利助おじさんの探検絵日記

【その50】病中湿地探訪記 Part2


◆判明した事実と誤認情報◆


第二ラウンドの湿地に向かう途中市街地を通りますが、途中ちょっとヒヤリとしました。右折信号が出ている交差点で右折しようとしたところ、直進車がふらふらと出てきました。運転者は自信なさげなおばさんだったので「仕方ねぇな」と思い通してあげましたが、交差点左先頭で信号待ちをしていたパトカーは見逃さなかったようでサイレンを鳴らして追跡していたようです。体が弱って気弱な私は「俺なんかした?」と一瞬思ってしまいました。こちらが信号青なのに赤の車を通してしまったのも信号無視と言えないこともないし。と言うかこんなことでも疲れるので勘弁して欲しいものです。

そんなこんなで徐々に疲れてきましたが一度行くと言ってしまったものは仕方がない。到着すればお楽しみもあるってことで気力を振り絞り。(そもそもこんなことで無理する必要はまったく無いわけですが^^;)
この湿地では近辺でわりかし希少となっているサンカクイが見られます。自宅近くのドブ川にもなぜかあるのですが、長年カンガレイだと思っていました。そして恐るべき事に水辺の植物の図鑑のカンガレイは・・・(汗)。よく見れば叢生していないし花に柄があります。まぁ良くあることでご容赦を。先日コソーリと入れ替えました。
なぜ分かったのかというとドブ川で採って来た「カンガレイ」がどうも様子が違うようでして(^^;よくよく調べたら、ってことなのです。

余談続きですが、睡蓮鉢で育てるカヤツリグサ科の一押しはサンカクイです。カンガレイのように縦横ともバカでかくならないし、主軸がすくっと水面から立ち上がる周りにヒルムシロの浮葉があると雰囲気最高、とても涼しげです。


◆これが今回の目玉だと思われます◆


長男がメダカや小鮒と戯れている間、周辺の植物をそろりそろりとチェックしていましたが、かねがね写真を抑えたいと思っていたササバモの陸生型が見つかりました。ちょっとアングルと光の状態が悪くダメ写真ですが現場の状況でこれが限界なのでご容赦。
自然環境、特に水のある環境ではササバモはおおむね沈水葉か浮葉です。沈水葉だけの場所と浮葉も出す場所があり、これはこれで面白いテーマになりそうですが。今年は梅雨入りと言えども初っ端から中休みが長すぎたせいか水位の低下でこんなことになっているのかも知れません。なにかやろうとした時にまずは休憩というパターンですが、他人事には思えない今年の梅雨ですな(^^ゞ
ササバモはまだ広範な自生がありますが、ヒルムシロ科の大型種3兄弟(ガシャモク、インバモと)のなかでは唯一容易に自生を見られる種でもあり好きな植物です。水槽で育てても見ごたえがありますが、ヒルムシロ科全般の傾向としてトリミングに弱いのでレイアウト水槽には向かないというのが玉に傷。ヒルムシロ科で唯一本当にヒルが乗っているのを目撃した種でもあります(爆)。家の睡蓮鉢で殖えているササバモはこの湿地やや北方の水路から来たものですが、茶色い小さなヒルも一緒に連れて来てしまいました。私は平気だったのですが、ザリガニが睡蓮鉢に侵入した際に根こそぎ喰われて絶滅してしまいました。このザリガニも子供がメダカを捕まえて来た際に一緒に入ってしまった小さな奴なのでしょうがまさかヒルまで喰ってしまうとは・・。

ヒルムシロも陸生型があるようですが未見です。ヒルムシロ自体が乾田化や水質悪化で近辺では急速に減ってしまい、何箇所かのため池で僅かに生き残っている有様なので仕方ないですね。自宅育成株は水面が混雑してくると異形葉を出しますが、クチクラが形成されていますのでもしかすると陸生型の気中葉なのかも知れません。


◆湿地依存度が高そうなタデ科◆


このタデ科、サデクサ(Persicaria maackiana  (Regel) Nakai)は見る機会が少なく採集もためらってしまうほどの有様だったので盲点でしたが、水草水槽を維持していた末期に入手する機会があり水中育成をしてみました。もともと湿地依存度が高いようなので育つのではないか、と思います。「思います」というのは成長しつつ水中葉かどうか確信が持てない状況で育成というか水槽維持を止めてしまいましたので(^^ゞ
てことで当記事アップと同時に水草四方山話【第八話】イヌタデ属水中育成に加筆しておきました。ここまでイヌタデ属の水槽育成について触れている記事は他にないでしょう。(ちょっと自慢^^;)しかし「見たこともねぇから知らねえよ」という種類が多いのが何ですが(汗)。
特徴は棘が多い、葉の耳の開きが大きい、ギザギザの目立つ托葉鞘があるという点以外はホソバノウナギツカミに似ています。毎年ホソバノウナギツカミ、アオヒメタデ、ヤノネグサなどが実生する湿地型睡蓮鉢にも植栽しておきましたので来年以降のリリースに期待して下さい。
てな事は置いておいて、托葉鞘は同じタデ科でも形状が様々で同定の重要なポイントになろうかと思います。重要な同定のポイント、花の柄の有無を見逃してサンカクイをカンガレイと言っていた私に説得力はありませんが(汗)。同じタデ科ではイヌタデの筒状托葉鞘とはまったく違い、王冠のような形状をしています。

またしても余談ですが、昔アヌビアスが色々日本に入って来た頃、葉に耳のあるアヌビアス、グラキリスやギガンテアという種類があり今では信じられないような高値で取引されていました。水草水槽で葉に耳がある種類は珍しいのですが残念ながら両種は完全な湿地植物のようで水中では何をどうしようと長期維持できませんでした。水中育成可能な葉に耳のある水草と言う点ではホソバノウナギツカミ◎、サデクサ△ですのでお薦めですぞ。
本題に戻り、上で「湿地依存性が高いので」と書きましたが同じように水気のあるところでしか出てこないミゾソバはNGでしたのであてにはなりません(汗)。かえって野原のような場所にも生えるシロバナサクラタデが容易に水中化しますので種毎に傾向が異なり、その傾向は自生環境とはあまり関係が無い場合もある、ということは間違いないようです。


◆幻想的なハンゲショウの光景◆


水中化という話の流れで行けばこの種、ハンゲショウも水中化しますが、水槽でチマチマ育てるよりもこちらが本筋でしょうね。ちなみにアクアリウムプランツのサウルルス(アメリカハンゲショウ)も背の低い水草ではなくやたら立派なドクダミという感じの草です。花はドクダミと異なりハンゲショウと同じ総状花序ですが。
ハンゲショウも不思議な草でこの湿地では湿った地面や一部水面下から生えていますが、地下水位があれば乾地でも自生します。科は違えどミソハギやシロバナサクラタデと同じ傾向です。近頃はこんな草でも鉢植え園芸植物として販売されており、注意書きには「水切れに注意すれば育成容易」と書いてありました。それを販売するホームセンターですが裏手に休耕田がありハンゲショウが生えています(汗)。嬉々として買っていく方に「裏で只で採れますよ」と教えたいのですが営業妨害になってしまいますね。ちなみに同じように鉢植えにして販売しているのはミソハギは複数個所の園芸店、サクラタデ(シロバナではありませんが)は池袋西武の屋上で見たことがあります。もちろん買いませんでしたが。
こうした植物をおいそれと入手できない都会なら買うのも「有り」かと思いますが、我々変態の仲間行ってしまったカテゴリーの人間には「産地情報」や「ロカリティ」といった部分も重要ですので購入することは滅多にないですね。ムジナモやガシャモクが売っていれば産地やロカリティもへったくれもありませんので買うこともありますけど。
ハンゲショウは自宅でも一株育成していますが、この光景を見てしまうと一株二株育成しても何ら意味の無い植物であることが分かります。最低でも直径60cmの睡蓮鉢すべてに植栽する程度でないと見ごたえがありません。限られた育成環境ではどうしてもあれもこれも、となりがちで一種あたりの量は少なくなってしまいますが、本当に気に入った植物を群生させる育成も大人の楽しみ方だよな〜と思うようになりました。
私の睡蓮鉢の一つは以前記事でご紹介したようにヒメタヌキモの枯死体で水深が浅くなっていますが、ヒメタヌキモはもちろんオオアカウキクサ、ヒメハッカ、ミズユキノシタ、ヤノネグサ(長葉タイプ変種?)、アオヒメタデ、ホソバノウナギツカミなどが生えまくっています。絶滅危惧種も多いのですがそうでなくてもおいそれと手に入る種類ではないものばかりで見る人が見れば宝の山に見えると思いますが、残念ながらまったく見ごたえはありません(汗)。


◆ウンチク炸裂クサレダマ解説◆


湿地にご一緒したことがある方ならご存知でしょうが、ワタクシわりとギャグ&ウンチクが好きです(笑)。比率で言うとギャグ9:ウンチク1程度ですが、長年の法人営業で鍛えたトーク&NPOのガイダンスや講演会で培われた「分かりやすい話」には自信がございまして、オフ会などでもトークが炸裂すると感激する方が続出するわけでございます。(^^;
そんな私がクサレダマの開花期に始めて写真を撮る機会に恵まれたのが今回でしたが、他人が写真を撮っていると人間気になるようで、高齢のご婦人3名が「この黄色い花は何ですか?」と話しかけて来ました。ハハハ、かかったなババァよくぞ聞いてくれました。なにしろ今回道連れは長男だけでまさか子供相手にウンチク垂れても仕方がなく炸裂させる機会を狙っていたのです!
一通りクサレダマの名前の由来、開花期、湿地性で茨城県では数箇所でしか見られないことなどをお話し、感激して頂きました。たぶんもう忘れているでしょうけど良いんです。こういうのは私の数少ないストレスの発散にもなっていますので(汗)。

それはともかく、数少ないクサレダマの自生を見た限りでは、完全に抽水状態ではなく湿った地面、がキーワードのような気がします。似たような環境を好むミソハギやタデ科の一部は水量が増えて抽水、あるいは減って陸地となってもどちらでも生育可能ですが、本種はそうは行かないのが減ってしまった理由ではないかと思います。大は霞ヶ浦から小は農業用ため池まで護岸によって湖岸湿地が失われてしまった当地(全国的傾向か)では「常にじめじめした土地」という都合の良い地形そのものが絶滅寸前ですので。
絶滅寸前と言えばヒメハッカは逆の印象で乾地、しかも地下水位が高い(高そう)という地形にあります。簡単に言えば増水によって浅水域となる湖岸で大半は湖底の泥が固まったような地形です。これも湖岸湿地の喪失で無くなりつつある地形です。事実、現在湿地植物好きに出回っているヒメハッカは元は私がカチカチの地面から小型スコップを一本折りながら苦労して掘った株の末裔です。



今回非常に短時間でしたがササバモの陸生型やクサレダマの花を見られる幸運にも恵まれ有意義な湿地探検を行うことが出来ました。採集したい植物も多々ありましたが、採集すれば植えなければならず、また家に帰って炎天下作業となってしまいます。それを考えるとさすがに二の足を踏んで・・・結局採集は子供に網で掬わせたイチョウウキゴケ一握りだけでした。一握りとは言え家に帰って数えると70ピース近くありましたので、半数を事前通告なしにポルン女史にボムってしまいました(私の友人はある日突然水草が降ってくる災いに見舞われます)。
肝心の体調ですが、トータルでたぶん一時間も湿地にはいなかったはずながら夕刻から重い疲労感が押し寄せ、早々に休みました。翌日の日曜日は半分ダウン状態でしたのでまだ完全な回復はしていないようです。ただ、チャリでイチョウウキゴケを送りに行く途中で田んぼに芽生えていたキクモを見て、睡蓮鉢でキクモの林を作るのも悪くないな、と思った程なので意気は依然軒昂、「利助二等兵は死んでも水草を離しませんでした」。

水草馬鹿 死して屍拾う者無し




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