Carl Zeiss Jena Sonnar MC 3.5/135

◇Profile◇
貼り合わせの「妙」から脱却

焦点距離に制限が少なく望遠レンズも比較的コンパクトに作れるSonnar(ゾナー)は戦前にツァイスのルードビッヒ・ベルテレが設計したタイプである。当時は当然ながら一眼レフは存在せず、元々はレンジファインダー用である。
オリジナルの設計はレンズの貼りあわせを多用し収差を軽減するタイプであるが、界面反射(空気とガラスの界面で余計な反射をする)が軽減できる画期的な設計だったらしい。現在では反射防止膜を塗っておしまい。技術の進歩ですな。それはともかく、貼りあわせ多用タイプが続いていたら40年前のレンズをこうして楽しむことは困難であったろう。
レンズの接着には白濁したり日光で焼けたりする接着剤は使用できないが、当時から、ほぼ無色透明性を長期間保てる画期的な天然接着剤が用いられた。これはカナダバルサムと呼ばれるバルサムモミという木の樹脂である。中古レンズリストを見ていると時々「バルサム切れ」という表現があるが、これはレンズを貼りあわせたバルサムが経年変化して性能を発揮できなくなったものである。こうなったレンズを見ると乱反射した光のスペクトルが七色に見える。なかなか美しいが写真に影響が出る場合が多く実用に耐えなくなってしまうのである。
やたらバルサムの貼り合わせだらけでは経年変化の確率が高く、使えないポンコツだらけになってしまうだろう。好例としてキヤノンのEFレンズは比較的年齢が若いズームでも小さなバルサム切れがあるものが多い。ズームであるが故に鬼のようにレンズ枚数を使って貼り合わせているためであろう。(12群16枚なんてのも・・)

ズームはともかく単焦点レンズの設計がシンプルなものに変わったのは一眼レフの登場が契機で、ミラーボックスのためにバックフォーカスが問題となったためである。このレンズは3群4枚と、テッサーと同じシンプルなレンズ構成であるが、中玉の一つに巨大なガラスの塊が入っている。従って見かけ以上に重い。金属製の鏡筒と相まって、小さいながらいかにも「望遠レンズを使っている」という重量感がある。

オリジナルの設計から70年以上、自分の所有する135mmは製造から約40年、最新鋭のデジタルカメラに装着しても写真に強い個性が反映される稀有なレンズであると思う。現在入手可能な各社マウントとも意外に安価で楽しめる。



Carl Zeiss Jena Sonnar MC 3.5/135
焦点距離 135mm
開放F値 1:3.5
レンズ構成 3群4枚
最短撮影距離 100cm

◇Impression◇

【作例→】
Camera EOS30DF5.6,1/250,ISO100,WB Auto

なにしろ色が乗る。ツァイスのレンズは「油絵のような写真」「ファインダーで見た時点で色のりが分かる」と称されるレンズもあるが、このSonnarはその乗りに近い。
この写真も晴天の早朝、F5.6までしか絞っていないが暗部のこの色のりである。半逆光であるがシャドーに諧調を残しつつそれぞれの色が主張されている。(写真の腕の話じゃないよ^^;)
より顕著に色のりが出ているのはNatureMuseumPage1の「秋晴」である。実際に肉眼で見てこう見えるか、というと微妙であるが空はあくまで青く、赤トンボはあくまで赤く、ぼってりと色が載っている。ちなみにレタッチは入れずPLも使用していない。
こういうのを体験するとデジカメと言えどもレンズの存在は大きいと思う。撮りたい雰囲気にあわせてレンズ交換できるのが一眼レフの醍醐味、そう思った瞬間からいわゆる「レンズ沼」にズブズブしているわけであるが。

望遠ということもあり解像感は今一つであるが、素人が撮るには必要にして十分である。まったく不満はない。さすがに現行品でも生き残っているレンズである。(SONY Carl Zeiss Vario-Sonnar/Sonnar)生き残ってはいるが現行品は例外的に非常に高価である。Sonnarというレンズの性格を考えると少し疑問である。今のユーザーはSonnarもPlanarもなくて焦点距離とCarl Zeissというブランドだけが問題なのかも知れないが。
と、偉そうにブータレても私は原則1万円台、一部例外を除き2万円台までしか出さないチープなユーザーである。α700とレンズはこれとこれとこれ、と超大人買いし、見たことも無いカードで支払う謎の若い成金野郎が妬ましく憎らしくて言っているのである。このような場合には古来からカメラ好きの間でよく用いられる呪文が二つあるのだ。

金をかけても良い写真が撮れるわけではない
使われるカメラが可哀想だ


残念ながらカメラやレンズに感情はないし、逆もまた真なり、金をある程度かけなければ良い写真は撮れない。これは自分でネガティブに証明しておるな(爆)まっ、貧乏犬の遠吠えだが吠える以外に仕方ないんよ。「いつか見ていろ」という権利があるのは若いうちだけだしな。


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