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湿 地 の 基 礎 知 識 |
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【Wetland Profile】vol.5 湿地の明日 〜保全と問題点〜 |
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◇迫り来る危機◇ |
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すでに解説した「ラムサール条約」は湿地の危機的状況を前提にした国際条約ですし、例として上げたミシシッピ川沿いの湿地の喪失やメソポタミア湿地の乾燥化(*1)など具体的事例から見ても全地球的に湿地は危機的状況にあります。狭義の湿地のみならず、かつて湖沼で世界4位の面積を持っていたアラル海は干上がり続け消滅寸前となっています。 国内に於いても同様の事例はありますが、むしろ人為的な埋め立て、汚染などの問題が大きい現実があります。有名なケースをまとめて見ました。
このうち「ふじみ湖」はやや一般に馴染みが無い名だと思いますが、茨城県笠間市の砂利採集場の跡地に100t/日の湧水が湧き出して湖となったものです。関東の摩周湖とも称され水深39m、透明度も高い美しい湖でしたが、人為的環境である等の理由で廃棄物処理場とされてしまいました。 何度も出てきますがラムサール条約の精神、「自然の湿地か人工の湿地かを問わず」が試される事例でした。廃棄物処理場は絶対に必要なもので、それ自体環境を守る役割を持っています。しかしここに作ることが「湿地の賢明な利用」に該当するのかどうか非常に疑問です。同様の事例は各地で枚挙に暇が無いと思われます。 生物多様性と最も関連の深い湿地環境を今後どのように保全するか、単純に「保護」出来ない背景を踏まえて今後の対応が問われています。 |
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◇保全の取組み◇ |
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全地球的な課題は別として、生活環境の一部として残る湿地やため池を中心とした里山など、身近な湿地保全の取組みは様々な形で始まっています。市民活動から派生した独自のNPO活動も盛んですが、平成15年には保全から一歩進んだ再生も視野に入れた「自然再生推進法」(*4)が施行され、保全活動全般の法的根拠となっています。 一方このような身近な湿地は住宅地や農地のなかにモザイク状に残っているものが多く、ほとんどの場合私有地です。前出のふじみ湖も地権者がおり、反対活動は法的にはなんら権原はありません。財産私有は国家としての前提ですので保全は非常に微妙な問題も内包しています。里山保全などのNPO活動は「地権者の理解」が最大のポイントになっていると言えると思います。ご参考として平成16年7月の「第1回ラムサール条約湿地検討会議事概要」で閲覧できる興味深い議事をご紹介しておきます。水田の扱いを巡って議論がなされていますが、事務局案として水田は湿地タイプにいれていないという発言があります。ただ生物多様性と水田の関わりは十分理解されており、1年4ヵ月後の平成17年11月には前出のように蕪栗沼・周辺水田が登録湿地となっています。これは一つの道筋となるのではないでしょうか。 また湿地はこのシリーズ第二弾で解説したように遷移が激しい環境です。笹の侵入による陸地化防止、ハスやヒシなど多種を駆逐する種の間引き、優先種となりやすいハゴロモモやナガエツルノゲイトウの防除など地味な作業の繰り返しが保全の実態です。 近年の湿地保全のグローバル化とスタンダード化が一過性のものにならないように祈るのと同時に、保全・再生が各地で実現することを信じています。 |
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脚注 |
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(*1)メソポタミア湿地の喪失 こちらのニュースリリースによれば1970年代から2000年までの約30年間に90%の面積が乾燥して失われたという。以降も乾燥化が進み現在では元の湿地の7%しか残っていないという。異常気象の影響もあると考えられるがイラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争と長らく続く紛争が人為的保全を妨げていることは否定出来ない。 (*2)諫早湾干拓による干潟の喪失 干拓による消失面積3,980haは農水省の1991年の試算数値を用いた。環境省の1994年の試算数値では2,378ha、どちらにしても全干潟の10%を超えている。干潟喪失以外の影響については報道の通り。 (*3)常陸川水門 常陸川水門は、利根川と霞ヶ浦水系を分離させる事業の一環として、霞ヶ浦と利根川の合流点を仕切る逆水門として1963年に竣工した。治水上の根拠として1941年の利根川上流部大雨による霞ヶ浦への逆流、大洪水が発生したことがあげられている。霞ヶ浦の水質悪化との因果関係は明確ではないが、汚染が滞留しやすい構造となった事は間違いない。 (*4)自然再生推進法 2002年12月に制定された法律で自然環境の保全、再生、創出等の自然再生事業を推進するため、2002年12月議員立法により制定された法律。環境省、農林水産省、国土交通省が所管している。 |
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