植物用語辞典 利助流家元版

果実種子解説特別編


果実種子解説特別編
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果実・種子は非常に分類が複雑で植物用語としても大きなファミリーです。一つ一つ解説しても仕方が無いので「種子特別編」としてまとめます。
尚、従来個別に解説していたテキストはそのままに、新たに解説する項目のみ当記事にリンクをいたしますのでご承知おきください。


【解説】
最初に「種子」とは何か、という点であるが、果実(かじつ)の構造と密接な関連があり、果実とともに解説を進めて行きたい。
果実は「フルーツ」が想起されるが、花の構造である子房壁(しぼうへき)が成熟して果皮(かひ)となり、複数層に分化したものを称する。果皮が多汁・多肉質の場合、果肉(かにく)と呼ぶ。種子は果皮の中にある。

果皮の複数層にはそれぞれ特徴があり、一般的に以下に分類される。

果皮名称 特徴
外果皮(がいかひ) 果皮が複数層ある場合、最も外側の層、ブドウ、カキなど膜質の薄い皮を想起されたい
中果皮(ちゅうかひ) 果皮が3層の場合の真ん中の果皮。ブドウで言えば中果皮は食べる部分である多汁・多肉質の果肉である
内果皮(ないかひ) 果皮が複数層ある場合、最も内側の層で硬質化している場合、(かく)と呼ぶ。サクランボの「種」

果実の構造が出たついでに、果実と称する構造が何に由来するか、言い方を変えれば花のどの構造に由来するかによって呼称が変わる分類を。

呼称 特徴
真果(しんか) 蜜柑や柿など果実の大部分が子房から成るもの
偽果(ぎか) 果実の大部分が萼筒や花托など果皮以外の付属物由来のもの。イチゴ、リンゴが代表例(特に萼筒や花托に由来する部分を偽果皮(ぎかひ)と呼ぶ)
*偽果は仮果(かか)または副果(ふくか)とも呼ぶ

通常果実は大部分が果皮から構成されているがリンゴは子房下位(しぼうかい=花床が窪んで子房が埋没 花床の内側と子房壁が合着している形状)であり子房が花托に包まれている。従って果実の大部分は花托由来である。
さらに果実は果皮の形状による分類があり、ますます訳分からん世界に突入する。この違いは種子散布の違い、つまり植物がどう分布を拡げるかという「思想」の違いだと思われる。

呼称 特徴
乾果(かんか) 果皮が薄く、乾燥している果実を示す
裂開果(れっかいか) 成熟すると裂ける果実を示す
閉果(へいか) 成熟しても裂けない果実を示す。非裂開果(ひれっかが)と呼ぶ場合もある
液果(えきか) 果肉が多肉質や液質となるもの。多肉果(たにくか)と呼ぶ場合もある
*裂開果で思い付くのはザクロであるが、ザクロは同時に液果でもあり、それぞれの分類は対立的なものではない。

裂開果については、裂開する部位などによりさらに細分化した分類が存在する。ここまで来ると覚える必要性もなく、まさに「ふ〜ん」レベルの情報である。

呼称 特徴
袋果(たいか) 果実の合わせ目の線(内側は内縫線(ないほうせん)、外側は外縫線(がいほうせん)と言う)ではじけて開く果実。オダマキ、トリカブトが典型である
豆果(とうか) 内縫線、外縫線両方で裂ける。マメ科に多い果実の形状である。莢果(きょうか)とも言う
節果(せつか) 分節果(ぶんせつか)節莢果(せつきょうか)とも言う。マメの莢を思い浮かべれば、その形状。クサネムなど
朔果(さくか) 複数の心皮(しんぴ)により形成され、種子も複数含む裂開果。熟すると下部が裂けて種子を散布する。アサガオなど。心皮とは、元々葉であったものが子房、花柱、柱頭を作る元になったものを指す。
角果(かくか) 2つの心皮から成り中間に隔膜があり、成熟すると縦に裂ける。アブラナ科全般。タネツケバナなど。果実の長さが幅の2〜3倍以上の形状を特に長角果(ちょうかくか)と呼ぶ
胞背裂開朔果(ほうはいれっかいさくか) 室背裂開朔果(しつはいれっかいさくか)とも呼ぶ。心皮背面の外縫線で裂けるもの。スミレ、カタバミ、アヤメなどが代表的
胞腹裂開朔果(ほうふくれっかいさくか) 室腹裂開朔果(しつふくれっかいさくか)とも呼ぶ。心皮背面の内縫線で裂けるもの。
胞間裂開朔果(ほうかんれっかいさくか) 室間裂開朔果(しつかんれっかいさくか)とも呼ぶ。心皮の境界線で裂けるもの。ナデシコ、アサガオ、サクラソウなど
胞軸裂開朔果(ほうじくれっかいさくか) 心皮の背面中央と境界線両方が裂けるもの
孔開朔果(こうかいさくか) 果実に穴(孔)が開き種子が出て来るタイプ。ケシ、キキョウなど
蓋果(がいか) 横裂果(おうれっか)とも呼ぶ。果実が横に裂けて上半分が蓋に見えることによる。オオバコなど
分離果(ぶんりか) 複数の心皮がそれぞれ分離して分果(ぶんか)を形成する。シソ科植物に見られる
双懸果(そうけんか) 分果が二つあり、縦に分離するもの。セリ科に見られる

まさに「はぁ」状態であるが、基礎知識以下の糞知識であるので忘れて頂きたい。ついでに裂開しない閉果についても書いてしまうがこれも同様。知っていても役に立つことは皆無と思われるのでナナメ読みで(汗)。

呼称 特徴
痩果(そうか) 心皮は一つ、種子も一つ含む。キンポウゲやイラクサが代表的
下位痩果(かいそうか) 心皮は複数、種子を一つ含む。子房下位で果皮が花托と癒合する偽果の構造である。キクやオミナエシなど
頴果(えいか) 痩果の一種で穀果(こくか)とも呼ぶ。果皮と種子が癒合し、頴で覆われる構造。イネそのものである
胞果(ほうか) 心皮が複数で一種子を含む。果皮が緩く種子を包みこむ。イノコズチなど
堅果(けんか) まさに堅い果実で果皮が木質化しているもの。ドングリや栗の構造
小堅果(しょうけんか) 堅果の小型のもの。タデ科やカヤツリグサ科の果実の構造である
翼果(よくか) 果皮の構造の一部が翼状になるもの。カエデなどの種子。散布の一表現であると思われる

さらに話は続き(これで最後にするが)、フルーティな果実の分類。すでに用語として独立解説しているが、いわゆる液果である。

呼称 特徴
漿果(しょうか) 真正液果(しんせいえきか)とも呼ぶ。内果皮、中果皮が多肉質な液果である。ワイルドベリー、ブルーベリー
単漿果(たんしょうか) 漿果であるが一心皮性のものを区別する。マツブサ(ブルーベリー状の実を付ける)など
複漿果(ふくしょうか) 漿果であるが多心皮性のものを区別する。ブドウやナスなど
柑果(かんか) ミカン状果(みかんじょうか)とも呼ぶ。多心皮性の漿果であり、外果皮は油細胞を含み、中果皮は海綿状、まさにミカンそのもの
ウリ状果(うりじょうか) 心皮が三つの漿果である。外果皮は花托筒と癒合して硬質化し、中果皮と内果皮は多肉質で海綿状となる。まさに瓜の形状
ナシ状果(なしじょうか) 多心皮性の漿果である。子房を覆う花托が多肉質となる。リンゴの形状
核果(かくか) 石果(せきか)とも呼ぶ。内果皮が木質化して果核(かかく)となる液果。サクランボの形状
小核果(しょうかくか) 核果のうち一心皮性のものを称する。通常は集合果(しゅうごうか)となる。集合果はキイチゴ状果(きいちごじょうか)とも呼ばれる通りキイチゴが代表例


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