される他、酸素に対応しきれていない嫌気性の微生物が減少し、水の腐敗など更なる水質悪化が抑えられる。人為的に空気の泡を水中に放出する装置(マイクロバブル装置)による実験でもCOD値の改善、藻類の減少などの結果が得られている。
人為的なバブルと言えば近頃株価の低落傾向、特に新興企業株の低落により個人投資家が信用取引によって破産相次いでいるらしいが、引きこもって金だけ稼ごうなんてのは天人共に許しがたく反社会的行為であり同情の余地はない。

【角野康郎】かどのやすろう
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こんなサイトを見ている方には解説は不要だと思うので必要最低限に。神戸大学の教授にして湿地植物趣味者のバイブル「日本水草図鑑」の著者。湿地植物・湿地環境に関する著書多数。この世界では第一人者であると思う。
何よりも「日の当たらない」水草研究を続けられ、我々趣味者のみならず後続の研究者に道筋を示されたのがすばらしい。多くの水生植物の学名、命名者にKadono.とあるのは角野先生に他ならず、この点に於いてかのリンネや三木先生と比する偉人なのである。(アイノコセンニンモやインバモといったヒルムシロ科交雑種の学名を参照されたい)
色々な大学の研究者ともお付き合いがあるので「研究者は偉い」とは必ずしも思わないが、何回か触れた、私のトリゲモ鑑定依頼に快くご協力を頂き、その際に頂いたメールには真摯かつ謙虚なお人柄が滲み出た文章が丁寧に書かれていた。概ねサンプルやデータは「君が持っていても仕方がないでしょ?」という態度で年貢の如く献上させる研究者とお付き合いをしていたので非常に新鮮な感動を頂いた。
メールのご質問や画像掲示板での鑑定依頼等にご協力させて頂く機会もあるが、何気なく日本水草図鑑の購入をお勧めしているのはささやかな恩返しのつもりである。だからぜひ購入するように。読み倒し用と保存用、二冊の購入が望ましい(汗)。

【カリ】かり
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カリウム(化学記号K、元素番号19)は植物体に必要な三要素として知られる「肥料」である。
アクアリウムに於いて「窒素とリンは魚の残餌と排泄物で十分なので不足するカリを補給する」というリービッヒの入口だけ理解したような、言ってみれば加持祈祷の類の理屈が横行している場合が多々見られる。
自分の水槽に必要なカリの総量を時間軸と定量的なガイドラインとして示せる人間は100%いないと断言できるが、なぜこのような理屈を堂々と開陳できるのか。各元素の不足による表現は重複するので(成長点の白化は鉄分窒素カルシウムなど多くの元素不足の表現として現われる)特定は状況証拠のみしか判断材料がないはずである。
自分で考え自分でカリを添加するのであれば勝手にやればよいが、アドバイスとして他人に奨めるのは大きな問題がある。理由は二つ。

(1)カリは水溶すると陽イオンとなる「塩基」である。この点はカルシウム、マグネシウムも同じ。pHを弱酸性側にコントロールしている水草水槽では逆の結果をもたらしてしまう。
(2)カリが過剰の場合、植物体は必要量をはるかに超えて吸収してしまう。(カリのぜいたく吸収)吸収するだけならまだしも、カルシウム、マグネシウムの吸収を阻害し草体の萎縮、新芽の小形化、黄化、白化、褐色化など両要素の不足表現が現れる。最近の研究成果では病害虫に対する抵抗力も極端に低下するらしい。

つまり必要ではあるが過剰は大きな害、という元素であって最近自ら喰らっているインターフェロンやリバビリンのような薬剤の如き存在であろう。
その「必要」な分はどうするか、という点であるが週に一回1/3程度の換水を行なえば水道水に含まれる量で通常の水草水槽は十分維持出来るという結論をあげておく。他の要素もあるがテーマ外なので別途記事にて。

【カロテノイド】かろてのいど
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植物体に含まれるカロテノイドとしてはトマトのリコビンやブルーベリーに多いアントシアニン、黄緑色野菜のβ-カロテンなどが知られているが、他にも鮭が多く持つアスタキサンチンや、ゼアキサンチン、ルテインなど数多くの種類が存在する。要するに色素である。
カロテノイドはテルペノイドという有機化合物の概念であるが、炭素と水素のみで構成されるものをカロテン、それ以外をキサントフィルと呼ぶ。キサントフィルは光合成、特に集光に深い関わりがあるが話が複雑になるのでここでは触れない。ちなみに「話が複雑になるので」というセンテンスは著者自身もよく理解できていない場合の常套句であるので注意が必要(汗)。
度々話題となるのは「健康ブーム」の成せる業で、これらの色素が抗酸化作用など体に良い機能を持っているからである。普通に野菜を食ってたまに焼鮭などを食えば意識しなくても摂取できるが、病人の私の言うことなので説得力はない(汗)。
まさに「医は食に在り」を具現化した成分であり、アントシアニンにいたっては「イギリスの撃墜王はブルーベリーを食って夜目・遠目が効いた」という話もある。よくよく調べてみるとこのパイロット氏、ブルーベリージャムが異様に好きでパンの厚さよりも厚く塗って喰っていた模様。普通の日本人は夜目・遠目もあまり必要ないし、まして敵機を撃墜する機会もないのでこんな無茶な喰い方をする必要はもちろん無い。それに目に良くてもそんな喰い方を続ければ糖尿病になるのではないかい、と思った。
「体に良い」となるとガセネタで納豆が大ブーム品切続出売切御免となったように極端に走る傾向があるが、良い子は真似しないように&過ぎたるは及ばざるが如し、1を聞いたら10に行かず2や3を調べてみよう。ためになったな。

【完全葉】かんぜんよう
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葉身・葉柄・托葉のすべて備え持った葉を呼ぶ用語。企業の場合はカネ・モノ・ヒトと言うがすべて兼ね備えても完全企業ではない。ちなみに企業にとっての重要度も並び順通りである。人は城(俺を守れ)、人は石垣(お前ら弾避けだ)、人は堀(敵の足にしがみつけ)という武田信玄(元は孫子だったかな?)の言葉もある。
それはともかく葉身・葉柄・托葉などの用語に関してはそれぞれの用語解説で調べて頂きたいが、まだ解説が出来ていない場合は諦めることも重要である。
何か基本的なことを掲示板で質問した初心者が「ぐぐれ」と言われたりGoogleのURLのみを貼られたりする姿を見かけることもあるが、その気持ち(貼るほうの)は分かる。的確な回答を知らないんだな、たぶん。だからここに書いてないことはぐぐれ。

【乾田】かんでん 【湿田】しつでん
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水田の特徴を示した用語で生態学ではしばしば大きな相違が指摘される。
「田んぼなので湿っているだろう」と考えるのは大きな誤りで、乾田では年の1/3程度が「湿地」状で残りの期間は乾地である。乾田化は農業政策により推進されているので増えている。事実身の周りでは湿田は見ることが出来ない。
冒頭での「生態学的な相違」とは、湿田が常時湛水状態であるので沈水植物やそこで世代交代する生物が多いのに対し、乾田は一時的な湿地であるので僅かな期間に世代交代できる生物しかいない点である。これは以前議論になったが乾田ではトリゲモやスブタを見つけられない点に於いて明らかであり、乾田化が生物多様性と反する方法論であることは動かない。度々であるが生産性や農業技術からの観点ではなく是非にも言及していない。
湿田と乾田の違いについて明確な定義は見つからないが、地下水位や常時湛水の有無、すなわち見た目で判断するのが妥当だと思う。常陸太田市(茨城県)の山間の湧水を利用した湿田では水田で初めてサンショウモを発見したが、同じ浮草類でもウキクサやイチョウウキゴケは乾田でも世代交代しているようで、植生による区分も有効かも知れない。

【帰化植物】きかしょくぶつ
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偶発的、人為的を問わず外国より侵入、定着し野生化した植物を称する。簡単に言えば外来種のうち野外に定着した植物のこと。
解釈が難しいが自己の分布能力(これをどこまで定義するか、だが)によって分布を拡げたものは帰化植物とは言えないという見解がある。植物である以上、渡り鳥に種子が付着して分布を拡げることは分布能力であると思うが、この辺の識別は難しい。
環境省では非常に便利な言葉「外来生物」によってこの辺の曖昧さを排除している。外来生物法の対象は侵入ルート、手法は問わない。
本来の生態系に与える影響、遺伝子撹乱など負の側面はすでに知見であるので解説しないが、根本的な疑問が二つ。

(1)帰化種の時間軸の概念について。記録の無い帰化種を史前帰化種と称し、外来生物法も江戸期以前は対象外としているが、最近100〜200年程度を「本来の生態系」と規定して良いのか。
(2)「帰化」という言葉は本来、「元の国籍を捨て新たな国籍を得る」意味であるのに、帰化植物と呼ばれるものは原産国にも存在する。用語に対して実態の正確性は如何なものか。

様々な学説はあるが、日本列島は元々大陸と陸続きである上、現日本人も起源は大陸からの移住者であるらしい。先に来たものが後から来たものを排除する、という図式が環境に影響を与える動植物のみで留まれば良いと思う。
ところで、字を書く習慣が廃れたのか、ネットの書込みで時折「気化植物」など誤変換に気が付かない方を見かける。オオカナダモやオオフサモが「気化」してくれれば駆除も楽なのだが、植物は固体なのでこの場合は「昇華」だネ。どっちみち間違っているか(汗)。

【気孔】きこう
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葉に孔を開けることは植物にとってハイリスクであるが、構造の解説を読むたびに唸ってしまう精緻に出来た仕組。
陸上植物は内部組織を守るためにクチクラによって覆われているが、CO2や水分等は透過しないため表皮細胞の間隙に特殊に分化させた構造として気孔を持っている。葉の裏面に存在することも太陽光の影響を考えればリーズナブルである。
ちなみに水草は当然のことながらクチクラも気孔も持っていない。水やガス交換はまったく異なる仕組(細胞間隙と維管束のリンケージ、エネルギーは浸透圧と考えられる)である。
都度話題となる水草への「液肥」であるが(または水中の窒素、リン)葉面吸収などと陸上植物の概念を持ち込んで騒ぐお方が居て辟易しています。こういう輩はクチクラや気孔の機能を前提にクチカラ出任せ、人の話はキコウとしません。
そんなわけでクチクラは下の方をご覧下さいませ。

【気根】きこん
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植物が空気中に出す根である。マングローブ、タコノキ、ガジュマルなど熱帯トロピカルなイメージが強いが、実はイチョウも稀に出す。また農産物ながらトウモロコシは呼吸目的ではなく草体を支える支柱根として出すことが知られている。目的は呼吸、支柱などであるので、こういった植物の前で屁をぶっこいて「空肥だ」と言っても植物が迷惑なだけなのでご遠慮下さい。
どことなく合と性という香りも漂う用語だが、あらゆる植物学に於いて気合と根性は成分はもちろん存在も確認されていないので滅多なことは口走らないように。

【偽胎生】ぎたいせい
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(全文転載 拙作「ホシクサの科学Part2」より)

この「挙動」と非常に似た現象に偽胎生というものがあります。本来花の咲く位置に新芽が出る現象ですが、水生植物のうちハリイやコウガイゼキショウに見られるものです。一般的な解釈は水生植物に普通に起こり得る「水没」の状態に際し、開花・結実が出来なくなったことに代替する機能ではないか、とされています。
ホシクサ(広義)も湿地環境に生育する植物ですのでこうした機能を持っていても不思議ではありませんが、本文に記した通り「頭花からの発芽」となりますので、掲載当初は可能性を排除させて頂きました。何しろ開花後の挙動ですので。

水草の無性生殖手段の一つである殖芽(しょくが)に於いても、マルバオモダカが花を持つ位置に托葉に包まれた芽が出て殖目となる偽胎生の例があります。この場合も開花前の挙動となります。
読み直してみると「植物生理学的な常識を無視して独自の解釈を開陳している」と読めなくもないので蛇足ながら付記させて頂きました。

参考 : 朝日新聞社 植物の世界、保育社 ウェットランドの自然


【ギャップダイナミクス】ぎゃっぷだいなみくす
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苦しみをバネに飛躍する植物の素晴らしい力。ギャップダイナミクス(gap dynamics)は、本来森林生態学と呼ばれる生態学の一分野の用語であるが、撹乱のキーワードにより他の様々な生態学の概念でも語られるようになっている。
非常にデフォルメした解説で恐縮であるが、例えば鬱蒼とした森林では林床まで光が届き難く、散布体から発芽した苗木が育たず枯れてしまう。このため世代交代が進み難いという状況に陥る。このような状況で台風や森林火災等により撹乱が起きると世代交代が活性化するというもの。ギャップは植生の隙間、という意味である。
生態学では最近同概念と並びAlternative stable states(まだ確たる和訳は無い様だが生態系平衡状態という意味)という概念が重要視されている。東京大学農学生命科学研究科のレポートによれば撹乱こそ生物多様性のキーワードであって、極相に至らない重要概念であるという成果がある。同レポートによれば霞ヶ浦のアシ刈による他植物の発芽が変温感受性によるものであるというデータと推論があり非常に興味深い。
つまりアシ刈という撹乱がなければ他の植物は発芽出来ず極相となってしまうということで、なるほど里山のため池でも放置すればハスやヒシによって水面が覆われクロモやトリゲモが姿を消してしまう。浮葉の刈取は撹乱、ギャップダイナミクスでありAlternative stable statesを創出するに必要と納得できる。

この辺りはネット掲示板でも同じ力学が働いているようで「嗜め役」「叱り役」というgap dynamicsが働かないとアホと虫の極相になってマトモな人間に見捨てられる。Alternative stable statesは適度なアホの間引きによって成り立っているわけである。

【休耕田】きゅうこうでん 【休耕遷移】きゅうこうせんい 【耕作放棄水田】こうさくほうきすいでん
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文字通り「耕作を休んでいる水田」。減反政策や農業労働力問題はさておき、植物用語で取上げるのは植生が特徴的であるから、である。休耕田は概ね除草剤を使わない、耕起しない、という条件によって耕作水田では通常見られない種類の植生が見られるのである。
ただし休耕後数年で環境は遷移し、植生も様変わりしてしまう。この遷移を「休耕遷移」と呼ぶ。乾田であっても周囲の水田に湛水することで水の浸透があり1〜2年は湿地として湿性植物を育むが、ガマやカヤツリグサの侵入と彼らの枯死体の堆積、その上にセイタカアワダチソウなどの陸上植物が繁茂し急速に陸地化が進んでしまうのである。

耕作放棄水田も意味合いとしては休耕田と同じであるが、休耕田が減反割当によって「お休み」のイメージが強いのに対し、耕作放棄水田は「田んぼを続ける労働力が無くなった」などの理由により「やめた」というイメージが強い。どちらも遷移環境であることに変わりは無いし見た目も同じである。

【休眠】きゅうみん
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定義通り解説すれば「植物の発生過程に於いて成長や活動が一時的に停止する現象」で、発生過程とは種子の状態も含まれる。すなわち、結実後にすぐ発芽しない大部分の植物の種子や殖芽は休眠しているのである。
種子や殖芽の休眠は発芽抑制物質によるもので、実態はアブシシン酸という植物ホルモンである。このホルモンは環境ストレスにより合成されると言われており、夏草が結実後、秋に向かい気温が低下するストレスによってアブシシン酸を合成、冬を種子で乗り切るという合理的な仕組となっている。
この休眠を破るのが休眠打破でアブシシン酸に対抗する物質が生成される。この物質が発芽促進剤として有名なシベレリンである。

人間も春先に眠くて休眠に入り会社や学校をフケることがあるが、これはアブシシン酸によるものではない。サボリシン酸という怠惰ホルモンによるもので、分泌が終わると後ろめたい気持ちがウシロメタシンという後悔ホルモンの生成に繋がり立ち直るのである。(もちろん大ウソです)

【鋸歯】きょし
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葉のまわりのギザギザのこと。ギザギザが無い葉は全縁、鋸のように単純なギザギザは単鋸歯、ギザギザにさらにギザギザがあるものを重鋸歯と呼ぶ。
鋸歯の形状によりゆるやかな鋸歯を波状鋸歯、細く突出した鋸歯を短糸状鋸歯と呼ぶこともある。
さらに複雑な話であるが、鋸歯の裂ける深さにより、浅いものから葉全体に及ぶものまで、浅裂、深裂、全裂と呼び、鋸歯の裂ける形状によっては掌状、羽状と呼ぶ。こいつらが組み合わさり羽状深裂などという呼称もあって急にはピンと来ない。
ところが某国家試験では「急に答える」必要があってピンと来ないと落ちてしまうので、自然関係で身を立てたい方は覚える必要がある。私が試験問題を作ったとしてもこの辺作りやすいしね。

【問題】羽状深裂に該当する葉を持つ植物を選べ 【選択群】・イネ・ヨモギ・マツバウンラン・オキナグサ・ハナニラ とかね。

【菌根菌】きんこんきん
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園芸、山野草の世界では自生蘭と蘭菌の関係が有名であるが、蘭に限らず多くの植物が生存に不可欠な共生、パートナーとしている菌である。てなことを書いている私の腸内にも大腸菌がいて消化吸収に重要な役割を果たしている。ミクロの共生は普遍的に存在する。
植物の多くはリン酸の吸収を菌根菌の役割として共生を前提に進化して来たと言われており、もはや共生というよりも植物体の一部であると言っても過言ではない。
この菌根菌のうち重要なのがアーバスキュラー菌根菌で、長年VA根菌と呼ばれていたが構造的特徴から今ではAMと言われている。何のこっちゃよく分からないが嚢状体の有無で云々、と解説が見られさらに分からない(汗)
この菌は植物体の根の内部に入り込み栄養吸収を助けるので、農作物を育てて収穫してしまうと土壌中の密度が大幅に低下し、翌年の収穫量が減少してしまう。俗に言う「連作障害」である。

蘭の世界でよく言われる「ラン菌」はたしかに蘭の発芽時に必要であるが、調べてみると菌根菌の1種で土壌中には普通に存在するようである。野生蘭の育成に於いては特別視されているが、変な商売が横行しないよう、またそんなものに引っかからないように願うばかりである。

水槽での植物育成上も水草が陸上植物の進化形である以上強い因果関係があると考えるのが自然だが、残念ながら知見が見当たらない。少なくても菌根菌の研究過程で明らかになった植物のリン酸吸収のロジックから考えると土壌中のリンの存在は育成上不可欠であろう。

【クチクラ】くちくら
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表皮細胞が外側に分泌して構成される比較的硬度を持った膜で、植物体内の水分の蒸散を防ぐのが主な役割である。そのため、気孔の稿で触れた通り水分もガスも透過しない。
英語ではキューティクル(Cuticle)で、人間の髪の毛表面にもあることが某シャンプーのコマーシャルで有名になった。昆虫の外骨格もクチクラであり、以上のことから分かる通り単一の物質の名称ではない。昆虫の外骨格はキチンという多糖類と蝋によって構成されるクチクラである。
言ってみれば角皮であるが、足指に形成される角皮をウオノメと呼び、時としてクチカラうめき声が出てしまうほど痛い。

【グライ土壌】ぐらいどじょう
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グライ土壌は嫌気的となった土壌で視覚的には酸化鉄が還元され(二価鉄)青褐色に変化した土壌である。畑地には向かず、暗渠による排水などの土地改良が必要となる。
反面、元々水を入れて還元土壌を必然的に作り出す水田では、イネが嫌気耐性を持っているために生産性が高い、と言われている。ただしあまりに強グライ土壌となってしまうとメタンが発生し、イネの生育にも悪影響が出てしまう。これを回避するのが田植後一定期間から行う間断灌漑や開花後に行う中干しと呼ばれる農業技術である。

グライ土壌となった水田で妙に黒っぽい魚を見ることがあるがそれは暗い泥鰌である・・・汗;

【群落】ぐんらく
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一般的に植生の単位、すなわち同一場所で生育する植物群を指す。非常に便宜的かつ曖昧な概念であるが、植生の単位として生態学、環境学で用いられる場合が多い。他に「植物群集」と呼称することもある。「植生図」は、植物群落を地図として表現したものである。
群落の定点観察によって環境の変遷を測る手法は非常に有効であると思うし、フェノロジーなど事実を広範に積み上げる方法論は正しいと思うが、一部の研究者からは、アマチュア(NPO)が狭い範囲でこのような観察を行い、環境の変遷について警鐘を鳴らすことを毛嫌いする方もいる。しかしどんなに狭い地域であっても群落が縮小、消失すれば何らかの環境要因が働いたと見るべきであり、少なくてもアマチュア側は事実を元に物申しているわけなので机上の理論でとやかく言う行為はいただけない。

代表的な自生地は別として、意外な場所に希少な植物群落が存在する場合は多々あり、この分野を研究する僅かな方々は、さらに僅かな私如きアマチュア観察者の情報を利用することを考えた方が良いと思う。車軸藻を探しておられた山室真澄先生の謙虚な姿勢を拝見させて頂き尚更そう思った。

【嫌気耐性】けんきたいせい
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原始的な微生物は別として高等生物(植物含む)は酸素呼吸によるエネルギー獲得が生命活動の基本であり、一般的に酸素の無い環境での生命維持は困難である。この酸素の無い、嫌気的環境で生き延びる能力が嫌気耐性である。
言わば嫌気耐性とは無酸素環境でのエネルギー獲得の手段であり、水生植物ではヒルムシロが殖芽からの発芽時に植物体内でアルコール発酵を行っている例などがある。また無酸素下でこのエネルギーが最大となるとのことなので完全な嫌気耐性を持ちつつ葉茎の水面への伸張により酸素調達にも切り替えられる優れたシステムである。
魚類ではメダカの卵に嫌気耐性があることが知られている。仕組みは今ひとつ分からないが、無酸素下でも嫌気的な代謝を緩やかに行っているそうである。この遺伝子は今後様々な医療分野で応用可能ということで注目されている。

ヒルムシロとメダカ、この二つの話はありふれた種であっても不思議な事、未解明の機能があり、場合によっては人類の未来を左右するかも知れない遺伝子を持っているということで、まさに生物多様性の精神そのものの話である。

【原形質流動】げんけいしつりゅうどう
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原形質流動とは、細胞内部に於いて内部物質である原形質が流動する現象である。
なぜそんな話を取り上げたのかと言うと理科の授業で顕微鏡を使って観察するのがシャジクモやオオカナダモだからである。調達できない学校ではタマネギを用いているという説も(汗)。調達できないのならいくらでも殖えるオオカナダモや勝手にわいて来るシャジクモを卸してビジネスでも、と思ったが喰える程の需要は無い模様。
そもそも「水草販売」がビジネスになるか、という根本的問題があって過去好きだった専門店は次々と閉店、またはWebショップ化してしまっている。高価な水草を買っては枯らし、定期的に買いに来る優良顧客が多ければ話は別だが、そんな奇特な人は少ないらしい。

新宿地下街のおしゃれな某店ではなかなかの価格帯かつ販売単位であるが、あれだけの場所(家賃)、スタッフ数(人件費)を維持するためには「すいません、ハイグロ1本・・いやマツモにしようかな♪」と30分相手をさせられて100円の売上というビジネスモデルは存在しないのである。
かくして新宿でよく終電逃し、半徹夜勤務の際にお世話になったサウナの地下のショップなどはビジネスモデルが崩壊、アクア界という小さな細胞のなかで次のチャンスを求めて流動するのであった。終わり。

【原生動物】げんせいどうぶつ
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原生生物(真核生物菌界・植物界・動物界に属さない生物)という上位概念のうち動物的(これもあいまい)な生物を総称するもの。今日的な解釈ではアメーバやゾウリムシもこの範疇である。
しかし「動物的に」動いても光合成機能を持つ植物的なものを原生動物と称するのは如何なものか、とか色々な説が発生し、説によって解釈も違うようなので専門家にパス。それよりもなぜ「植物用語」で扱っているのかというと、植物の栄養吸収に於いて一次供給者の「バクテリア」と植物の橋渡し的な役割を持つと考えられているからである。
そう、いかに肥料を入れて「バクテリアの素」をぶち込んでも原生動物がいなければ水草は健全に生育しない。綺麗な水草水槽の奥底にはネバネバまたはニョロニョロが多数住み着いているのである。ナイス。
原生動物には鞭毛虫・超鞭毛虫など字面を見るだけで背中が痒くなりそうな連中がおり、熱帯魚の感染症の原因トリコモナス類も原生動物の仲間である。役に立つ奴、危険な奴、色々なのがいるのは人間界と同じであるが交友関係と異なりえり好みはできない。

【交雑(種)】こうざつ(しゅ)
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本稿を解説するには「種」とは何かという事から説明し、非常な文字数と手間と注意力が要求されるので(汗)、ウィキペディアでも見て頂きたい。
一般的には異なる「種」で近似の遺伝子を持つ種同士が自然下で偶発的に繁殖してしまうもので、ガシャモクとササバモの交雑種インバモやヒロハノエビモとセンニンモの交雑種ヒロハノセンニンモなどがある。多くの場合染色体セットが奇数倍となり減数分裂できないために結実することはない。増殖は栄養増殖となる。
我が家ではけんちん汁、豚汁などを常に大量に作り、翌日以降うどん玉を入れて煮込むというスペシャルな料理が出てくる。これは手打ちうどんと讃岐うどんの交雑種「手ぬきうどん」ではないかと思われるが恐いので言ったことはない。

【合弁花(類)】ごうべんか(るい) 【離弁花(類)】りべんか(るい)
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合弁花類及び離弁花類は双子葉植物を2つに分けた分類群で、花弁が合着しているかしていないか、という観点の分類である。従来の考え方では合弁花は離弁花より進化した形態であるとされている。ただしクロンキスト体系でも合弁花類は分類群として採用していないし、APG植物分類体系では複雑な入り繰りが成されており、必ずしも固定的な概念ではない。
見た目の判断も難しく、我が愛するクレマティスは花の末期に花弁が一枚また一枚と舞い落ちる文学的な散り方をするなぁ=離弁花類だと思っていたら実は花弁に見えるのはがく片で合弁花類だった、なんてのもある。植物クイズネタ程度の分類体系である。
こういう例は除いて、見た目で分かるという分かりやすさもある。しかしヒルムシロの花なんぞ合弁か離弁か見えないぞ、と心配される方、ご安心下さい。単子葉植物ですから。

【紅葉】こうよう
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赤い水草がなぜ赤くなるか、という疑問を調べ始めた際に基礎知識として取り組んだテーマである。
紅葉は木本や多年性草本が越冬のために活動を終了し、エネルギー生産工場である葉をコルク質によって遮断することで始まり、行き場の無くなった光合成生産物が変化しアントシアンanthocyanという赤い色素が合成され、同時に役割を終えた葉緑素が抜けて緑が目立たなくなることによって起きる。
これは非常に重要な概念であって、アントシアンによる「赤」もリシマキアの黄色もコウホネ水中の黄緑も、外的なストレスによって支配された「色」であることが分かる。さらに自生地におけるミズユキノシタの挙動などを見ると、やや嫌気的な環境下における還元鉄によるストレスの有無など様々な状況が見えてくる。このような環境は二価鉄の投入で水槽内でも一時的に作り出せるが、理屈を追って行けば「二価鉄の投入で赤系の水草が元気に発色する」のではなく、ストレスによってアントシアンが増加して葉緑素が抜けている、と考えるほうが素直であろう。植物を「いじめる」ことで管理する手法も園芸の世界では盆栽などで一般的なのでとやかくは言わないが。

【湖岸湿地】こがんしっち
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要するに湖岸の自然な植生が繁茂する湿地である。いかにも普通にありそうだが箱物行政の賜物か、大小湖沼ため池に至るまで護岸工事によってコンクリートで固められた場所だらけになってしまった。景観を別にしても湖岸湿地には微生物による水質浄化という役割があり、沈水植物の動向にも大きく影響している可能性があることが霞ヶ浦での実験で示された。
霞ヶ浦に関しては「洪水防止」「塩害防止」「用水確保」という目的で護岸に加え常陸川水門の閉鎖など力で自然を制御しすぎたために植物や魚類など生き物が割りを食ってしまっている。その上外来魚を放すバカが居るので「問題の本質」が見えなくなっている面もある。湖を救うには水質、水門、外来魚という単一のキーワードでは如何ともし難いが、そのなかで大きなキーワードは護岸の原状復帰、すなわち湖岸湿地の回復があげられるだろう。

【国際植物命名規約】こくさいしょくぶつめいめいきやく
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国際植物命名規約(International Code of Botanical Nomenclature 略称ICBN)は、国際植物学会議の組織である命名部会により制定された植物の学名を決定する国際的規範である。他に国際動物命名規約、国際細菌命名規約が存在する。
学名の付与にはモロモロ細かい取り決め、ルールがあるが基本は属名+種小名+命名者・命名年である。その他細々したことはググって頂くとして「国際的なルール」なのである。例えば、Najas marina Linn.はナヤス属(イバラモ属)のマリーナという種小名であり、リンネが命名したことが分かる。

毎度の話であるが・・・アクアリウムで流通している「ポリゴヌムsp.レッド」などいくつルール違反をしているかお分かりだろうか。属名はPolygonumの「読み」であるが、Polygonum属(ミチヤナギ属)には見えずイヌタデ属(Persicaria属)に見える。またsp.は学名が付けられていない生物を示し分類されると予想される属名のみに付与されるはずであるが、本当に学名が付与されていないのか?「あんたが知らんだけやろ」はsp.ではない。命名者に「レッド」とあるが、これは水中での発色を示しただけであろうと思われる。
「何だか良く分からない」植物に適当な「学名もどき」を付けてしまうと、本物の学名を持つ同種が出現した際に、命名の混乱なのか異名同種であるのか訳が分からなくなってしまう。インヴォイスであれば特に規約もないはずなので「タデの一種水中育成可能、水中葉は赤」で良いのではないかと思うがどんなもんだろうね。イバラモも国産なのに「ナヤス・マリーナ」と言ってしまうと海外産と区別がつかないのでイバラモ○○産、と標準和名と産地でお願いしたいところ。

【コケ植物】こけしょくぶつ 【シダ植物】しだしょくぶつ
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アクアリウムで用いられる「水草」範疇に含まれる植物分類。伝統的な分類では、植物界は以下に示される。陰花植物と呼ばれるグループの一部でもある。(新エンゲラー体系ではやや異なる)また、一般的に「シダ植物」と言った場合ヒカゲノカズラ植物門とトクサ植物門も含む場合もある。
コケ植物門
・ヒカゲノカズラ植物門
・トクサ植物門
シダ植物門
・種子植物

水槽で用いる植物ではウィローモス、ホソバミズゼニゴケなどがコケ植物、ミクロソラム、ミズニラ、ボルビティスなどがシダ植物である。現存するコケ植物、シダ植物に共通するのは湿った環境に自生しているということで、陸生のシダや苔も山の斜面など水が沁みだすような環境に多い。まだまだ水槽育成可能な種が見つかる可能性は高いと思う。
レイアウト的には「落ち着き」「地味」といった陰の印象が強く、陽である種子植物との対比を対立技法として構成する手法がよく見られる。対比や配置を間違えると「取って付けた陰」「陰気が勝つ水槽」になってしまうので目指す姿に於いてどのような役割を振るかがセンスを求められるところ。

【互生】ごせい 【対生】たいせい 【輪生】りんせい 【葉序】ようじょ
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葉序の表現形の呼称
【互生】葉の付き方が互い違い。一節に一枚生じ、それぞれ方向を異にしている様。タデ科(ポリゴヌム)など。
【対生】仲良く植物の葉が1つの節に一対生ずる。(ミズユキノシタ以外のルドウィジアなど)
【輪生】一節に三枚以上の葉が生ずる。(クロモ、ミズスギナなど)
実は植物の葉は光合成に有利になるように、種ごとに節から生えた葉の次の葉が何度の角度で生えるか決っており、重ならないようになっている。(葉序)ヒメミソハギなど上から見ると節から対生する葉は180度、次の節は前節に対し90度、これを繰り返し上から見ると綺麗な十字に見える。(十字対生)全周360度に対し、120度の角度で葉を展開して行くものを1/3葉序、同じく90度を1/4葉序と呼ぶ事もある。

【コルヒチン】こるひちん
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ヨーロッパ〜北アフリカ原産のイヌサフラン(ユリ科)の球根や種子に含まれる天然物質である。アルカロイドを含み人体には有毒。
意外な利用法があって、種なしスイカの作出に用いられる。普通のスイカの発芽直後の苗(2倍体:2n)にコルヒチン処理を施すと、染色体を倍加させ4倍体(4n)になる。4倍体のスイカに2倍体のスイカを受粉させると(4/2)+(2/2)=3、つまり3倍体となり減数分裂できないので種が出来ない、という寸法である。
だがな、スイカは種の周囲が一番甘いんだな。種が無ければどこが甘いのか分からないじゃないか、と思った。ちなみに人間に施すと痛風には効くが(毒だから病院しか出来ないょ)種無し人間の作出はできない。

【根圏】こんけん
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当サイトのいくつかの記事で触れた通り、植物の根周りの物質と物質循環を担う微生物の動きは精緻なものであるが、範囲としては根の周囲わずかでマイクロメートルの単位であるとされる。この小さな世界が植物の命運を握る世界なのである。
このミクロコスモスで物質循環が行わなければ植物は枯死してしまう。ラン菌と野生蘭は随分特殊な関係だと思ったが、根圏の微生物と蘭以外の植物も何ら変わるところはない。

根圏のメカニズムの入門編としては本Webサイト「育成メモ」に「土壌バクテリア概論」をアップしてあるのでご参照願いたい。

【昆虫病原菌】こんちゅうびょうげんきん
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昆虫病原菌は読んで字の如く昆虫に取り付く病原菌である。ここでその専門的な分類や科学的な考察をしようと言うわけではなく(したくても出来ないが)功罪に付いて考えてみたいのである。
市販されているアブラムシ用の「バータレック」やコナジラミ他の害虫用「マイコタール」は「農薬散布回数にカウントされない生物農薬」という売りでやや高価ながら盛んに用いられるようになってきた。
この「農薬散布回数」がミソで、実際には葉が白くなるほど散布しても「無農薬野菜」なのである。それ以前に農水省の出している「有機農産物等に係る青果物等特別表示ガイドライン」を見て欲しいが、無農薬野菜は殺虫剤を使わなければ名乗ってよいのである。除草剤や化学肥料はOKなのだ。除草剤と化学肥料を使い、言葉通り「生物兵器」を使用した野菜が「無農薬野菜」である。ガイドラインを知らなければ錯誤が起きるだろう。

この手のものが流行る背景には「殺虫剤は恐い」という生産者消費者両者の意識無意識とオーガニックブームにもってこいの「農薬散布回数ノーカウント」によるものだと思う。
しかしよく考えて頂きたいのだが、パッケージを見る限りこの手の生物農薬の生産国はオランダなど海外が多い。海外の微生物(病原菌)を国内でぶん撒いているのである。もちろん「安全」だろうが、今まで存在しなかった病原菌が何十年後かに他の生物にも攻撃的にならない、という確証はあるのだろうか。
「無農薬、実は除草剤たっぷり、化学肥料で栽培」という基準にも腹が立つが、そこに使われる殺虫剤が本質的に生物兵器である、という点に危惧を覚えるのである。

一般には知られていないが生物を利用した天敵農薬、BT(Bacillus thuringiensis)農薬は認可販売されているだけでも膨大なものとなっている。

【コンパクトウェットランド】こんぱくとうぇっとらんど
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「小さな湿地」ではなく、水質浄化手法の一つで近年その設置面積の少なさと効果の高さ、そして低費用により注目を集めている手法である。具体的には河川の岸近くにアシを中心にした植生帯を作り植生浄化とともに微生物の棲家を供給することで更なる浄化を行う、というものである。
良いことだらけの話には必ず「ただし」があるが、アシを使うのは良いとしてもアシ狩りをしなければ蓄えられた栄養分が再び流失してしまうのである。そのスキームを行政なりNPOに組み込んではじめて機能するのである。その意味ではハードウェアの設置で良しとし100%機能していない場合も多々みかける。

【根粒菌】こんりゅうきん
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読んで字の如く根の粒(コブ状のもの)に居る「菌」である。
この根粒菌は土壌に普通に住み着いている多くの土壌微生物の仲間であるが、マメ科植物の根を見つけると入り込んで共生関係が始まる。根粒菌という単一の微生物ではなく、多種類の微生物の総称である。
共生はマメ科植物が根粒菌に光合成生産物を栄養として与え、根粒菌は大気中の窒素を固定して植物に与える形で行われる。具体的には大気中窒素を還元してアンモニア態窒素に転換する形で窒素を供給している。

春先、湛水田植前の水田に植えつけられるゲンゲ(レンゲ草)はこの共生によって施肥前の水田でも窒素分を蓄えることが出来、そのまま耕起することで水田の肥料となる。大気中の窒素を利用する植物には有名なところでアゾラ(アカウキクサなど)があるが、基本的には同じ仕組で窒素固定を行っている。 尚、この共生が可能な植物種は限られているので、花壇の前で屁をぶっこいて「空肥だ」とほざいても無意味かつ植物は迷惑なだけだと思うのでやめませう。

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