Water Plant Picture Book Ver.3.1

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水田雑草【ハ行】

標準和名 ハリイ 学名 Eleocharis congesta D.Don 分類 カヤツリグサ科ハリイ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
草姿ではマツバイとの区別がつきにくい。強いて言えばマツバイは地下茎によって増殖するが本種は叢生し根本からの密集度が高い程度。より簡単な同定は引き抜いて見る事で、地下茎で株同士が繋がっていなければハリイである。マツバイは多年草、ハリイは一年草という生活史の違いもある。
水槽でもかなりの期間育成出来るが、明らかな沈水葉の展開は見られない。カヤツリグサ科で花は地味。浅水のビオトープでミゾハコベなどと共にグランドカバー的に用いると好ましい。

ハリイすなわち針藺であり、事実針のような葉であるがイグサ科ではなくカヤツリグサ科の植物である。マツバ「イ」やホタル「イ」も同様で、他科の科名植物に形容詞的な名詞を付けた面白い和名の植物群である。
わりと広範な自生がある植物であると思うが、近在の水田でも発生する水田が決まっているようであり、お好みの環境があるのかも知れない。

標準和名 ヒデリコ 学名 Fimbristylis miliacea (L.) Vahl 分類 カヤツリグサ科テンツキ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
水田畦道に普通のカヤツリグサ科植物。類似のテンツキ属他種に比べ花穂がかなり小型であることで同定は容易。また、他種との同定ポイントについてはトンボ出版の「ため池と水田の生き物図鑑 植物編」に詳しいので参照されたい。
水辺の叢を演出するのに、あまり大きくならないので使いやすい。普通に蔓延る雑草と思われがちであるが、経験上種子生産と発芽に乖離があり意外と長期維持が難しい。普通にある草なので毎年採ってくれば済む話であるが。

抽水と区分したが本種は光合成タイプがC4であり、完全な湛水では見られない。飽水状態の土壌でも見られず、水田地帯では畦の高い位置に好んで生えている。
和名の由来はヒデリ=日照り、コ=苗の意であり、日照りに負けず育つ草、という意味。休耕田ではガマとともに遷移初期に入り込む場合が多いように感じる。

標準和名 ヒナガヤツリ 学名 Cyperus flaccidus R.Br. 分類 カヤツリグサ科カヤツリグサ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
湿地に生える一年草であるが、近場では稲刈後の水田でよく見かける。カヤツリグサ科としては最小の部類に入る非常に小さな植物。
花穂の形が面白く味のある植物であるが、抽水と言うよりも「やや湿り気のある土」に生えているのでビオトープで育成するにしても環境を考えなければならない。また、印象として稲刈後に水田が明るくなった状態で生育を始め、秋から冬に向かう弱い日照によって開花・結実する生き残り戦略を持った植物のように見える。
資料によっては希少植物扱いであるが、少なくとも茨城県常総地区では稲刈後の水田で最も発生数が多く目立つ植物である。

シペルスであるが、水中での育成は無理なようである。このような草姿の水草を前景に群生させれば雰囲気が出ると思うので残念。しかし、カヤツリグサ科は水槽育成可能種が埋もれている確率が高そうな気がする。

標準和名 ヒメキカシグサ 学名 Rotala elatinomorpha Makino. 分類 ミソハギ科キカシグサ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 未判定種
ここ3年間正体に悩まされた草であったが、なんとか暫定的に判明した。見かけは小さなヒメミソハギ(草丈2〜3cm)で、第一に重要な同定ポイントはAmmannia属(ヒメミソハギ属)かRotala属(キカシグサ属)かという点、これは比較的早い時期に判明し前者は葉一枚に対し花を多数付ける(まさにヒメミソハギの種小名multifloraが性格を現している)、後者は葉一枚に対し花は一つである。
画像では分かりにくいが、花は葉一枚に対し一輪である。後はミズキカシグサやアメリカキカシグサなど近縁種であるが、前者は実物の入手(宮崎県産及び地元での採集)によって草丈のあまりの大きさと草姿の乖離により、また前者は萼片が花弁より短いのに対し、キカシグサ、ヒメキカシグサは逆という特徴により、後者は花の形状の違い(アメリカキカシグサは花の形状がミソハギに近い)により消去法で可能性を排除した。
第二に信頼すべき植物図鑑である牧野植物図鑑に記されたヒメキカシグサのイラストと同一の印象であったことが暫定的ながら同定の決めてとなった。サンプルを送付した研究機関の見解も同じであるが、公式回答もほぼ確定というレベルであるため「暫定的」とさせて頂いた。如何せん資料、写真が過少に過ぎ、自生もまた然りである。

周辺でも自生はかなり限定的で、休耕田1箇所、耕作田2箇所で発見しているが、休耕田は遷移が激しく2006年にはほぼ陸地化し数株が確認できた程度(2001年休耕)、耕作田は2005年に確認したが2006年は未確認である。
下の画像は2006年休耕田でのものであるが、左に垂れ下がるのがイヌビエの花穂であるので大きさがお分かり頂けると思う。

水槽での育成も可能であるが、キカシグサ同様に成長が遅くもともと小型なのがさらに小型化するので光量が十分に必要であると考えられる。また、挙動はキカシグサそっくりであり一年草のため加温水槽であっても育成は2〜3年が限界と思われる。

尚、近年一部で出回るようになったドワーフアマニア(スリランカ産)を和名ヒメキカシグサとして紹介しているWebサイトもある。現物を入手していないので何とも言えないが「種」として語るには何ら根拠も示されていないので意見は保留とする。この手の話が通用するのであれば、バリエーションの多い東南アジアのシソクサ類もすべて「和名シソクサ」である。そもそもヒメキカシグサであればRotalaであってAmmanniaではない。

標準和名 ヒメクグ 学名 Cyperus brevifolius Hassk.var.leiolepis T. Koyama. 分類 カヤツリグサ科カヤツリグサ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
畦や用水路際に自生する小型のカヤツリグサ。「クグ」はカヤツリグサの古語である。尚「クグ」を名乗るカヤツリグサ科の植物は他にオニヒメクグ、アイダクグ(タイワンヒメクグ)などがある。
タマガヤツリ(Cyperus difformis Linn.)と草姿が似ているが、タマガヤツリは花を複数個つけること、ヒメクグは花に独特の甘い芳香があることで区別できる。
小型の湿地植物なので鉢に寄せ植えしてビオトープに用いる。カヤツリグサ科独特の雰囲気があり面白いと思う。茎が非常にしなやかで、乾燥させて草履表に用いられる事もあると言う。

どこにでもあるように思うが、カヤツリグサ科他種と比べると目にする機会は少ない。画像のイメージ通りの何となく気品がある姿が好ましい。

標準和名 ヒレタゴボウ 学名 Ludwigia decurrens Watt. 分類 アカバナ科チョウジタデ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 帰化植物 現状指定なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
別名アメリカミズキンバイ。異名で分かる通り熱帯アメリカ原産の帰化植物である。ルドウィジアとしては外来生物法でアメリカミズユキノシタ(Ludwigia repens 流通名レッド・ルドヴィジア)が要注意外来生物に指定されているが、この種の解説中で本種についても触れられており、被害実態や危険性が認識されれば早晩リスト入りすると考えられる。
ややチョウジタデに似るが草体は大きく4 稜があって茎の断面が正方形であることで区別できる。花はミズキンバイやチョウジタデに似たルドウィジア特有の黄花で、観賞価値は十分であると思う。

ただし、レッドピンネイトやニードルリーフといったルドウィジアは比較的容易に野生化するようで、私も湿地でこれらを見たことがある。環境負荷を考えれば水槽内に閉じ込め外に出さないようにすべきである。屋外育成も出来れば控えたい。

標準和名 ヒロハイヌノヒゲ 学名 Eriocaulon robustius (Maxim.) Makino. 分類 ホシクサ科ホシクサ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
ホシクサ科は種類が多く、自生地域による形質変化も多いことから安易に同定出来ないが、葉及び花の形状から判断。また、この科に造詣の深いsonsiさん、しんぺーさんに画像及び実物を見て頂きアドバイスを受けた。
ホシクサとともに最も普通に見られるホシクサ科の植物。水中での育成は長期の維持は困難なようであるが、花穂を多数伸ばし科名の由来となった「満天の星」のように開花する様は好ましい。種子も多数収穫できるので、1年草の園芸植物として屋外で育成してみても面白い。

県内ではイトイヌノヒゲ、クロホシクサなど10種類以上のフロラ記録があり、今後の探索により明らかにしたい。ホシクサとともに無農薬、減農薬の水田に出現するようなので除草剤との因果関係がある可能性が強いと考えられる。

標準和名 フタバムグラ 学名 Hedyotis diffusa Willd. 分類 アカネ科フタバムグラ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
細長い葉をまばらに対生させる小型のアカネ科水田雑草。葉に独特の光沢があり水田・湿地でも個性的な趣を醸し出す。白い小型の花をつけるが、目立つ花ではない。
漢方では白花蛇舌草という名称で根を含む全草を乾燥させたものが販売されているがやや高価である(←元愛用者)。水中育成は一定期間可能であるが条件が厳しく水質を外すと枯れてしまう。詳しい条件は不明であるが、育成されている方によれば南米水草と同条件、高光量で水中化可能との事である。

小型で葉がまばらなためか他種と混生する水田畦際では発見が非常に困難であり、他種に埋もれてしまうと見つからない。経験上平地の水田には少なく、谷津田地形に多い。
似たような名前の「オオフタバムグラ」は北アメリカ原産の帰化種で外来生物法の要注意外来生物である。

標準和名 ヘラオモダカ 学名 Alisma canaliculatum A.Br. et Bouche 分類 オモダカ科サジオモダカ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
エキノがオモダカ科であることが納得できる種。アマゾンソードやウルグアイエンシスに似た草姿の水田雑草。オモダカに比べるとやや分布が狭い。和名の由来は花がオモダカに似て葉がヘラ状であることによる。
北方型なのか北陸や関東以北、東北・北海道で水田の強害草となっているらしい。ただこれは分布の濃淡であって自生自体は全国にある模様。
残念ながら水槽で沈水葉となることはなく、屋外での育成となるが草体、花芽とも大きくなり持て余すこともある。オモダカに比べて花数が多く観賞価値は十分であると思う。花は断面が三角形中空の花茎から複輪生総状花序をつけ、白色の一日花をつける。

水田雑草としては最も巨大な部類であり農家にとってはいい迷惑の雑草であるが、水田に立つ姿は王者然とした品がある。近所では用水路に多く、ミクリと競い合うように開花する姿をよく見かける。根茎は解熱、解毒作用を持つと言われている。

標準和名 ホシクサ 学名 Eriocaulon cinereum R.Br. 分類 ホシクサ科ホシクサ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
ヒロハイヌノヒゲ同様、同定に関しこの科に造詣の深いsonsiさん、しんぺーさんに画像及び実物を見て頂きアドバイスを受けた。
ホシクサ科のなかでは水中育成も可能なようであるが、開花するとその後枯死するようである。現在手元に改良品種と言われているヒメシラタマホシクサと頂き物の鹿児島県産ホシクサがあるが、どちらも枯死することなく加温水槽で生育している。
この植物は発生する水田が限られる、とよく言われるがその通り発生する水田と見た目には条件が変わらない隣接の水田にはまったく見られなかったりすることが多い。休耕田では遷移の初期に入り込むガマやヒデリコなどに圧倒されてしまうせいかごく短期間見られるようである。

ちなみにホシクサの学術的同定については水草小学校の水草学以上の文献・コンテンツは見つからない。

標準和名 ホッスモ 学名 Najas graminea Del. 分類 イバラモ科イバラモ属
育成形態 【花】 【外】 【水】 カテゴリー 【浮】 【葉】 【抽】 【湿】 【沈】 環境省RDB 記載なし 自生環境 水田 湿地 湖沼
生活型 一年草 多年草 越年草 増殖 実生 地下茎 株分け 挿し芽 同定
主に水田に自生するイバラモ科一年生草本。発芽から結実まで沈水であることが必要であり、自在に水の制御を行う乾田では見ることが出来ない。
本種はしばしば同属のイトトリゲモ(Najas japonica Nakai)と混生すると言われているが、ご多聞にもれずこの株を採集した水田でも混生が見られた。さらにヒロハトリゲモ(Najas indica (Willd.) Cham.)<標準和名は「サガミトリゲモ」との説もあり>も自生していたのでイバラモ科が自生する環境が揃っていたのかも知れない。
他種との見分けは容易で草体から受ける印象が柔らかく色も淡い印象がある。決定的なのは小さく細い葉に突き出た葉鞘を持っている事で同環境に生育する他種イバラモ科には見られない特徴となっている。

環境省RDBに記載こそ無いが、しばしば混生するイトトリゲモ(絶滅危惧IB(EN))同様、かなり希少な植物になっているはずであり、事実関東近辺の様々な水田を見ている私がやっと一箇所で発見した程である。調査のやりようが無く移り変わりも激しい環境にある植物はフィールドワーカーの情報が重要だと思う。


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