利助おじさんの探検絵日記

【その11】葛西臨海公園 ビオトープ編

chapter3 河川を再現

◆実在しない実存◆

水族館の順路が終わり、外に出るとさらに「順路」の標識があります。行かれたことがある方はお分かりでしょうが、葛西臨海公園水族館の大きな特徴の一つであるビオトープへの順路です。
屋外に出て暫くすると自然の中の遊歩道があり、小河川が流れています。この小河川はもちろん自然のものではなく、ビオトープとして作りこんだものです。一説によれば巨大な循環装置があり濾過を兼ねて水を回しているとのこと。見た目は普通の河川に見えるほどの流量があるので大掛かりな設備ですね。
この川が自然のものではないことは植生を見れば分かります。なんたってインバモが見えます(笑)。どう見てもササバモではないですね。私が見てそう思うので間違いないでしょう。(まさか取って調べるわけにも行きませんから確証はありませんが)そしてその「インバモ」の上にはオオアカウキクサと思しき浮草が繁茂し川面がピンクになっています。
川岸にはハンゲショウ、シロネ、ミソハギ等々・・これだけ狭い範囲にこの植物種は自然状態ではあり得ないですね。野生ではインバモを除き自生は見ていますが、概ねアシやクログワイなど顧みられることの少ないメンバーと一緒です。これだけの豪華メンバーが揃っていることはまずありません。

それでも限りなく自然に見えてしまうのは、好きな植物種、概ね希少種を集めて自分でも楽しんでいるからでしょう。マニアにも自然に見え、一般の人は一括して「水草」「草」と思うのでこれまた違和感無く、どっちみち自然に見えるというのも緻密な計算か!?(笑)
水族館内の巨大水槽もあれだけの魚種、個体数が一同に会することはなく、作り物でありながら自然に見える・・・う〜ん、何となくアクアリウムの真髄に触れたような気がします。(^^;

◆魚たち◆
作った環境にも生物がいなければ違和感がありますが、この河川には多数のオイカワがおりました。折からの繁殖シーズンで婚姻色が出たオスをぜひ抑えたかったのですが、残念ながら高速で泳ぎ回る被写体に対し連写も効かずフィルターも持参せずの「お散歩装備」だったので果たせませんでした。(もちろん言訳です^^;)
この魚は意外に汚れた川にも居て、子供の頃にはよく釣りました。けっこう貪欲で餌代わりに家から持っていった御飯粒でもドジョウやウグイに混じり連れた記憶があります。自分で釣った魚を見ていると喰いたくなるのが人情。母に焼いてもらい食した記憶が蘇りました。味は美味だと思います。餓死寸前、という条件が付けばですが(汗)。
オイカワネタでもう一つ。この魚はベントス、特にヒルやミズミミズを餌とすることで知られているようです。睡蓮鉢で田んぼや河川の草を育てればそんなものは珍しくありませんが、どうしても嫌なら彼らを投入するという手もありますね。ただ、遊泳スピードと行動範囲を見ていると60cm径程度の睡蓮鉢では気の毒な気もしますが・・。

さて、「立派な魚を見せる」という水族館的習性が出たのか流れの淀んだ深みにはコイもいました。子供の頃の釣りの対象魚としては王様でしたが、実は私はあまりこの魚が好きではありません。
理由は2つあって、1つは何だか汚染の象徴のような気がするのです。近所のA川というドブ川には沢山いますが、A川は底泥が腐敗し所々メタンがわくような死滅した川です。僅かに見られる水生植物はオランダガラシと所々の堆積土砂の上にミソハギが見られるぐらい。それでも「魚が住む川」という人が居るのに驚き。黒褐色に見える東京御茶ノ水付近の神田川にも電車から見えるほどの数が居るので元々汚染に強い魚なのです。
もう1つは個人的な理由ですが、この魚で生計を立てていた友人一家の音信が絶えてしまったこと。これは霞ヶ浦のKHVによる影響ですが、私には汚染と不吉の象徴のような魚に思えるのです。ゴミの集積所に群れるカラスのように・・

chapter4 凝縮された「見せ方」

◆野池の断面◆

順路は地下に入り、ここで池の「断面図」が横から見られます。野池の構造をこんなアングルで見る機会は皆無なので非常に興味深い展示です。水草の繁茂は少なく、見学スペースからはエビモが見える程度でした。
行動範囲で見られるエビモは底が見えないマッディーな水域のものなのでどの程度伸びる草か分かりませんでしたが、あらためて横から見ると長く伸びる水草ですね。以前水槽に植えた際には一日cm単位で伸びていたので生命力に溢れた草なのでしょう。
この池では底にも日光が届き酸素も豊富なようですが、私が見る野生のものはどう見てもドブのような環境に自生しています。エビモのある用水路の深さを1mとすると(以前子供が落下したので分かりました^^;→こちら)平均透明度は15cm前後なので、85cmまで伸びなければ光合成によるエネルギーを得られないことになります。無論殖芽となって着床している際に酸素が確保出来るかどうかも疑問です。
同じヒルムシロ科のヒルムシロ(Potamogeton distinctus. Linn.)が持つアルコール発酵のようなエネルギー調達手段をこの草も持っているのでしょう。最もありふれた水草の1つですが、最も研究が進んでいない不思議な植物生理を持っています。

魚は画像にもありますがオイカワとクチボソ(モロコ)のような小魚が群れていました。爬虫類ではイシガメ。(クサガメかな^^;)里山野池のキャスティングです。近所の野池には最近茨城県内で猛威を奮うアメリカナマズと岸の抽水植物には毒々しいピンクのジャンボタニシの卵塊がある水域が多く、カメが居ても多くの場合放棄されたミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)ですが、そんなものを忠実に再現しても仕方ないですね。
ところでこのアメリカナマズというのはとんでもない代物で、貪欲さは天下一品です。ギャングとして知られるブラックバスまで狙うようで、ブラックバスが減少している水域もあります。卵や稚魚をブルーギルに狙われ、育てばそのブルーギルと一緒にアメリカナマズに狙われる。嫌われ者、デストロイヤーと知られる連中も生きて行くのが大変なようです。私の弟は小貝川で1m以上のアメリカナマズをツアーで釣った、と言っていました。口がきければ「何を食ってそんなにでかくなったのか」と問い詰めたいところです。
さらに話は広がりますが、カオスの湖霞ヶ浦で旬なのはこのアメリカナマズとムール貝に似た「カワヒバリガイ」です。特定外来生物に指定されていますが生態系に与える影響以前に農業用水の取水口などにびっしり付着してしまい水流を妨げています。なぜこのような話に繋がるのかと言うと、ビオトープはオープン環境である以上、水鳥の付着、排水への混入などあらゆる可能性を想定した生物の取り扱いが求められると云う事を言いたいのです。
この事はこうした大規模なビオトープを見るたびに思うことですが、もちろん個人で屋外育成を楽しむ際にも細心の注意を払いたいことです。出来ること、出来ない事はありますが最低でも外国産の魚類や植物の育成は避けたいところです。

◆岩魚◆

この野池に繋がる水路には何と岩魚と山女魚がいます。彼らの生存を可能にするためにかなり低く抑えられた水温と渓流風の演出が成されています。
この展示はフライフィッシャーとしての視点で見ると非常に勉強になります。一説には岩魚は極度の「ビビリ」で、物音や人影に敏感に反応する、と言われておりフライもかなり長距離からキャスティングします。その際、当然ながら水中の魚達のポジションや水中での挙動は分かりませんが、こうして横から見ていると得るものは多いですね。徐々に昼飯時も近づいており「塩焼きにするならあれか」といつの間にか品定めもしておりましたが(^^ゞ
飼い慣らされているためかどうか、ビビリのはずの岩魚は水中では意外に鷹揚で、水面の変化や周囲の人影にも無頓着なようでした。本来の岩魚の生息域には岩魚を捕食するような敵はそうそうおらず、標本でもヘビを丸呑みしたものが残っている程の悪食、本来の姿はこちらの方が正解であるような気がしますね。釣れる時はどうやっても釣れるし、釣れない時はどう工夫してもダメ、難しいと言われる渓流魚も実態は「腹が減ったら動く」だけだったりして。

公園の散歩、四季折々の花々、海浜、水族館、ビオトープ、これだけ費用がかからず色々な意味で満足感が得られるコースはそうそう無いと思います。さすが財政優良自治体ですね。葛西臨海公園より大規模で展示も多い公園は県内にいくつもあります。ただ押並べて高額の入場料がかかったりしますので「家族で気軽に」というわけには行きません。こうした環境が近場にある方が羨ましいですね。


【エピローグ】
こうして付き添い人の思わぬ暇つぶしも多々あった長女の受験ですが、2008年2月2日に終了しました。「鳶が鷹」の子なので私も経験が無いゾーンの偏差値の学校を4校受験し3勝2敗(二次受験含む)。最終受験校は超難関校で「どうせ受からんし連日の受験で疲れているから止めたら」と思っていましたが奇跡的に受かってしまいました。
さらにボロボロになりながらも「もう1校受験する」と言います。すでに鯛を釣っているのにメバルも?ってところだったので、その時は「俺に似て根性があるな」と思いましたが、後でよくよく聞いてみると塾の壁に貼り出される合格の紙を増やしたかっただけのようでした。塾の3〜5年生は合格校がどこか、よりも「合格数」で尊敬するらしいのです。質よりも量で驚かせる、う〜ん、似ていたのはそちらの性格だったようです(汗)。



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Vol.10 東京都江戸川区 2007.9.23(Sun)
photo Canon EOS KissDigital N/SIGMA17-70F2.8-4.5MACRO



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