水辺植物育成入門第二部 基礎知識編 |
ネイチャービオトープを楽しむための「容器」は種々様々で、睡蓮鉢一つとっても大きさや材質、形状で数限りない種類があります。睡蓮鉢以外にも池やプランターや、それこそ「水を溜めることが出来る」ものであればほとんどが利用可能です。基礎知識としてそれぞれの一長一短について纏めてみました。これから始めようとされる方はそれぞれの特性と自分が用意できる環境(ベランダなのか庭なのか、恒久的に置けるのか一時的なのか、など)を考えて選んで下さい。 実はベランダでも「絶対に池が良い」と思えば可能でして、池を掘る「土台」を先に作れば良いのです。レンガで囲った盛り土を作ってそこに池を掘る、とか。要は工夫次第でどのようにでも楽しめますので固定観念に囚われず自由に発想するのが楽しむコツです。私が知っている方は大きなタライで毎年ミズオオバコを開花させていたりしますので見かけを気にしなければ楽しむ方法は無限にあるということです。 それと、自分が継続して楽しめるかどうかという点は趣味全般の傾向として「やってみなければ分からない」という事が言えると思います。最初はプランター程度で廉価に始めて、面白く継続できそうだと感じたら高価な睡蓮鉢を買ったり池を造ったり、グレードアップすれば良いと思います。
ついでに睡蓮鉢ですが、「睡蓮鉢」として販売しているものにも曲者がおります。うっかり「インヴォイス」を信用してしまうと物によってはとんでもない苦労を強いられるものもあります。 私が一番苦労させられたのは「素焼きの睡蓮鉢」で、見た目はシックで「びゅーてぃふる」、価格も「らぶりー」な優れもので早速2つほど購入しましたが、なにしろ水が減る、減る!夏場は一日に3cmほど水位が下がり1週間も放置しようものなら母なる大地に帰ってしまうほどの勢いでした。これは「毎日足し水をする」とか「雨乞い」が趣味の方以外にはお奨めできません。
睡蓮鉢でやるなら陶器製>プラ製で他の選択肢は事実上無い、と言ったところでしょうか。プラ製でもZEN睡蓮鉢(アイリスオーヤマ)などデザインも機能も優れて数百円、なんてのもありますので入門用としては良いと思います。 さて、実は2007年の春、ひょんなことからセメントを流した本格的な池を造ることになりました。ご参考までにちょっとした作成記を上げさせて頂きます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
実はワタクシ、かねがね池が欲しいと考えており、一応端から端まで徒歩で5秒もかかる広大な庭園がありますので、東京ドーム3個分の想像力と約半畳分の用地確保はいつでも出来ます。 確保できないのは嫁さんのアグリー(agreement)で、下手に話を持って行こうものならアングリー(angry)となってしまいます。以前某所掲示板でベテラン妻帯者の皆さんと「配偶者とアクアリウムの二律背反性」について高尚な議論を楽しんだことがありますが(簡単に言うと「嫁さんがどれだけ恐いか」ってこと^^;)嫁さんが反対すればプラケ一つ置けない事情は皆さん同じようで、庭も家も名義は俺だ、文句あるか、という星一徹的姿勢は現代では通用いたしません。 言わば「君臨すれども統治せず」という立憲君主制、もしくは「家の主人が〜」と口では言うくせに三権を抑えている主客転倒が我が国の家庭の平均像といったところでしょうか。君主なのに時間も資金も決定権も無い状況の下、庭に穴一つ掘るだけで大変な努力を強いられるわけでございます。 ところがひょんな事に長男が「池が欲しい→お父さん手伝って」というストーリーであっさり許可が降りてしまったのです。 設計図と仕上げは私担当で、こんな感じでここ掘れわんわん、と長男に設計図を手渡しました。4年生ながら泥遊びの大好きな彼は親公認の泥遊び、ということでニンテンドーDSを忘れ狂ったように堀まくりました。すると驚いたことに ここでこの設計図のコンセプトを非専門的(^^;に解説しておきます。(意外と重要ですぞ) Aは庭に降る雨水の流入を阻止するバリアです。これはナメクジを天敵とする嫁さんがシーズン毎に用法・用量を無視してばら撒くナメトール(注1)や隣家の婆さんが勝手に庭に撒いて行く農薬(注2)などを含んだ水を防ぐためです。 Bは浅瀬で、抽水植物を植えたりタヌキモの分際で土が必要なヒメタヌキモなどを育てるエリアです。湖岸湿地による浄化理論というものがありますが、そこまで大規模ではなくても浅瀬があるビオトープは水が綺麗です。もしかすると住み着く微生物の種類が違うのかも知れませんね。まあ加持祈祷範疇ですが一応そういう期待も込めて。Cは沈水植物エリアですが、沈水植物の林を縫うメダカやクチボソの群れは醍醐味ということで。 当初はここに防水シートを敷いて簡易ビオトープにしようと考えていましたが、思わぬところで嫁さんからクレームが入りました。 たしかに防水シートはそもそもの目的が違いますので、少しでも見えていると建築資材置場風またはトラックの荷台風ビオトープという趣になってしまいます。気は進みませんでしたがレンガとセメントでそれなりの池を造る事になりました。 こんな感じで作っています。レンガはバーベキューエリアとして庭に敷き詰めていたのを引っぺがし廃物利用、セメントはHCで2000円分程、格安のビオトープ池です。 しかし、セメントを使うメリットはたしかにありますが、デメリットも大きくて水を張った状態で2〜3ヶ月放置しないとアクが抜けないようです。アクが抜けないと水草は枯れメダカはイチコロなので仕方がありません。従ってこの記事を書いている今(2007年7月)は生体はまったく入れず、単なる水溜りとなっております。 ズブラー&ビオトーパーの元祖、大滝末男先生(注3)の「水草の観察と研究」によれば、藁にはアク抜き効果があり、入れるとアクが早く抜けるそうなので様子を見て抜けないようなら入れてみようと思います。この本は愛読書の一つで、特に採集と育成については他に類を見ない情報量ですのでご興味のある方はぜひご一読下さい。 順調に行けば遅くても秋頃には土を入れ植物を植えられるでしょう。飽きたら全部土を入れて花壇にも使えますしね。動き出しましたらまたどこかでご報告させて頂きます。
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水槽での「底床」にあたる用土ですが、水質に影響を与えたり化学物質が混入していない土であれば何でも良いと思います。ただそうは言っても園芸用品売場に並ぶ様々な用土のなかには相応しくないものもあります。基本を抑えれば単用でも組み合わせでも問題はありません。(本稿は大半が当サイト「育成メモ」の記事からの転載です。当チャプターに関する詳細は当該記事をご参照下さい) 睡蓮鉢で植物を育生していると初年度は元気に成長しても翌年以降調子が悪くなったり枯死してしまう場合があります。これは睡蓮鉢の用土に含まれる多量・中量・微量成分を使い切ってしまったことによる連作障害と考えられます。園芸や農業で言う「いや地」です。 対策としては当然追肥を行う事になりますが、この「追肥」というのがまた難しく、一歩間違えると水からドブのような香りが漂ってきたり植物が肥料負けを起こしたり、環境が崩壊してしまいます。それ以前に元の用土の選択を誤れば最初から失敗してしまいます。 屋外育生に於いて非常に重要なファクターである用土の選択と肥料の使い方についてまとめてみました。
極論を言えば荒木田土の単用でも十分で、川砂を混ぜ込むと通気性が良くなり植物の根の生長が良くなる、という説もあります。私もその組み合わせの睡蓮鉢を持っていますが特に他の鉢との差異は認められません。 別なテーマとなってしまいますが、水生植物の多くは嫌気耐性を持っており、ヒルムシロにいたっては嫌気どころか酸素呼吸を行なわずアルコール発酵によって発芽直後の生長エネルギーを得ている程なので、嫌気状態での異臭や腐敗が問題となる水槽とは切り離して考えた方が良いと思います。 「何でも良い」用土ですが向かない用土もあり、種類と理由は以下の通りです。
簡単なようで難しい肥料の種類と使い方ですが、植物によって大きく違うので何とも言えない部分はあります。ただ、経験上次の事は言えると思います。 ◆荒木田土を混ぜ込みのベースとした場合、密植しても多くの水草・抽水植物にとっては有機物が十分、元肥・追肥は2〜3年は必要ない ◆コウホネや睡蓮系など大型で花付きも良い植物は肥料要求度が高く、元肥・追肥(毎年)が必要 睡蓮は園芸の一ジャンルとしても扱われており、花付きを良くするために発酵油粕なども利用するようです。(これはちょっと勇気が必要ですね^^;)また食用としてハス田で栽培されているハスは周辺まで匂うぐらいの有機肥料を使用し、霞ヶ浦では水質汚染源の有力な要素ともされていますが、そこまでやると他の植物や魚類が同居できませんので程々に。 肥料の種類ですが、私が愛用しているのはマグァンプKという商品です。化学肥料なので非常に扱いやすい肥料です。ただし、他に有機物の無い「見た目綺麗」な環境では根腐れを起こしやすい傾向があります。ほとんどの場合はメダカや貝類の排泄物、植物の枯葉などで有機物は供給されますので、使い過ぎは禁物です。 マグァンプKは肥料としては高価な方なのですが、もともと鉢物用として購入してあったので使っているに過ぎません。N-P-Kが含まれているのであれば100円ショップのものでも何でも構わないと思います。ただし、くどいようですが有機肥料系は水中ではコントロールが難しいので慣れるまでは使用しないほうが賢明です。 最後に水ですが、私は水道水(庭の水道)を使用しています。立ち上げの際は濁りが収まるまで植物、生体は入れませんのでその頃には何もしなくても塩素が飛んでいます。足し水も全体の1割以内がほとんどなので何もしたことがありません。それで影響が出たこともありませんが、心配な方は塩素抜きをされれば良いと思います。 我が家の水道水は年間を通してpH7.0以上、中性〜弱塩基性ですがpH調整もしておりません。推測ですが水槽でCO2を強制添加するのと同様の効果が、土壌中の微生物の呼吸によって実現出来ているのではないか、と思います。早い話放置しておけば落ち着く所に落ち着くということです。
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アカウキクサやサンショウモなど雰囲気のある浮草は睡蓮鉢や池のアクセサリーとして欠かせませんが、困ったことに異様に繁殖力が強く、持て余してしまいます。とても絶滅危惧種とは思えない暴れっぷり。 アゾラ農法よろしく園芸植物の肥料にするという手もありますが、知らないうちに水面を覆い尽くしてしまうと沈水植物の生長にも多大な影響があります。 このような事態を防ぐ無料の器具です。作り方は簡単で、鮮魚や野菜などに付いている発泡トレーの底をくり抜くだけ。その内側に浮草類を閉じ込める、というものです。弱点はあります。紫外線で劣化したり風に弱い、ということです。本格的にやるなら園芸用のハンギングバスケットの底をくり抜いて睡蓮鉢の内側にかける方法もあります。どちらもポイントは「底を抜く」ことで、睡蓮鉢の水と連続性を持たせること。こうしないとメダカが侵入できない場所としてボウフラがわいたり水が腐ったりします。 沈水植物、特にヒルムシロ科などは根による進撃が凄まじく、狭い水底を占拠するのを防止するため鉢植えで管理するのと同じ発想です。
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水の蒸散が激しく水生植物用として不向きなテラコッタ、素焼き鉢ですが「モッタイナイ」観点から再利用を図る道があります。 話は簡単で「池・プール用塗料」を塗るのです。内側でも外側でも両方でも好きな色を選んで塗っておけば睡蓮鉢と同等に利用できます。弱点は塗料自体高価なところに薄め液(ラッカー)や刷毛など費用が嵩むことで、それだけかけるなら最初から陶器睡蓮鉢を買うのと同じ、ってことです。しかし!メリットもあります。 ・好きな色を塗り、絵心があればペイントアートも可。オリジナルな睡蓮鉢が作れる ・塗料、ラッカー、刷毛の初期費用はかかるが何度も使える(コストの漸減) ・油性でシリコンも浸透するようなので強度も増す(はず^^;) この塗料は乾くまで晴天で2時間なのですぐ使えます。乾燥後念のために一日程度水を張っておけば匂いも飛んで安心でしょう。
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池はもちろん、大型のタフブネや睡蓮鉢を設置できる余裕が無くても湿地植物を育成することが可能です。 100円ショップで売っているプラスティックの箱を花壇に埋め、水を入れれば良いのです。ただし花壇ですので土が入り込むのを防げませんので沈水植物や抽水植物は難しく、湿地性の植物向きの育成法です。 どうせ土が入り込むので先手を打って保水力に優れる水蘚を敷き詰め、さらに湿地植物用として赤玉土と荒木田土の混合土を重ねます。水が表面に溢れるまで入れて花壇の土で覆土します。これで水分の蒸散が相当抑えられます。真夏でも週に一度潅水すれば良い程度。花壇は真夏には毎日潅水が必要になりますのでついでに水をあげても良いでしょう。 金属製の箱は水分によって酸化が進みますので向きませんが、プラスティックの場合、埋めることで最大の弱点である紫外線による劣化を避けることが出来ます。ローコストで実現できる「湿地」です。 私はこのミニ湿地を一年草のタデ科の世代交代用として使用しています。植栽してあるのはアオヒメタデ、ホソバノウナギツカミ、ヤノネグサ、サデクサなどです。彼らは完全な乾地でも発芽はしますが、やはり本籍湿地なのでこうした環境が必要になるのです。 睡蓮鉢などで育成すると、種子が鉢の外(つまり庭)や水中に没する比率が高くなり、どうしても発芽率が低下してしまいます。この方法で多くの子株を得ることが出来ます。そんなに多くの子株は必要ないのですが、時折こうした草も「欲しい」という方がおられますし、頂いた希少種もあるので絶やしたくないという気持ちもありますので。 私が使用しているのは深さ5cm程度のダイソーで買った「多目的トレー」なる商品ですが、色が花壇にそぐわないアイボリーです。しかし埋めてしまうので色も形も関係ないのが強みですね。 *画像はイメージをご覧いただくために「多目的トレー」の縁を撮影用に露出させています |
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