利助おじさんの探検絵日記

【その52】秋の遠足 水田・水路・ショップ編

chapter2 水田・水路編

◆ミズオオバコ探査◆

さて腹も膨らみ私個人のメインの目的、ミズオオバコ探査。事前情報で埼玉県側北川辺町に沼地を埋め立てた跡の残存の池や周辺水路があり、そこにオニバス等とともにある、という情報を得ており非常に期待をしていました。希望としては現在Webサイトの「顔」になっているトチカガミの花をミズオオバコの花に変更したいなと・・・どう違うんだ!?
なにしろこの植物、自生を見たのは遥か昔に一度だけ。一丁前に採集、トリートメントを行い水草水槽に導入しましたが1シーズンでロスト、今度は屋外で世代交代させながら維持、を考えていたのです。ミズオオバコは大きなガタイに似合わず一年草、ちなみにオニバスも信じられない事に一年草です。
最初に向かった沼跡の残存湖沼は公園化され、ヒシとホテイアオイが浮いた、見るからに導電率の高い水で一目であきらめました。これだけ規模の大きな湿地の一角なので、地下からの湧水も豊富だと思うのですがそれらしきスプリングリバーも見当たらず、後ろ側の水田でも見てみようと赴けば近所にもある雑草のみ。湿地帯の水田ということで湿田を期待していましたが、基盤整備された平坦な乾田が並んでおりました。


さらに余談入れます(^^;
水田や雑木林、流れる小川、懐かしい光景ですがその水田が不自然に整然としており平坦に見える場所は客土を伴う基盤整備が成されている、と考えた方が良さそうです。
経験上の話ですが基盤整備が成された水田では埋土種子が深く埋もれてしまうのか、除草剤を使用しなくても絶滅危惧種級の植物は見つかりません。乾田でも昔ながらの微妙な高低差がある畦が不規則な水田の方がミズネコノオやスズメハコベなどが見つかる可能性が高いですね。
このことは福岡のホシクサハンター現場監督氏、名古屋の変草マスターsonsi師も異口同音な感想をお持ちで、「ホシクサがありそう」という文字に出来ない感覚をあえて文字にするとそういう事なのかも知れません。


ただこうした水田でも、普段無縁な23区、京葉人口密集地帯生活を送る他のお三方にはそこそこ珍しかったようで、ヒメミソハギ、ホソバヒメミソハギ、キクモ、キカシグサ、チョウジタデなどを採集されていました。
意外と知られていませんが、ホソバヒメミソハギやヒメミソハギは水中育成が可能です。アマニア属なのでそこそこの気難しさがあるのと草姿が地味なのであまり人気は無いようですが。
このあたりは十分以上に理解しているfumirisuさん、藻草さんは放置で、アマニアであること、キクモは「アンブリア」そのものであるが実はリムノフィラ属であること、キカシグサの学名が「ロタラ・インディカ」であることなどをポルンさんにレクチャーしましたが、ポルンさんpetitがカエルを捕まえるのに忙しく田んぼ学講義はうやむやのうちに終了となりました(汗)。

ポルンさんpetitと言えば、この手のイベントに参加するのは二度目ですが意外と楽しんでいるようです。大人ばかり、しかも大半が「ちょっと変わった植物マニア」のなかで一日中飽きた様子も無く付いてくるのですからたいしたもの。私の第二子なら「疲れた腹減った暑いもう帰ろう」の大合唱。「時の探検隊」などで買収が必要な上に水があれば必ず落ちるという癖を持った困り者。(水辺の恐怖「地獄のクリスマスツリー」参照)ポルンさんpetitはきっと良いズブラーになることでしょう(汗)。

最近の傾向として諦めが早い私はこれで終了でも良かったのですが、居並ぶアクアリストの皆さんへのオマケで聖地かつビックネームであるチャームにご案内しようと群馬に向かいました。この近辺から群馬県南部のチャーム所在地、邑楽(おうら)町までは僅かな距離です。ただ記憶ではチャームの閉店時間が17時と異様に早く、急がないと営業時間に間に合わない可能性もありましたのでそれが心配でした。

(*)タイトルと画像は羊頭狗肉ですが、本文中の水田に自生するホソバヒメミソハギです。(北アメリカ原産の帰化植物)

◆僥倖◆
この細かい田舎道から邑楽に向かう幹線道路である国道354号線に出ようと悪戦苦闘している最中に、運転者のfumirisuさんが水路に浮かぶ浮葉を見つけました。
これは降りるしかないと全員で水路を調査したところ、トチカガミとヤナギモが溢れていました。ヒシやホテイアオイを除けば本日はじめての水草らしい水草です。トチカガミは私も自宅で育成しており花も何度も見ているのに(Webサイトの「顔」にも使っていますが^^;)なぜか「ガガブタ!?」と言ってしまいました。すぐに藻草さんが「トチカガミ・・」と訂正を入れてくれましたが・・。
最近血が濁っているためか、はたまた年寄りになって物忘れが酷くなっているせいか、簡単な植物名がなかなか出てこないことが多々あります。先の水田でも「アブラナ科、アブラナ科・・」と科名だけ出てきて頭を2〜3回揺すってやっとタネツケバナが出てきた程です。今のうちに水辺の植物図鑑を充実させてボケて来たら自分で読んで勉強します(爆)。

トチカガミは開花していたので問題なく同定でしたが、ヤナギモはやや葉が太いような気もしました。藻草さんも「あのヒルムシロ科が気になる」と仰って何とか引き上げようとしましたが岸から水面まで距離がありどうしたもんか、と悩んでいました。
そこにどこから探して来たのかfumirisuさんが長大な鉄のパイプを持ってきて水草をまとめて引き上げ、精査することが出来ました。センニンモだったら嬉しかった(自生、未見です)のですが、センニンモの特徴的な葉先の突起が無く、残念ながらヤナギモでした。
ポルンさんは「こんな汚いドブで育つ水草って強いんですね」と仰っていましたが、エビモやマツモはもっと汚い環境で育っていますのでそうした場所にもお連れしたいと思います。多少引いていたのか、「こんな匂う水草を持って帰りたくない」とも思っていたようで、お勧めしてもなかなか袋に入れようとしません。そこに私が「綺麗な水草も元はこういう場所で採集して洗っているんですぞ」と分かったような分からんような理屈で押し切り(無理に持って帰る必要もないわけですが^^;)、何とかお持ち帰り頂きました。


「なぜこんなところに?」という水草は多いのですが、ちょっと考えてみると浮葉のトチカガミはともかく、このヤナギモのようにどう見ても光が届かない底から立ち上がる水草は水面近くまで光合成によるエネルギーが得られないことが分かります。
この謎は随分調べましたがヒルムシロが殖芽内で酸素呼吸を行わずアルコール発酵により発芽エネルギーを得ていること、発芽後の生長も同様、つまり光合成も呼吸も行っていないことが分かりました。ウリカワなども同様の仕組みを持っているそうです。霞ヶ浦のコウホネも沈水葉は光合成をしていないという研究成果があるそうです。(「よみがえれアサザ咲く水辺」参照)ただこのヤナギモ(一応不完全な殖芽を形成しますが)が同様の仕組みを持っているのかどうかは未知です。この分野は文献や論文を見る限りまだ研究が進んでいないように見受けられます。
ポルンさんのご感想通り「水草は強い」のです。その強い水草がなぜ減少しているのか、という事もお考え頂くと更に野外観察が奥深いものになりますが・・・それは私の個人テーマですね。


さて、元々道を間違ったためにこの水路が見られたのは僥倖でしたが、まだ邑楽に向かう道が分かっていないという現実は何ら変わることなく、そんなこんなで道草食っている間にも秋の日は早傾き、チャーム訪問にはいよいよ微妙な時間となっていました。

chapter3 ショップ編(チャーム訪問編)

◆店はすでに.com◆

一日のウォーキングの疲れからまどろむ2列目3列目を尻目に(笑)、ドライバーのfumirisuさんとナビ役の私は時計と地図をにらめっこ。地図の表記と微妙に異なる複雑な交差点をクリアー、やっと以前電車で来た際に歩いた見覚えのある道に入りました。
なんとかチャームに辿りついたのはほぼ閉店時間。事前に冗談で「この状況だと見学時間は5分ですな」と言っていましたが、現実は冗談以下の時間しか残されておりませんでした!ただ正直私は多少楽観しており、以前会話させて頂いたスタッフの皆様のお人柄から、閉店時間だからと言って市役所の窓口よろしく「はい終わり」は無いだろうと思っていました。
もう一点、アクアリウムには縁が無くなった私は買物も無いのですが、現役アクアリスト諸兄3名が居るので何か買物もするだろう、つまり一方的に店側ご好意に甘えることもしなくて済むだろう、とも。

以前仕事のついでに来たときには大きな建物の方にレジがあって商品に値札も付いている所謂「ショップ」でした。当時から発送作業が忙しかったようで「勝手に見て気に入ったのがあったら声をかけて下さい、写真もOK」とほぼ放置状態でした。今回も「そんな感じかぃ?」と考えておりましたが、閉店時間寸前に店前の巨大招き猫に1cm以内で寄せるfumirisuさんのスーパー運転テクニックもしくは偶然ラッキーで滑り込むと、怪訝な顔をした若い衆が出てきました。曰く、店舗では販売もしておらず内部も非公開になった、との事でした。もちろん品揃えは天下一品ですが、客が行列するような立地ではなくネット通販の成功で全面的に切り替えてしまったようでした。
仕方ねえなということで、この若者、言葉使い、表情もよくて印象がグットだな、と別な事を考えていると妙齢のご婦人が通りかかり(今井さんの奥さん?)「せっかくお客様がお見えになったのだから・・」と若い衆にギャラリーなる場所の見学が可能かどうか問い合わせるように指示をして下さいました。
その間に「トイレ貸して下さい」作戦でポルンさん親子、藻草さんはちゃっかり内部非公開エリアの斥候を行ったり、fumirisuさんと私は入口から見えるタヌキモの種類を聞いたり、それなりに楽しんでいると「時間外ですがOKです。ただし6時まで」ということで、道順を教えて頂き、夕闇迫る邑楽町をギャラリーに向かいました。

ネット人格、という言葉がありますがチャームのネット上の応対は懇切丁寧だと聞きます。ネット上でそのように評判なのは実際の運営者が顧客を大事にする方々であるからだなぁ、と心から思いました。この日は事前確認、アポも入れずに闖入したわけで、門前払いされても文句は言えなかったと思います。手間をかけ、時間を延長してまで対応して頂いた我々は買物するわけでもなく(したくても出来ませんでしたが)直接的な店の利益に繋がらない「通行人」であったはず。厚意は厚意で返ってくる、まさに「情けは他人の為ならず」で、私もアクアリウムを再会する機会があったら通販を利用したいと思いました。

ギャラリーに到着してびっくり。ここは正直、一見どころか「百見の価値あり」でした。内部に整然と120cm水槽が並べられ、どれもこれも手をかけて維持されているのが分かる出来、レイコン命のカージナルさんが居ないのが残念だったほど。さほどの人数で維持しているようにはお見受け出来ず、一人当たりの維持本数はアクアリストの比ではありますまい。それでこのクオリティは「プロの仕事はかくあるべし」を地で行く素晴らしさです。ポルンさんの口からは「どこかの水族館に見習って欲しいほど」という言葉が出たほど。
維持本数が少ないアマチュアは少ない水槽にあれもこれもと水草を詰め込み何とかレイアウトしようとあがきますが(私もそうでした)そんな芸当はオランダ人しか出来ず、こうした心の余裕を感じるインテリアの域に達した方法論もあるのだなぁと今更ながら感心させられました。
fumirisuさんは入口近くの3mほどの巨大水槽に見入られており、EHEIMの緑色の給水パイプが7〜8本並んでいるのに驚かれていました。アクアリウムを離れるかなり前から新着水草のチェックもしていなかった私は小さく硬いネジレモ風の水草が気になってfumirisuさんにお伺いしたところエキノだと教えて頂き浦島太郎気分を満喫いたしました。

浦島太郎と言えば海水も見事で、カクレクマノミが千匹は居ると思われる水槽では水槽に手をかざすと餌の時間だと思うのか押し合いへしあい寄って来るのが楽しく、ポルンさん親子はそこに釘付けでした。画像は私が気に入った120cm水槽の一つですが、こういうシンプルで渋いのあり、センターに有茎を密集させたスタイルあり、リシアだけを沈めたスタイルあり、なかにはエキノを超える巨大なクリプトを配したものもあり、fumirisuさんと私は度肝を抜かれました。
店内撮影は管理者の方に許可を頂いて行いましたが、許可を頂きカメラバックからカメラを取り出し入口近くに戻ると早くも藻草さんが撮影を行っており、先のトイレ偵察と言い「意外にちゃっかりした奴」と思いました(笑)。(藻草さんは別途撮影の許可を頂いていた、と水辺伝言板の方でご連絡がありました。失礼いたしました^^;)
こうして遠足の最後にとてもよい見学が出来ましたが、時間が過ぎていたにも関わらず快く迎えてくれ、素晴らしい驚きを見せて下さったチャームのスタッフの方々、本当にありがとうございました。

Epilogue

鹿浜橋でポルンさん親子と別れ、逆方向にも関わらずfumirisuさんに送って頂いた田端から短時間でしたが藻草さんと2人になり「今回は何も採集されなかったんですか?」と聞かれましたが、ここで初めて何も採集していない事実に気が付きました。見られた植物が私にとって身近な種だけだった、という事もありますが、写真が撮れればそれでOKという嗜好に変わってきたのかも知れません。それも然り、採集・育成も然り、知らなかった世界で新鮮な知識を得るのも然り、様々な立場で楽しめるのが自然環境なのだと改めて感じた遠足でした。
大変調@2007年度版から3ヶ月、一日野外を歩くと伝えた際の嫁さんの反応は微妙で「またやると収入が減って医療費がかかるんだよなぁ」もしくは「決着付けて保険金が入った方が良いかな」といった顔をしていましたが、帰りの「羽生」PAで買ったお土産「那須高原」チーズケーキが効を奏したのか上機嫌でした。
同行の皆様にもご心配をおかけしましたが、徐々に体力が戻りつつある事も感じますのでまたツアーに参加させて頂きたいと思います。

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Vol.51&52 栃木県下都賀郡藤岡町、埼玉県北埼玉郡北川辺町、群馬県邑楽郡邑楽町 2007.9.29(Sat)
photo Canon EOS 30D,40D/Canon EF-S10-22mmF3.5-4.5 USM/SIGMA 17-70mmF2.8-4.5 MACRO

Cast:fumirisuさん、藻草さん、ポルンさん親子、利助(photo&text)



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