利助おじさんの探検絵日記

【その2】霞ヶ浦付近小河川 【新版】


◆意外な出会い◆


とある休日、人生の大部分を占める状態=金は無いがやや暇はある、状態にあった私は「ガガブタ採ってきて植えよう」と思い立ちました。ガガブタやトチカガミは特に嫌いというわけでもないのですが、これまで機会があっても何となく育てよう、という気にならなかったのです。

ガガブタはやや汚れた水域でも生育でき、霞ヶ浦水系では普通の水草です。採集時期は殖芽の時期が良いのですが、根を張ったばかりの時期なら何とか持ち帰りできそうだったので行ってみました。ちなみにガガブタの殖芽はバナナプラント(ハナガガブタ)をスリムにしたような感じで、和製バナナプラントと呼ばれています。
目的地で幼株を2株ほど採集し帰途につきましたが、事故でもあったのか県内最大の幹線道路(国道6号線)が凄い渋滞です。どうにもこうにも車が進まず、このままでは女房に「一日中水草と遊んで何やってんの!」と叱られてしまうことは明らかです。(汗)
ここは地元民の強さを発揮して裏道をスイスイ行こうと、やや霞ヶ浦沿いの裏道に入って快適に車を走らせましたが、途中で道と合流した水路が緑色なのに気が付きました。

「ほほ〜、珍しい水の色だな」

と思う..わけないですね。水草です!こんなノーマークの場所に延々と水路を埋め尽くす水草があるとは!


◆水草の奔流◆


凄い濃さでした。久々に圧倒されました。水温と水量から湧水起源だとは思いますが未確認です。何しろ市街地の暗渠から始まっています。その後、水田と市街地の境を通る道路沿いに、市街地、農耕地からノーチェックで吐き出される家庭排水や農業排水を合流させながら霞ヶ浦に注ぐルートとなっています。
目についたのはリュウノヒゲモとササバモ。ヒルムシロ科がこれほどの密度で優先種となっている河川は他に知りません。よく見るとエビモとクロモも見えます。
富栄養と水草のバランスがされているのでしょうね、これだけ汚くても繁茂しているということは。ヘドロは溜まっていましたが水は意外な程澄んでいました。

「ヒルムシロ」という名前が長年謎でした。浮葉の上でヒルはヒル寝しないし(^^;でもここに来て謎が解けました。ササバモの水中葉に結構ついています。ヒルムシロの水中葉にもついているのでしょう。ヨコエビもたくさん居ました。
しかしもっと謎なのはこれだけ汚くても水草が自生出来るのに、この川が注ぐ霞ヶ浦ではこれらの水草が見られないことです。これは水深の違いだと考えられます。護岸で岸からいきなりメーターオーバーの水深ですから。同じ汚染度合では光が底まで届きませんので。と言うか透明度は30cmです。(汗)


◆少し考えたこと◆


数ある霞ヶ浦の水質に関する論文のうちで、この謎を解き明かしたものがありました。
富栄養化によって藻類が繁茂し、二酸化炭素を大量に消費してしまうために水質がアルカリに傾き、同時に導電率を上げるため沈水植物が生育できない、というものです。
水槽崩壊のプロセスと同じだな、と妙に納得したのを覚えています。

霞ヶ浦の汚染原因は生活廃水と産業排水が主と言われています。たしかに高浜入りの山王川など見ている限り頷ける話ですが、実は農業・漁業の影響も大きいのです。
農業では特産の蓮と養豚、漁業では鯉の養殖です。蓮田ではとてつもない量の有機肥料を使用します。春先には蓮田一帯がかなり臭う状態となる程です。養豚は霞ヶ浦の周辺に何万頭のブーちゃんが居るのか知りませんが、ほとんど下水道未整備地域ですね。
鯉の養殖も、出荷時期の短縮のために栄養豊富な餌を集中して与えていました。狭い水槽に魚をぎっしり飼育して常に餌を過剰に与えるようなものです。しかし養殖業者は一連のKHV騒ぎによる行政判断で全戸廃業してしまいました。
汚染原因が一つ無くなったという感想よりも、ここで生計を立てていた人達の行く末を思う暗然とした気分の方が上回っています。綺麗事ではなく。KHVの侵入経路は不明ですが、ここのところ中国オオタナゴなどの密放流やハクレンの大量死などの変事が続いています。どこかの馬鹿がKHVその他のウィルスキャリアの魚でも放流したのでしょう。一握りの許されない行為が何百人もの人々の生活の糧を奪ってしまう、もはやこれはテロですね。
てな事を考えながら水草採ったり写真撮ったりして遊んで...予想通り叱られました。(T_T)


◆指標生物◆

指標生物という言葉があります。水中の生物の種類は水中に溶けている酸素(溶存酸素)と密接な関係がありますが、溶存酸素量は、水温と水の汚れの程度によって変わります。
汚れた水域では微生物や原始的藻類が多く酸素を要求することで酸素が少なくなりがちです。この点に着目したのがBOD(生物的酸素要求量)です。示している数値はCOD(化学的酸素要求量)と同傾向を示します。酸素量が少なくなれば綺麗な水にすむ生物は居なくなり汚染された水域の生物が多くなります。水域の汚染度合を生物相で示したのが「指標生物」というわけです。水質と生物の関係は一般的に以下のように示されます。

水質階級 指標生物
水質階級I(綺麗な水) カワゲラ、ヒラタカゲロウ、ブヨ、サワガニ、ヘビトンボ、ヤマトビケラ、ウズムシなど
水質階級II(少し汚い水) コガタシマトビケラ、ゲンジボタル、カワニナ、コオニヤンマ、スジエビ、ヤマトシジミなど
水質階級III(汚い水) ミズカマキリ、タイコウチ、タニシ、ヒルなど
水質階級IV(大変汚い水) アメリカザリガニ、エラミミズ、サカマキガイ、チョウバエなど

意外なことにウズムシ(プラナリア)は綺麗な水に住むこと、清流のイメージが強いゲンジボタル(と餌のカワニナ)は少し汚い水の指標生物であることが分かります。ただしあくまで「指標」ですので、この生物が居たから水質が〜という話ではありません。あくまで生物相の濃淡だとお考え下さい。





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