Field note of personal impression of wetland plant


【第十話】スズメハコベ海の道
◇柳田國男翁と海上の道◇

スズメハコベについては好きな湿地植物の一つと言う以上に思い入れがあります。公式記録に無い地元で発見したという思いと、いかなる理由でここにあるのか、想像力を刺激してくれる存在であるからです。
海岸に漂着した椰子の実を見て太古の海上ルートに着目された名著「海上の道」を著された柳田國男翁は地元から程近い利根町布川に2年間在住されたそうですが、長年の愛読書に因み私もスズメハコベの来歴について海上ルートをベースに考察をしてみました。
残念ながら海洋学、運輸の知識に乏しく「寝言」の範疇を僅かに越える程度の内容ですので四方山話としてアップさせて頂きます。但し、著名な自生地での調査データやそれぞれの産地の植物体のDNA解析などが加われば立派に論文テーマになると思っています。素人には手が出ない世界なのが悲しいですね。
私が海上ルートに着目したのは自生地が公式には全国11県とされ、特に分布の多い地域が宮崎、和歌山、静岡など海沿いの県にあり、北限となっているのが利根川中流の渡良瀬遊水地栃木県側であるからです。栃木県は海沿いではありませんが、ここに昔の河川による運輸の概念を加えれば糸で繋げることが出来ると考えたのです。ちなみに私が発見した取手市も利根川沿いにあります。

◇南方種史前帰化種◇

本種が熱帯アジア原産の史前帰化種であることは数々の調査結果や資料によりほぼ間違いないと思われますが、原種については特定できる決定的な証拠がありません。藻草さんもアクアリウム・プランツとして用いられる「クラッスラ」と呼ばれる植物との類似性を指摘されておられますが、確かに草姿は似ています。
しかし、これも藻草さんが同時に指摘されているように、クラッスラとはベンケイソウ科の肉厚の葉を持つ属であり、Crassula helmsii Crassula aquatica Indian crassula が学名であるとするならば自ずとゴマノハグサ科Microcarpaea 属の本種とは異なる植物ということになります。もちろんアクアリウムの出鱈目な植物分類が根拠にならない事は言うまでもありませんが、いざ調べようと思う者にとって「熱帯アジアの小型の雑草の信頼すべき資料」が皆無の現状では、アクア界は害を撒き散らす存在以外の何者でもありません。
まさか熱帯アジアから入ってくるキクモはアンブリアで日本の田んぼにあるキクモはリムノフィラなので別属の植物だと思う方は居ないと思いますが、ミソハギ科やホシクサ科の混乱を見るにつけ、本当に駄目な部分が多い業界だと思います。これは同じ植物を扱う園芸業界にも言えることです。
閑話休題。すでに状況証拠からアクアリウムプランツの「Crassula 」がスズメハコベであることは想像がついていますが、ではどの種がそうなのかという事は決定的な証拠がありません。
これは実体顕微鏡を使った花の分解技術を持ったcarex校長に委ねるしかないですね。

◇飛び石移動◇

本題の移入ルートですが、冒頭述べたように史前帰化種であるという前提の下に稲作の北上とともに広がった植物であるというのが私の結論です。
稲作発祥の地については諸説あり、根拠となっているのは遺跡から発掘された籾殻の同位元素年代測定法などによるものですが、九州のどこかであることは間違いないようです。九州から太古の輸送力を使って北上する場合、柳田翁の著作からインスパイアされた存在ですが「黒潮」が大きなファクターであると考えます。
和歌山県と千葉県の地名は共通点が多く、思いつく限りでも白浜町(千葉県)同じく白浜町(和歌山県)、勝浦市(千葉県)に対し那智勝浦町(和歌山県)があり、方言も房総半島南部では和歌山弁と共通性が見られるそうです。カラクリは簡単で、昔黒潮に乗ってやって来た和歌山(紀伊と呼ぶべきか)の人々が安房に定住したことに由来するというものです。
多少強引ですが、九州南部から和歌山、途中寄航するであろう静岡がスズメハコベの自生地である事実がオーバーラップしてなりません。RDBにはありませんが、私は千葉県南部にも必ず自生していると確信しています。
そして太古から河川輸送の盛んであった利根川。渡良瀬遊水地も私が発見した自生地も利根川沿いです。小さな雑草の北進ルートが稲作の伝来ルートと重なっているはず、という見方は飛躍し過ぎでしょうか。

◇形態の差異◇

この植物を市内都合3箇所で発見いたしましたが、2種類の形態があるように思えます。最初に発見した自生地は湿地でしたが、もはや過去形となりました。あたり一面ミズハコベと混生して夢のような環境でしたが無意味な工事で無くなりました。
ここのスズメハコベは水槽にも良く馴染み、何人かの方にもお分けすることが出来た、いわゆる「スズメハコベ」でした。アクアリウムの世界ではかなり高名な方にも鑑定して頂きました。
その後水田2カ所で発見したタイプは私の知るスズメハコベ、畏友sonsiさんに頂いた宮崎県産とまったく同じであり、同定の必要もないほどでしたが、もう1タイプ、画像のやや肉厚のタイプが見つかったのです。
これが見つかったのは昨年ごく限られた場所で論議を呼んだ謎ロタラ(今ではヒメキカシグサと確信しています)、ミズキカシグサ風と同じ「お宝水田」ですが、見かけが肉厚で水槽に馴染むことはありませんでした。
噂のアズマツメクサかと思いましたが文献で検索する限りでは別種のようなイメージです。もちろん他に類似の植物は図鑑上に見当たらず、今でも謎のままです。これは徒歩圏の休耕田に2年連続で現れています。来年どうかは分かりませんが我こそは、と思われる方が居られたらお送りします。

Field note of personal impression of wetland plant
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