利助おじさんの探検絵日記

【その9】春の利根川小遠足

chapter1 本格シーズン待ち切れず

◆かねて目を付けた小河川◆

地球温暖化という言葉が空虚に聞こえるほどの厳冬が終わり(厳しい冬もまた温暖化の一面であるようですが)、様々な野草が開花を始めるとフィールドワークへの欲求が抑えられなくなります。ブログの写真は大半が家の周囲のものですが、散歩範囲に四季折々自然の風物があるとは言え、やはり近距離だけでは飽きてしまいます。
諸般の情勢で長時間の遠出は無理ですが、幸いな事に近所に自然を味わえる野遊びの場所が多数あります。昨年初冬に偶然通りかかった利根川に流入する小河川に、当日の小春日和に誘われてかメダカの大群がいるのを目撃しました。長男にこの事を話したところ魚獲りが大好きな彼はすぐに行きたい、と希望しましたが長女の受験準備やら何やらで果たせず、そうこうしているうちに本格的な冬に突入し再訪は果たせませんでした。
気温が上昇した3月の休日、ふとこの場所を思い出して長男に「行くか」と尋ねてみると、夢中になっていたDSのゲームを放り出して網とバケツを用意しました。毎年水田に水が入る5月から稲の刈り取りが始まる8月末までがメダカ獲りの季節です。例年に比べればかなり早い出撃ですが「野遊びシーズンの開幕」は心躍るものがありますね。

さて現場に到着してみると案に相違し水がほぼ枯れていました。この小河川は農業用水の排水路と下水道未整備地域の生活排水路を兼ねているものなので、水田からの水の供給が無いこの時期にはたまり水以外は枯れてしまうようです。家庭排水が主なのでけっして水質が良いとは言えない水が所々溜まっており、春の小川の歌とはかなり異なる様相です。しかし岸にはレンゲやスミレは無いながらシロイヌナズナや菜の花が咲き、春の香りが漂っています。
当然なのかも知れませんが自分の子供の頃の小川とは生物相が違いますね。特に沈水植物は市内では壊滅状態なので水草の間を煌きながら泳ぐ小魚、という光景を見ることが、見せることが出来ないのが残念です。私がその光景をいまだに覚えている、そして少なからず現在の趣味嗜好に影響を受けているということは、将来、今こうしてこの光景を見ている長男の自然に対する「原風景」になるはず。それでも都会育ちでこういう経験も無い子供に比べれば幸せなのでしょうけど。

肝心のメダカですが、大きな群れは見られないながら水が溜まった場所に数匹単位で生き残っている姿が見られました。

◆網を入れる◆
さっそく網を入れてみると丸々と太ったメダカが一匹入りました。同時にお馴染みのアメリカザリガニ、大型のオタマジャクシ(大きさからウシガエルでしょう)、ヤゴ、カエル(泥にまみれて種類不明)なども入ってきました。ザリガニはともかく、こんな水質が悪い場所にこれだけの種類の生き物が残っていたのです。感動よりも野生の生物が生き残るのは大変な時代だとつくづく感じます。地元のことながら「水と緑の街」を標榜するわりには湧水群と清流を維持する国立市などに比べると「まったく努力をしていない」と言われても仕方がありません。メダカを獲るのに使った網がヘドロ臭くて水道でよく洗わないと車に積めない、という事実がこの小河川の水質を如実に物語っています。
この時期、メダカやザリガニが繁殖する水田には水が一滴もありませんが、水が流れ出す5月にはここから水田や用水路に遡上するのでしょう。流れ込む水は地下水や小貝川からの取水ですが、水質や水温は一夜にして激変します。経験上、熱帯魚の常識である「水合わせ」がメダカにはほぼ不要ですが、小さくひ弱な外見からは想像もできない驚くべき生命力を持っている魚です。
盛期ほどの密度は見られませんが、ここで一匹、あそこで二匹と、ほぼ必要分の10数匹をキープしたので30分程でメダカ獲りは切り上げました。「必要分」とは、昨年庭の池を拡張したので今いる数ではボウフラに対抗できない、と思われたからです。睡蓮鉢や池があるとどうしても蚊の興味を惹いてしまうようで、放置すれば庭が蚊だらけになってしまうのです。必要分以外は初夏に複雑に入り組んだ水路や暗渠を通り水田地帯の水路に現れることでしょう。絶滅危惧種だろうが何だろうが獲れるものは獲ってしまう品の無さ全開ですが、必要分以外は獲りません。一応の「自然と付き合う」上での自らへの戒めです。

数年前には見られなかったメダカが帰ってきたのは除草剤や殺虫剤の使用量激減の時期に一致しますが因果関係は分かりません。ただ、子供が小さな生き物と触れ合える環境が出来たのは非常にありがたいことで、大人なら春の野で野草を見るだけで満足できる暖かい日も、「和む」感覚の無い子供はモチベーションが無いと屋外に出て野遊びをしません。メダカや小鮒はその「モチベーション」で、一日中家でゲームをしているよりは肉体的にも精神的にも健康的であることは間違いないでしょう。
頭脳の健康は塾や学校の仕事だと思いますが、精神の健康は親の義務ですしね・・という事を「錦の御旗」にしている父親兼遊び仲間も困り者ですが(^^ゞ


chapter2 春の花

◆菜の花◆

菜の花は人為的に植栽しないと「菜の花畑」にはならないようで、利根川沿いには野生化したものがポツポツと開花しています。一括して「菜の花」と言ってしまうと語弊があるようで、ナタネ=アブラナ(Brassica campestris)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、切花用として改良品種されたナノハナ(学名はナタネと同一?)など、何種類かあるようです。(画像のものが何なのか残念ながら分かりません)
数が集まると強烈な香りですが、数本がまばらにシロイヌナズナのなかにあると風向きによってほのかに漂う香気が春らしくて良い感じです。こんな野で昼寝でもしたら気持ち良いだろうなぁと考えていたら先客が居ました。犬の散歩の途中らしく、二匹の犬が周りをウロウロ。とても絵になる構図でしたが寝ている最中に写真を撮られどこかに晒されるというのも気分的に嫌だろうということで写真は撮りませんでした。最近はスナップに写った通行人の肖像権、なんて問題もあってやっかいですが私は基本的に自然相手なのでこの辺はあえて撮ることもなかろう、ってことで。
周りのシロイヌナズナの他にもホトケノザ、セイヨウタンポポ、オオイヌノフグリ、色とりどりの春ですがミツバチは菜の花に多く集まっています。菜の花のハチミツも味わってみたい気もしますが・・強烈でしょうね(汗)。
菜の花そのものはたいへん美味で、ここでは摘む人もいないまま惜しくも朽ちて行きますが、おひたしや炊き込みご飯など絶品だと思います。好きなのは私だけなのでついぞ家で食した記憶はありません。妻がよく作る料理に卵そぼろ、鶏そぼろ、鮭フレークを配した「三色丼」があり子供達が大好きですが、この組み合わせから鮭フレークを除いた「菜の花弁当」というものが千葉駅にあります。千葉に電車で行く機会はほとんどありませんが、以前仕事の出張などで行った際にはよく買って食べていました。ネーミングもさることながら500円でお釣が来る(当時)価格帯が魅力でした。最近出張で名古屋、大阪方面に行くことがありますが、新幹線ホームでは「何が食べたいか」ではなく「何が安いか」という選択を行っている自分に気が付きます。悲しいですね。

菜の花繋がりでさらに大きく脱線しますが、司馬遼太郎「菜の花の沖」は作品群のなかでは評価が低く、壮大な合戦シーンも歴史の転換点の政治家の活躍も出てこない地味な作品です。ただ私はこちらの方が好きで共感できる部分が少なくありません。ちなみに氏の命日は「関が原忌」でも「峠忌」でもなく「菜の花忌」です。

◆仏の座に乗ったリス◆

昨年9月に長年飼っていたシマリスを惜しくも亡くしましたが、ホトケノザに乗っていました。輪廻転生を信じるとすれば飼っていた7年半の間に大きな喜びと安らぎを貰っているので「善行」の方が多いでしょう。何でも良いのですが幸せなものに生まれ変わって欲しいものです。
「ホトケノザ」は春の七草のメンバーですが、姿形がいかにも不味そうです。いったいこんなもんを誰が食うのかと思っていたところ、七草の「ホトケノザ」はコオニタビラコというキク科の別種だそうです。(現ホトケノザはシソ科)キク科なので独特の香りや臭みがあると思いますが、見るからに青臭そうな本家ホトケノザよりはマシかも知れませんね。春菊は大好物ですし。

さて春の七草、食用として知られるセリ(セリ科)、スズナ(=カブ、アブラナ科)、スズシロ(=大根、アブラナ科)は日常的に食べていますが、ナズナは昔の子供の遊び道具、ゴギョウ(ハハコグサ、キク科)やホトケノザ(コオニタビラコ、キク科)は雑草、ハコベラ(ハコベ、ナデシコ科)は昔ウサギを飼っていた際に餌としてよく摘んできたな〜という程度の「野草」です。
「なにもこんなものを」とも思いますが、原油や小麦の価格上昇による全面物価高と増税のダブルパンチで瀕死寸前の我が家の家計ではそろそろ自給自足の道も一定比率は確保しなきゃならんかな、と考え始めています。政府の無策も結構、値上げも結構、ならば買わんというレジスタンスも元祖へそ曲りキャラには必要なわけで。(気分的に、ね)0円生活はとても無理でも80%か90%の出費に抑えるやりくりは消費生活上の工夫だけでは限界もあります。自ら採集する、栽培するという要素がどうしても必要になります。その辺の「感覚」は園芸や水草の栽培で人並み以上に持ち合わせておりますし。
とりあえず心の潤いたる花壇の草花は苗のポット買いをやめ、今年から実生を始めました。子供と遊ぶにも金を使えば良いというものでもなく、自然と無料で戯れることが可能。その前にレンズやカメラへの投資を止めろ、という声も聞こえてきそうですが(笑)。


Vol.9 茨城県取手市 2008.3.23(Sun)
photo Canon EOS KissDigital N/Canon EF-28-135mmF3.5-5.6IS USM



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