Carl Zeiss Jena Flektogon 4/20

◇Profile◇
希少怪獣Flektogonの目

Carl Zeiss Jenaの超広角レンズである。ツァイスの広角は現行品(COSINA、日本製)と少し前のCONTAX(京セラ、日本製/ドイツ製)でDistagonシリーズがあるが、Distagonの系譜は西ドイツZeissなので東ドイツZeissのJenaには無い。Jenaはベリリンの壁崩壊以前に経営悪化で崩壊状態だったようであるが、現在では跡形もない。要するに「消滅した」名称である。

Zeissのレンズ名称は焦点距離に拠らずレンズ構成で付与している。(ライカはレンズF値、ズミクロン以降)その名称が怪獣の名前っぽい、というのも有名な話でディスタゴンもフレクトゴンもそれなりに聞こえるが、他にビオゴン(Biogon)やホロゴン(Hologon)というレンズもある。どうでも良い話であるが、何となくカネゴン的ユーモラスで愛着がわくような気がする。
さらにどうでも良い話であるが、愛用しているドイツの工業製品で名前が気に入っているのはモンブラン(MONTBLANC)のマイスターシュティック149(万年筆)である。マイスターのシュティック、なのである。もちろん今時万年筆を使う人は少ないし、使っても悪筆は変わらずなので文字は「マイスター」ではない。ドイツ人の合理性と堅牢志向が遺憾なく発揮された工業製品が好きなのである。そしてそれはドイツ語で呼ばれなければならない。ミリタリープラモ好きの方が「タイガー戦車」を「ティーゲル戦車」と発音する気持ちは非常に良く分かる。

現行品の各社20mmに比べると「結構設計で苦労しました」的なテイストが感じられる。前玉が異様にでかい。(フィルター径77mm)そのわりに後玉は10mmほど、横から見ると独楽のような形である。ベルボトム、漏斗、ラッパである。いかにも「昔の広角レンズ」という雰囲気で好ましい。
私が所有しているFlektogonは鏡筒の雰囲気、絞りやヘリコイドに刻印された文字の印象が、所有するPancolar50、Sonnar135とほぼ同じなので製造年代は似たようなものなのだろう。別記事のjena Tessarは「ゼブラ」なのでやや古い。ここまで来るとどっちにしても「古い」のであまり関係ないが。
Flektogonは35mmF2.4というレンズに銘玉の評価が定着しており価格も人気に比例して高いが店頭で目にする機会もある。20mmは元々流通量が少なくあまりお目にかかる機会もない。これは中古カメラ店としては知られていない都内のDPE主力の店で相場よりかなり安い値付がされていたものを、さらに「お願いしますぅ」と得意技を駆使して買わせて頂いたものである。寄れる、ということで作例は寄って撮る愚か者であるが、広角レンズの本来の使用方法に反することは言うまでもない。



Carl Zeiss Jena Flektogon 4/20
焦点距離 20mm
開放F値 1:4
レンズ構成 6群10枚
最短撮影距離 16cm

印象としては市場ではほぼ払拭しているイメージで、ツァイスの中古専門店にも状態があまり良くないものが1〜2本あるだけ。そしてM42のJenaとしては意外に高価な部類のレンズである。
これから探そう、と思われる方には人気の中古専門店ではなく、昔ながらの、世間に知られていない店を周ることをお勧めする。このレンズはまさにそうした探査の成果で、状態を考えれば「奇跡の一発」。

◇Impression◇
【作例→】
Camera EOS40D F11,1/125,ISO100,WB Auto

寄れる、と「寄る」のは違う 寄って絞っても専門用途のマクロレンズとは比較にならない。さらにクラシックレンズ特有の「描写の緩さ」があるので世間で言われるような広角マクロではない。
「描写の緩さ」はアホのように植物のマクロ写真ばかり撮っていると逆に新鮮で、こういうのもモノクロにして紙に焼けば「ライカ風」になるかな、と思ってみたり。私の周辺にもデジカメユーザーでありながら緩いレンズを好んで使う方が多いので、デジタル対応の「クッキリ、スッキリ」が必ずしもすべての写真愛好家に好まれているわけではないと思う。
出典は忘れたが「日本は水蒸気の国」だそうで、湿度の高い風景はコントラストとシャープネスが低い写真の世界なのである。サントリーニ島やカッパドキアのような何km先も見通せるような風景を撮りたければそこに行けば良いし、海も空も溢れる光量でギラギラに輝く写真は沖縄でも小笠原でも撮れる。
これまた出典は忘れたが「カメラは嘘つき」で、これも奥深い言葉である。この梅の周辺は犬を散歩させる方が多く落し物に注意が必要である上に、角度によっては隣接する大きなビール工場が写ってしまう。写真だけで語れば「山間の雰囲気の良い梅林」とすることも出来る。
どんな場所でもシチュエーションを切り取れるし、本来肉眼で見ている世界とは似て非なるものが写真の世界。50mmF1.0でも視野角が違うし、視神経や脳と画像解像エンジンが同性能ではないだろう。

何が言いたいのかのというと、描写性能と呼ぶものは単に日本人が好むと言われるコントラストが高く細部まで描写された、作られた画像を生産するための機能ではないか、ということである。一方水蒸気の国をそのまま再現する写真を好む層も確実に居るはずなので、この手のレンズは貴重だということである。これを作ったのが旧共産圏のドイツ人というのも皮肉な話ではあるが。

一応言訳というか状況説明をしておくと、この梅は我が家周辺にある不思議な花色の梅である。実際に紅梅とも白梅とも付かない桃梅でこのような色である。EOS40DやFlektogon、もしくは私の腕が悪くて白梅に被ったわけでも紅梅から抜けたわけでもない。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送