利助おじさんの探検絵日記

【その34】冬の渓流


◆凍れる滝◆


茨城県には冬場に凍結する滝として有名な「袋田の滝」があります。高さ120m、階段状に落下することで「四度の滝」とも呼ばれ日本三名爆の一つとなっています。(あとの二つは那智の滝、華厳の滝)
ここまで規模が大きくなくても阿武隈山脈南端近くには結構な数の滝があり、凍結するものも多くあります。今年の寒波で期待できると思い、年末年始の帰省の際に渓流と併せて探検してきました。
ここは日立市と常陸太田市の境近くの「玉簾の滝」です。滝の両側は氷結していますが、これだけ寒くても中心は轟音とともに落下していました。ここでかねて用意のライトコントロールフィルター(ND)を使って一枚。強引に光量を落してシャッタースピードを遅くし、水の流れを表現するフィルターです。よく天野氏の川の写真に出てくる手法ですね。
飛び散る飛沫も凶器のような冷たさで、まさに凍れる滝です。袋田の滝にも足を伸ばそうかと思いましたが親族餅つき大会の時間も迫っていることもあって、渓流の様子を見つつ帰る事にしました。


◆カワヂシャの水中発芽◆


一帯の渓流にはカワヂシャが群生しています。夏に訪れた際の様子は探検絵日記「【その12】阿武隈山地南部の渓流」に記してありますので宜しければご覧下さい。美しいカワトンボもいてなかなか良い雰囲気でした。
さて、一部氷結した滝から流れる渓流の水はまさに手を切るような冷たさでした。それでも水中からカワヂシャの新芽が吹いています。もともと水中では低水温を好むので不思議ではありませんが、真冬に新芽を出すとはタフな植物です。ちょっと特殊なアクアリウムですが本種とエビモ、バイカモなどを繁茂させ、イワナやカジカを泳がせた水槽なんて良いですね。水槽用強力クーラーと電気代で見果てぬ夢で終わりそうですが。
本種もご多聞に漏れず自生地が減りつつあり、準絶滅危惧種扱いされているようですが、大きな原因として自生地がかぶる外来種オオカワヂシャの存在があります。場所によっては両種の雑種ホナガカワヂシャも確認されており、まさに侵略的帰化種と呼ぶに相応しい暴れぶりを見せています。幸いこの場所ではオオカワヂシャの侵入は見られませんが、代わりに下流域方面からオランダガラシの進撃が見られます。いつもの光景。


◆フクロウ墜落◆


渓流を歩いているうちに岸辺に落ちている大型の鳥に気が付きました。白い冬支度の梟でした。如何なる訳でここに墜ちて亡くなったのか知る術もありませんが、鉤型の嘴と見開いた目から、死して尚誇りを失わない猛禽類の気高さを感じさせられました。野生のものを見たのも初めてでした。
この近辺は利用されない山地が連なっており、自然が豊かです。マムシグサもここで初めて見ましたし、珍しいキノコ類や昆虫類も多数生息しています。
動物は道路を渡るときに右見て左見て手を上げて渡りませんので事故が多く、昨年はタヌキやハクビシンの交通事故による遺体を何回か見ています。自分で危ない目に遭ったことも一度ありまして、スパリゾートハワイアンズという一日居ても飽きない温泉テーマパークからの帰途、深夜の常磐道で目の前にウサギが飛び出した事があります。とっさにハンドル切ればこちらがコロコロ転がって大事故になったと思いますが、瞬時に「車やウサギより人間の命」と判断して直進しました。フロントに鈍い衝撃があり次のパーキングで見てみるとバンパーにヒビが入り白い毛がはさまっていました。ここで謝っても仕方がありませんが「ウサギさん、ごめんなさい」


◆光る水辺◆


冬の渓流は訪れる者もなく寒いだけですが、歩けばそれなりに発見があるものです。かと言って探検隊組んで行くほど魅力ある動植物が迎えてくれる訳ではないのであくまで個人的な趣味ですが。
陰鬱な空の雲が一瞬切れた際に陽光が差し込み、川面が輝きました。流れに光が反射してこんな写真が撮れました。私としてはこの画像と梟を見られただけで満足なわけです(笑)。
この川はやがて山地を出て短い平野部を流れ太平洋に出て行きます。平野部の流れが短いせいか水温が低いせいか、清流でありながら他の水草の姿はありません。海岸に至るまで礫底が続くのも大きな要因かも知れませんね。
県南平野部ではある程度汚れた河川にもササバモやリュウノヒゲモがあったりしますが、植生的に見た「河川の型」というものがあるのかも知れません。また一つ新たなテーマが出て来たような(汗)。

冷え切った体で車に戻るとフロントガラスが一部凍結し、氷の結晶が見られました。寒い冬の湿地探検の一日。





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