利助おじさんの探検絵日記

【その27】牛久沼付近湿地探検


◆牛久沼の姿◆


牛久沼は「牛久」と言いつつ大半が牛久市ではなく龍ヶ崎市にある沼ですが、東京都民であった遥か昔に友人達とバス釣りに来た事があって「牛久沼だから牛久だろう」と牛久駅で下車、とぼとぼ歩いた経験があり、道を尋ねた方々に呆れられた記憶もあります(爆)。正解は電車で行くなら上野方面から見て一つ手前の「佐貫(龍ヶ崎市)」下車です。
さて、そんな龍ヶ崎市の牛久沼ですが、沼とは言えど西谷田川、東谷田川、稲荷川などの流入河川が合流する河川の延長のような沼です。其々の河川はつくば市や牛久市の市街地や農村地帯を通っていますのでかなり汚れており、牛久沼にも見るべき水生植物が少ないのが実情です。近所と言うこともあってそこそこ通っていますが、沈水植物はオオカナダモぐらいしか見た事がありません。ご多聞に漏れず「今は昔」の物語のようですね。
釣りや養殖漁業は盛んで休日ともなるとバサーが押し寄せます。東岸にはうなぎ屋も立ち並びます。白鳥の越冬地ともなっているようですが、餌が豊富なので四季を問わず居ついてしまっているようです。
本湖は以上のように水質汚染、釣り(落としていくゴミは相当なもの)、養殖漁業と水草が育つことを拒否しているような状況ですが、周辺は国道6号が通る東岸を除き純農村地帯であり場所によっては非常に面白い(植物的に)湿地が点在しています。今回はそのような湿地の一つを訪問しました。


◆休耕田の形◆


休耕田は除草もあまりしませんし、まして高価な農薬は使用しませんので植物探査にはもってこいの湿地なのですが、観察してみると「遷移の形」として2種類あるような気がします。仮にAタイプとBタイプと呼びますが、Aタイプは圃場整備が進み、乾田となった後に休耕となった感じ。もともと整備されていますので水はすぐ抜けて陸地化します。遷移が激しい環境で、休耕翌年には早くもセイタカアワダチソウなど陸上植物が侵入します。
Bタイプはもともと流れ込みのある低湿地やある程度の湧水があるような湿田が休耕となったもので、植物観察にはもちろんこちらの方が圧倒的に優れています。里山で谷津田の地形となっている場所はこのような場所が多いようです。(画像参照)
湿田は単位面積あたりの収穫量が乾田に劣ると言われており、また農業機械も入りにくい事から減反では優先順位が高いのでしょうか、以前はこのようなタイプが良く見られました。 遠望すると普通の草原に見えますが、低湿地のためでしょうか、ズブズブと足が嵌る土地でした。植生もほぼ湿地性の傾向であり、まさに「ズブズブ!」という嬉しくなるような場所でした。
湿地に入って行くとセリ、トキワハゼに混じり茎の赤いヤノネグサ、ミゾソバなどのタデ類が密生していました。ところどころにホタルイらしき株があり、中央には淡いグリーンの線状葉を持つ植物が群生しており、ミズニラかと思いましたが近寄ってみると「しなり感」がなくカヤツリグサ科の植物のようでした。


◆里山の機能◆


このような湿地がある程度の期間安定して存続するためには水の供給が不可欠ですが、ここには湿地に注ぐ細流がありました。出所を辿ってみると、雑木林の林縁の小道下から湧水が確認出来ました。そこにはサワガニやイトトンボ、マシジミの姿も見ることが出来ました。
この湧水は雑木林が持っている保水力の証明だと思います。非常な植生を持っていた沼が近所にありましたが、周辺の宅地開発による雑木林の消失で完全に干上がり、惜しくも水生植物の多くは絶滅してしまいました。このような事例を考えると、湿地のみの存続は有り得ず、相互に機能が連携する雑木林や水田など、すなわち里山の機能が湿地の存続を可能にしているわけで、これが二次的自然の本来の姿であると思います。
このような里山は年々減少しており、すでに里山全域を保護の対象としている場所もあります。しかし、以前はどこでも見られたこのような環境とそこに住む小動物や昆虫、魚類や水生植物が限られた、保護された地区でしか見られなくなりつつあるのは寂しいものですね。メダカやドジョウ、タイコウチが見られると言うと「自然が豊かですね」と言われますが、これらの生物を調達するのも場所を決めて狙って行かなければならない程、生物も場所も減少しているのが実態です。


◆謎タデ発見◆


そんななかで非常に気になるタデが一角に密集していました。葉形はヤノネグサなのですが、微妙に長いのです。葉柄もやや長いようで基部は地面を匍匐し、茎には逆棘もまばらにあります。特徴的にはヤノネグサとナガバノウナギツカミに共通しますが、何とも判断がつきかねる草でした。
ヤノネグサは葉形の変異が多い草と言われていますが、自宅水鉢周辺でこぼれ種により発芽している株、この湿地を含む周辺地域で見られる葉形は一般的なものだけです。牧野標本館も調べましたが、どちらとも取れるような(汗)。もともとミイラから人相当てるようなものなので難しいですね。余談ですがデジカメとインターネットがこれだけ普及してきたので今後標本のあり方も変わってくるのでしょうね。デジカメで植物の標本を画像データとして残す、その際の撮影ポイントなどがスタンダードになれば良いと思います。
この長い葉形の株は採集して自宅で育成してみることにしました。開花すれば種の特定が可能だと思いますので楽しみにしています。(と言いつつ昨年の謎キカシグサは開花しても終に正体が分かりませんでしたが^^;)
牛久、伊奈、つくば周辺はこんな湿地がまだあります。つくば方面では掲示板でお話した東京の方に先にミズマツバ、マルバノサワトウガラシを見つけられてしまいました(笑)。せっかく素晴らしい環境に住んでいますので今後も時間と体調の許す限り色々な場所を歩いて調査してみたいと思います。





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送