利助おじさんの探検絵日記

【その19】近所の水田2
ワンダーランド編



◆田んぼの絨毯◆


数年前まではなかなか無かったミゾハコベですが、かなり復活してきました。これも「結果的な」低農薬化の影響でしょうか。しかし、この草を人力で駆除するとなると大変で、こういう姿を見てしまうと「雑草」「田の草」とやや憎しみを込めて呼ぶ稲作農家の気持ちが分かります。こういうのを有り難がって育成する私なんざ変な奴に見られても仕方ないですね(汗)。
場所によっては水田の土が見えなくなるほどの繁茂ぶりで、この草が本来持っている爆発力をかいま見た思いでした。
草と同時に様々な生物も帰ってきたようで、メダカや小鮒、ドジョウなど用水路に入り込む魚類とタイコウチ、ヤゴ、マツモムシなどの水生昆虫、そして今回間近でシマイシビルを見ることが出来ました。体を伸縮させて用水路を移動していましたが、でかい!体を伸ばした時の体長が5〜6cmありました。背中に入る縦線、緑褐色の体、ヒル独特の細い頭部。正直魅力を感じました。捕獲しようと思いましたが予想外のスピードで隙間に逃げて行き、写真も撮れませんでした、本当に残念!
こいつは見かけはナニですが人間の血を吸うわけではなく、小型の貝類を餌にしているらしいので、睡蓮鉢に発生するサカマキガイやモノアラガイを餌にすればプラケで飼育できると思います。人には見せられないし女房には大反対されるでしょうけどね(笑)。


◆でかい細胞◆


ミゾハコベの絨毯が切れる部分にポツポツと緑色の塊が見え、アオミドロかと思いましたが接近してみるとシャジクモでした。車軸藻のページに詳しく解説されていますが、しょぼいマツモのような外観のわりに、この植物は藻類です。主軸から枝のように出ている部分が一つの細胞!巨大な細胞が幸いして倍率の低い顕微鏡でも原形質流動を見ることが出来ます。
この植物を見るたびに思い出すのは、私が水草関係のネットに顔を出すようになったきっかけです。藻草さんと投稿画像についてシャジクモか?フラスコモか?とお話させて頂いた事をきっかけに深入りして(笑)、上記車軸藻のページの森嶋先生とも知り合う事が出来ました。
シャジクモは湖沼では「シャジクモ帯」と呼ばれる、やや深い水域に分布することが知られていますが、水田においては完全なお湯となった田面水に多く見られます。浅学にして詳しくは分かりませんが、湖沼に自生するものと種類が異なるのかも知れませんね。
一種独特の草姿で水草水槽前景にも良いのですが、残念ながらミナミヌマエビの大好物のようです。まぁ藻類ですからね(^^;


◆ハッカのある場所◆


ハッカです。一昨年土浦市の自然度の高い水田でそれとは知らず採集していました。その後水田を見るたびに探していましたが見つからず「本来の自生環境はどういうところ?」という疑問を持っていました。今回まったくノーマークの場所、画像のように用水路の底で発見することが出来ました。しかも我が家から10分以内の徒歩圏...。
水田周りの雑草を見る目がある程度ついてくると、すぐ発見できる外観の豪華さ?を持っています。ここは数日前までは轟々と水流があり完全な水中であったはずですが、水中生活能力を持っているのでしょうか?私の育成における心の師匠HOUさんはお送りした土浦市産株を何と水槽で維持されておられるそうです。さすが!と技術水準の高さに驚くのと同時に、完全に水中化するのかどうか興味深いところです。(私は水槽育成に成功しておりません)
同属のヒメハッカもそうですが、屋外睡蓮鉢では水中用土の根から新芽を立ち上げて来ますのである程度の水中生活は可能なようですが、多くの水田雑草同様、謎が深い自生形態を持っています。草姿についても一昨年の自生採集株(今は写真のみしかありませんが)、藻草さんに頂いた滋賀県産、そして今回採集地元産それぞれ微妙に違うようです。ハッカ特有の「香り」についても多少違うような感じです。何らかの交雑なのか地域変種なのか謎が深まります。


◆ワンダーランドの生物たち◆


さて、行く度に新しい発見がある「ご近所の水田」はまさにワンダーランドですが、植物のみならず生き物たちも魅力に溢れています。冒頭の生き物たち(ヒルは除く)は、私同様ある程度の年齢の方なら子供の頃に触れ合った記憶があると思います。ただ、その後の圃場整備、農薬の強力化などの要因で長らく姿を消していたのも事実です。上記のハッカ、昨秋見られたホシクサやミズネコノオは条件が整うのを休眠してじっと待っていたのかも知れません。
生き物はまずクロメダカが帰ってきました。水面が繋がっているどこかでひそかに世代交代していたのでしょうが、用水路に帰ってきました。また、滅多に見る機会のなかったドジョウ、コイ、コブナ。貝類ではタニシはもちろんですがマシジミやカワニナなど。水生昆虫も様々なヤゴ、タイコウチやミズカマキリ、タガメなど。年々生物相が豊かになるに従い、思われるのはこんな田舎の水田地帯にも外来生物が押し寄せていること。すでに根付いてしまったアメリカザリガニやウシガエルはどこにでも居ますし、植物ではアメリカセンダングサ、ホソバヒメミソハギ、アメリカアゼナ。個人的な希望ですが水田はワンダーランドであって欲しいと強く希望します。
自然と触れ合うのは二次的自然。そこで営まれる人間と自然の共存、ザリガニや昆虫に喰われるメダカやオタマジャクシの姿、それらを喰うシラサギ、限られた命が尽きるまで必死に生きる生命を子供達に感じてもらえばこれ以上の教育は無いですしね。と毎度ですが何だかんだ言いながら、子供と無料で遊べるのでお父さんの懐に優しいし、自分が楽しみたいだけなのは言うまでもありません(^^ゞダメ親です..orz


◆水田宝島◆以下2005.8.6追記


7月の最終日、水田では稲が開花していました。非常に地味ですが、この開花が多くの命を支えていると思うと厳粛な気持ちにさせられます。
稲の開花期前後には水田雑草後発組の姿を見ることが出来ます。この時期から生育するものは田んぼ水草好きにとっては価値の高いものが多く、熱射病寸前となりながらも探査に我を忘れてしまいがちです。
用水路沿いのハッカは枝分かれし、早くも蕾を付けて開花準備に入っています。植生の濃い水田には他では見られない草々が特徴ある草姿を見せています。熱を帯びた草いきれと時折水田を渡ってくる涼風。
新米の蛙、イナゴ、大型のトノサマバッタ、ショウリョウバッタ。生存競争の末に残ったアメリカザリガニは心なしかそれなりの面構えです。何年たっても変わらない夏の水田風景。松岡直也の「夏の旅」が聞えて来そうな風景です。こんな場所が徒歩圏にあるのは最高ですね。

今回は追記として後期発生型の希少植物を中心に少しご紹介をさせて頂きます。


◇ミズネコノオ◇


昨年は開花した株を見つけましたが、今年は発芽後の株を狙っていました。狙い通りです。
最初に発見した株はやや斜めに生えており最初はスブタかと思いましたが、しっかりした茎がありミズネコノオそのものでした。こうして上から見ると葉に分裂の無いキクモ、という佇まいです。キクモと混生すると発見は困難ですね。
去年までオランダプラント同様の大型の水中葉しか知りませんでしたが意外に小型の水上株です。小さいながらも細い葉が輪生した姿は豪華で、見つけた瞬間は心拍数が上がりました。
早速水槽に投入しましたが、花も見たかったので数株採集し、庭の田んぼビオトープにも植栽しました。昨年のホシクサやヤノネグサ同様、開花結実して翌年勝手に生えてきてくれれば最高です。

昨年も随分自然度の高い湿地を歩きましたがミズネコノオは見つかりませんでした。水田雑草なのか、湿地植物なのか本籍が謎ですが、こういう姿を見ていると本来水田雑草なのかも知れませんね。逆にミズトラノオは湿地にしか生えないようなので湿地植物なのでしょう。
山と渓谷社「野に咲く花」のミズトラノオの撮影地でもある市内の湿地ではついに見つかりませんでしたが、ミズトラノオも野生の姿をぜひ見てみたいものです。


◇サワトウガラシ◇


これも長らく「憧れの植物」でした。未見のマルバノサワトウガラシという希少種もありますが、特徴的な草姿なので発見出来るとすればこちらの方が先ではないかと思っていました。
あっさりと見つかりました。それも今回ご紹介するミズネコノオ、ホシクサ、スズメハコベ、アブノメと同じ水田で。まだまだ何か見つかりそうな素晴らしい水田です。これだけ濃い水田が一枚だけなのも残念ですが、10mの違いで道路工事を外れたのを幸運と思うしかないですね。
かなり小型の植物ですが、葉の形が特徴的で自己主張の強い草姿です。昨年sonsiさんに頂いた宮崎県産株は水槽で長期維持しようと思い水中育成しましたが失敗しています。今回はミズネコノオ同様開花結実狙いで田んぼビオトープに植栽しました。世代交代してくれると良いのですが。
水上株はなかなか硬質で真っ直ぐ育って行きます。水草になればかなり面白いと思うのですが決定的な育成方法が見つかりません。このあたりは同じ環境に生えていても草毎にかなり違うようで、そこがまた面白いのも事実なのですが。
シソクサ、ミズネコノオ、ホシクサ、スズメハコベ、アゼナが割りと容易、マルバノサワトウガラシ、アブノメ、キカシグサがやや難、そしてこのサワトウガラシはかなり難、というイメージなので「シソ科だから」「ゴマノハグサ科は」という話でも無さそうです。


◇ホシクサ◇


お仲間のヒロハイヌノヒゲがやや太くまばらな葉を展開するのに対して、こちらはまさに「水田のウニ」です。固そうな印象の草ですがsonsiさんの「ホシクサの栽培管理 Ver1.2」にもある通り、かなり壊れやすい草です。根本から根や草体を痛めないように土と一緒に採集するようにします。
実はこれまであまり興味を感じませんでしたが、水中生活に馴染む個体がある、という自分の仮説の証明のために力を入れて探しました(笑)。もちろん開花してしまっては水槽導入できませんので、採集するなら今のうちです。家にも昨年の種や頂き物の種から発芽した株がありますが、マツバイやアオミドロ(汗)と絡み合ってうまく株が引き抜けないので(^^;
去年確認した水田でしたが、秋に耕起されて一面にあったヒロハイヌノヒゲやホシクサは滅茶苦茶になっていました。こうなる前に落とした種が発芽、生育しているのでしょうね。水田に生きる植物の逞しさを感じます。
この植物は種小名をキネレウム(cinereum R. Br.)と言いますが、略称で「キネ」とか、草姿を評して「ウニ」などと呼ばれることもあるようです。でも・・・ちゃんと呼んであげましょうよ、たった四文字なんですから。


◇アブノメ◇


漢字で書けば「虻の目」で丸く小さな果実を虻の目に見立てた命名です。最近アブの幼虫が水田で生活している事も教えて頂きましたが、まさにそんな幼虫が泳ぎまわる水田に生えていそうな草です。
見かけの割りに軟質の植物で、茎を押しつぶすと簡単につぶれ、中の気体がパチパチ音をたてて出てきます。この様子から「パチパチ草」の異名もあるようです。
この草は茎以外がすべて小さく、花、果実、葉が小ぶりです。特に葉は発芽直後のみ人並み?で後は申し訳程度のものが疎らに出るだけです。とても不思議な印象、言ってみれば新芽を毛虫に喰われて茎だけ残っているようなイメージの草です。
この草は水槽育成やや難、ですがある程度の長期維持は可能です。ただし最後は根本が溶けて浮き上がってしまうようで、完全な馴化が難しいのかも知れません。昨年はヒル他虫の混入を避けるために必要以上に根を切って導入してしまったのでその影響かも知れません。同じゴマノハグサ科でもスズメハコベのように挿し戻しが容易なものもあるのですが、このへんも「科属による共通性」は無いようですね。


◇スズメハコベ◇


市内2カ所目の発見ですが、密度はけっして高くありません。1ヶ所目は、何回でも書きますが無意味な工事(資金が尽きたか計画が見直しか会社が倒産か知りませんが2年間中断中)のおかげで絶えてしまいました。絶えた自生地の密度は凄かった・・・。
ここも風前の灯で、自生を確認した2枚の水田のうち1枚は道路工事の土砂の下です。この道路も要らないと思います。いまだにバブルの名残か利権か、意味不明な工事が多いのも田舎の特徴です。近隣牛久の歩道橋なども雑誌でとりあげられた事もあります。

さて、そんな事はともかく、この植物は本県には自生の記録がありません。小さな目立たない植物で自生地が限られればフロラやRDBからバンバン落ちてしまい、人知れず絶滅するのも仕方が無いのでしょう。せめてここに書いておきます。茨城県にスズメハコベが自生しています。

これから昨年の謎ミソハギ科(暫定ヒメキカシグサ)、ジャンボキカシグサ(暫定ミズキカシグサ)も探さなければ。まだまだ宝が待っているワンダーランドのトレジャーハンティングはライフワークになりつつあります。





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