利助おじさんの探検絵日記

【その37】風土記の丘の水草達


◆テーマは霞ヶ浦◆

かねて行ってみたいと思っていた石岡市の「風土記の丘」に行く機会がありました。ここは大規模な公園の中心に池があり、大賀蓮で有名なスポットです。私は蓮はどうでも良いのですがその他の水草を見てみたいと思っていました。テーマパークのビオトープがどういう背骨を持っているのか最近の興味はそこですね。
石岡は今や特徴の無い地方都市(失礼)ですが、律令時代は常陸の国の国府や国分寺が置かれた中心都市でした。風土記の丘はそこに由来します。幹線を外れると町並みも風情があって好ましく、郊外には高浜入りなど自然豊かな霞ヶ浦の浜辺があり、住むには良いところだと思います。
ビオトープはまさに「霞ヶ浦の再現」とも呼ぶべき植生がありました。アサザ、コウホネ、フトイ・・・。こんなに近いのになぜ霞ヶ浦を模したのかと言うと、分かりません(笑)。銀座まで1時間以内に行けるのに戸越銀座とか染井銀座とかあるのと同じ感覚でしょうか。地方にある植物を使ってビオトープを作るのは非常に良い事なので問題は無いと思いますが、一歩踏み込んで「少し昔の霞ヶ浦」を再現してくれると尚良かったのですが。
訪問したのは5月でしたがすでにコウホネが開花していました。我が家の日当たりの悪い場所にある瀕死のコウホネとはえらい違いですね。やはりコウホネ類は広い場所で伸び伸びと日当たり良く育てないとうまく開花しないようです。


◆アサザ気中葉?◆

明らかにアサザですが、余裕のある池の中心方向に行かず岸辺に上陸していました。気のせいか浮葉と異なりクチクラのような光沢も(汗)。アサザの発芽は湖岸陸上と聞いたことがありますので、発芽後僅かな水分でここまで育ったのかも知れません。それにしてもアサザにこういう自生形態があることは初めて知りました。
さすがに開花はまだでしたが時期となれば湖岸一体黄色い花に覆いつくされるのでしょう。水生植物の自生種としてはヒツジグサと並ぶ大型の花で非常に見栄えがします。育てている方も多いと思いますが、一日花なのが残念ですね。睡蓮鉢程度では一度に4〜5個がせいぜい。水面を埋め尽くすまでは到底行きませんので。
この植物も分類に於いて混乱があるようです。以前はリンドウ科という文献もありましたが現在ではミツガシワ科に落ち着いたようです。しかし、ミツガシワ科の科名植物ミツガシワは1属1種、多数派はアサザ属というのも不思議な感じです。自生形態はもちろんミツガシワとは似ていません。学名(Nymphoides peltata (SG Gmel.) Kuntze. )通り睡蓮に非常に近い気がしますが、分類は生態学的なものではないので何とも言えないですね。


◆太いフトイ◆

フトイは太いだけあって(?)ある程度強く、汚れた水域でもよく見かけます。この意味で霞ヶ浦を代表する水生植物かも知れません。フトイが密生する湖岸は大型の魚が入って来ないからでしょうか、メダカの大群が潜んでいました。まさに生命を育む湖岸植生、というイメージ通りですね。
カヤツリグサ科の多種多様ぶりには植物に少しでも興味がある方なら分かると思いますが、非常に悩まされます。マツバイとハリイの区別など自分で書いていてナニですが(^^;「引き抜いてみて株がランナーで繋がっていたらマツバイ」とか裏技的な同定方法が必要とされます。茎の断面が三角なら概ねカンガレイでサンカクイは珍しいとか(爆)。この科には属単位で研究者が居て「スゲ属だけ」研究している方も知っています。職業的に研究していても時々同定をミスるそうなので素人は降参した方が良さそうですね。
その点フトイはでっかくて花もカヤツリグサ科丸出しなので非常に分かりやすいと言えます。大きな睡蓮鉢や庭池に植えると雰囲気があって良さそうです。直径50〜60cmではすぐに占領されて雰囲気どころでは無くなってしまうので止めた方が良さそうですが(汗)。


◆メダカの大群◆

ビオトープの成功は表面的には生物が世代交代して増えて行く事にあります。その点水辺ビオトープで一番分かりやすいのはメダカですね。絶滅危惧種だということもありますが、メダカの産卵には水草が必要で餌となる微生物も繁殖していなければなりません。つまりメダカが増えるという事はバランスの取れた水辺環境が再現されているという事になります。
ここには恐らくパッと見で数千単位のメダカが居ましたので正常な生態系が維持されているのでしょう。シードバンクによる植生の復活は次のテーマですね。

GW中の幹線道路大渋滞を避けて偶然立ち寄った公園でしたが、私的には見物が多く楽しい公園でした。もう一人の山野草好きの私は「公園だからと言ってシバザクラや水仙植えるな、チゴユリやカタクリ見せてみろ」と心のなかで呟いていましたが(笑)。まぁそれは別な話。
茨城県南部のビオトープは良くも悪くも霞ヶ浦水系を意識せざるを得ない事を再認識できた公園でした。


◆都市の風景◆

自然はもちろん好きですが、人工物でも味のあるものは大好きです。地元にも土蔵作りの商店などが僅かに残っており、二階の住居部分は木の雨戸が何枚もあって井上靖の「しろばんば」の世界のような懐かしさを感じます。機会があればあの二階で昼寝してみたい・・・

石岡市は律令時代の常陸の国の国府で国分寺もありましたし、水戸街道の要衝の地でもあり歴史のある街です。
現在の水戸街道、国道6号は渋滞しつつもバイパス的に中心部を迂回しており、風景はどこにでもあるチェーンのファミレス、靴屋、HCなどが並ぶ何の特徴もない地方都市です。
しかし、駅前に続く旧道沿いはさすが古都、という非常に好ましい雰囲気があります。道の両側にはよく手入れされた土蔵作りや和風から洋風建築に変わった頃の建物が現役で使われており、京都や倉敷など、歴史のある観光地にいるような気分にさせてくれます。
「昔風」に作られた現代の建物は古くなれば汚いという印象ですが、本物は時間の経過を表情に刻んでいます。重みを感じさせてくれます。
旧道なので車を止めるようなスペースが無いのと、この近辺はいつも通過するか、用事があっても霞ヶ浦や西部のため池などが主目的なのでゆっくり歩いたことはありませんが、機会があれば建物や街の風景を写真に収めながら散歩してみたいものです。

この街を見ていると、街の機能の一つとして「癒やし」があるのではないか、と感じます。
石岡駅は、やはり癒やされる鹿島鉄道鉾田線の始発駅となっていました。(2007年3月で廃線)たった一両のディーゼルカーが田園や雑木林を抜けて霞ヶ浦沿岸を走り、開けた窓からかすかに草いきれが混じる春の風が・・・懐かしい風景がまた一つ無くなりました。




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送