Fear of waterside
【第十九夜】拭われた尻 Contents

◆ノーマーク危険物
◆けっこう血だらけ猫灰だらけ
◆教訓

◆ノーマーク危険物


久々のメインテーマ水辺の恐怖、危険物です。これまでテーマとして来たスズメバチや毒蛇、チスイビルなども嫌な敵ですが、こいつは「知らないうちに」被害を蒙ってしまうという強敵です。しかも水生でもないのに好んで水辺にいることが多いという厄介さ、繁殖力が強く迂回できない危険地帯を広範に形成してしまう鬱陶しさも兼ね備えています。そいつの名は「イシミカワ」。
写真がダメダメですが、茎や葉柄にヘビメタ野郎の如く生やした「棘」がお分かりでしょうか。たかが草、棘と言っても大したことはあるまい、こう考えるのは間違いです。うっかり触ってしまうと意外な程深い傷になるのです。フィールドに持って行くファーストエイドの出番が多いのはこいつにやられた時なのです。

実は私、庭付の家を購入して以来の薔薇マニアなのですが、よくメンテナンスするわりには薔薇の棘の被害はさほどではありません。それは薔薇の棘は「棘!」という存在感があって目立つ上に疎らなので注意すれば怪我をしないからです。ところがコヤツ、目立たないくせに強固、隙間無くビッシリの棘なので負傷確率が高いのです。
池の岸辺斜面を降りて行く際に、なにか掴まるものがないか、と見渡せば決ってこいつがあるのです。いつもは存在を忘れていますのでうっかり握り締めることも度々・・・かくして私の手は傷だらけ、血だらけになります。おそらく一生消えることがないと思われる傷もあります。
山野で草を探して歩く際に気を付けたいのはこいつの「乾燥地版」、同科のママコノシリヌグイ(下画像)です。継子が不始末をしでかしても尻拭いをしてくれる、なんて優しい養父母なんだ、と思うのは間違い、言葉通りこの棘だらけの草で尻を拭う意なんだそうです。これは恐いです。握っただけで血だらけになるような草で尻を拭われたら・・・


◆けっこう血だらけ猫灰だらけ


人間を長年やっていますと痛覚が鈍るようで、チスイビルを食事付のまま我が家に招待してしまったり、こいつ(おそらく)にやられても気が付かないままだったりします。
ある時自転車で湿地探索をし、帰宅してからサドルに血が付いているのを発見しました。まさか自分が怪我しているとは思いませんので、嫁さんに、

「チャリの上で猫でも喧嘩したか?」


と聞きましたところ知らないと言います。ところが私が背を向けた瞬間騒ぎ出しました。なんと!

ズボンの尻が裂けて血がべったり


だと言うのです。自分で見てみると夏のこともあり薄手の生地のズボンでしたが、かぎ裂き状に裂け、ボクサーパンツを貫通して立派に尻が拭われておりました。
どうも尻というのは痛覚が一際鈍いようで、本人はまったく気が付きませんでした。思い出してみると水辺に近づくために小規模な藪漕ぎをしましたが、イシミカワ、ママコノシリヌグイまたはノイバラなどの存在も認識しておりませんでした。不幸中の幸いと言うべきか「黄門様」は外れていましたが、命中していれば気が付きますね(^^;
その後しばらくの間は電車で席が空いていても坐りにくく、オフィスの椅子でもライダーがヘアピンを攻めるような坐り方を強いられました(汗)。他人から見れば痔でも悪化したと思われそうですが残念ながら痔ではなくドーナッツ座布団も効果なし。尻を負傷した、なぜ?というやりとりも説明するのが面倒な厄介な状況。恐るべきタデ科。


【教訓】

継子ではなくても尻は拭われる


【遷移の産物】
本文のタデ科両種の自生は陸上が中心ですが、水辺でもOKで意外なことに放棄水田が遷移する過程で入り込みます。甚だしき例では放棄水田際の立木にイシミカワが絡みつき4〜5mはあろうかと思われる樹冠まで覆い尽くしている姿を見たことがあります。
乾地荒地で目立つのはオナモミ(外来種か?)です。人為的な環境が遷移する過程では本来その地で見られない植物が見られたり大繁殖したりするわけですが、堤防工事の後に河原を埋め尽くすオナモミを見ていると工事のために搬入した土砂に種子が混入した可能性を覗わせます。だからどうだという教条的な話をするつもりはありませんが、土木工事の土砂確保が難しく「どこから運んで来たか分からない」土砂が環境に与えている影響も大きいですね。

個人の庭なんてのはまさに好例で、意識して植え付ける園芸種以外に無意識的に移入してしまう未知の雑草があります。そいつらは目に見えない種子の形で買ってくるパンジーやノースポールの鉢土に潜んでいます。
これも凄い話で、庭で目を覚ました未知の雑草は知らない間に結実し周辺部に拡がります。自分の庭では駆除したはずの雑草が翌シーズンに周辺部からまた帰ってくる、悪夢のキャッチボールが行なわれていたりします。ここまで園芸が一般的になってしまうと「これはいかん」と言うことも声を大にして言えませんし、そもそも自分も加害者なので発言権も無いわけですが・・・
園芸草花は今のところ「花が綺麗だ」以外になんら基準も無くて自生種移入種改良種入り乱れて無制限に販売されているカオスの世界で、生産地でポットに詰められる土も何も気にされておらず、日本全国津々浦々「怪しい種子」が運ばれている現状です。以前carex校長の談話に「同じ靴の話」がありましたが、それこそ同じ靴は礼文・利尻にも父島・母島にも、さらには外国にも日々行っているわけで何が正しいのかワケワカラン春の宵。
とりあえず出来る事は邪魔な草を引き抜き「可燃ゴミ袋」に詰め込む作業。かくてツルニチニチソウ、カラスビシャク、スギナ、強敵3人集を相手に終わり無き戦いを強いられる日々でございます。今年は身体が弱っているのでお手柔らかに・・・これは通用せず、人間の都合でやって来た植物ではありますが人間の都合には合わせてくれないようです。



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