Field note of personal impression of wetland plant
水
草
四
方
山
話
【第十四話】浮草稼業な草々
◇アカウキクサとオオアカウキクサ◇
浮草類は屋外育成に於いて「ちょっと変わった」アクセントとして有用ですが、おしなべて爆発的繁殖力を誇り油断すれば水面を覆い尽くされて沈水植物が絶えてしまうなどの弊害もあります。一方ある程度の光の遮りは夏場の水温上昇を押さえ、メダカなど同居する小魚に安心感を与える効果もあります。私はなんだかんだで結構な種類の浮草類を睡蓮鉢に浮かべていますが、絶えれば悲しく殖えれば邪魔な微妙な存在になってしまっています。今回は浮草類の傾向と対策について四方山話的に。
以前ある方にお送りしたオオアカウキクサですが、アカウキクサと誤認されてしまったようで無用な混乱を与えてしまいました。最初に両種の違いについて。
オオアカウキクサ(
Azolla japonica
Franch. et Savat.)は環境省RDB絶滅危惧II類(VU)とされていますが、茨城県南部ではよく見かけます。私からお送りしたオオアカウキクサは例外なく茨城県産です。実はこれは意識して採集したものではなく、何か別の植物を採集した際に付着してきたのが殖えたものです。毎年いやという程処分していますので元の何千倍にもなっているでしょう。自生地では水面がすべて赤くなってしまう程の場所もあります。
草体は三角形にならない、鳥の足のような形や不規則な多角形になるという点が分かりやすい外見上の特徴となっています。オオアカウキクサという名前の通り気温や天候により赤くなりますが、これは様々な条件によるもので色による同定は意味がありません。緑色が通年続く場合もあり、赤くなる場合もピンク系、深い赤など様々な表現があります。
一方アカウキクサ(
Azolla imbricata
(Roxb. ex Griff.) Nakai)は草体が三角形になります。オオアカウキクサほどではありませんが近隣にも自生しています。こちらも環境省RDBには絶滅危惧II類(VU)としてリストアップされています。
私が維持している草はしんぺーさんから頂いたものですが、訳が分からなくなるので地元産は育成していません。こちらも殖え方はオオアカウキクサ同様凄まじいものがあります。
オオアカウキクサもアカウキクサも属名から「アゾラ」と称される浮草ですが、気中の窒素を栄養分として取り込む能力を持っています。正確に言えば窒素固定微生物が酵素を使って窒素固定する力を利用しています。このような例はマメ科の植物やラン藻でも見られます。田植前の早春、水田に広がるゲンゲの花は風物詩ですが、これはマメ科のゲンゲが気中の窒素を固定するために、田植え前に鋤き込めば施肥の代わりになるためです。
アゾラもこの機能がありますし、水田面を覆うため、他の雑草の発生を抑制する効果もあり、アゾラ農法として利用が図られています。有用植物なのですね。ただ、アゾラ農法に外国産のアゾラを使用したことによる帰化の問題があり、一部は特定外来生物に指定されています。
◇変わった形の浮草◇
少し変わった形の浮草です。これはサンショウモ(
Salvinia natans
Linn.)ですが、山椒の葉に似ていることから名付けられたそうです。ちなみに両方我が家にありますがあまり似ていません(汗)。
こちらも持て余す程殖えますが、近隣では2箇所しか自生地を知りません。特に水田では見たことが無いので農薬や乾田化が影響しているのかも知れませんね。環境省RDBでは絶滅危惧II類(VU)とされています。形が面白く、2つに千切れば2つになるというプラナリア的な殖え方もしますし、放置すれば脇から子株を出したり、とにかく殖えます。
この画像は近隣の自生地ですが、オオアカウキクサとサンショウモにより水面が見えません。絶滅危惧種の競演で他の水生植物が抑圧されています。これらを見ていると絶滅危惧種、特に水生植物は種自体の存続が環境に直結しているということを強く感じます。適切な環境が残れば採集圧なんてものは屁のようなもので、例えこの画像の9割を採集してしまっても(もちろん必要ありませんが)すぐに元に戻るでしょう。植物単独で考えるのではなく環境保全が重要なわけで、ゾーンディフェンスこそRDBの指針なのではないかと思います。
自生地の池で聞いた話ですが、サンショウモは毎年発生場所が変わるそうです。狭い池ですが、今年はこちら岸、来年はあちら岸なんてことが起きるそうです。微妙なお好みがあるのでしょうね。個人的には浮草で一番好きな草です。
銀杏の葉の形、イチョウウキゴケ(
Ricciocarpus natans
(L.) Corda)です。銀杏浮苔ですが、表面の凹凸が解剖図の胃腸を彷彿させますな。胃腸浮苔でも無理はないかも(汗)。
これは近隣では完全に水田型で、サンショウモとは逆に湖沼では見たことがありません。これは絶滅危惧I類(CR+EN)という、ここでご紹介した他の浮草類よりも危急度が高いRDBにリストアップされています。しかし目撃する頻度、量は圧倒的に多いのが不思議です。農薬や乾田化の影響に加え、減反や転作など水田環境の変化が要因として大きいのかも知れません。
他種と異なり、私には育成難度が高く感じられます。睡蓮鉢や水槽は藻類の発生を抑制するために貧栄養ですが、この種は仮根からの栄養吸収が激しいためか、と考えています。正直シーズンにはお散歩コースでいくらでも入手出来ますので真面目に育成環境を考えたことがありません。
もう一点、育成難度として増水による流失があります。他種より短めの仮根と葉状体のバランスにより、大雨などで睡蓮鉢の縁から容易に流失してしまいます。この辺は工夫が必要ですね。
水が落ちた水田でも僅かに湿気が残る田土にしがみつき、秋が深まるまで生きていますので生命力は強い植物だと思います。なぜかこの草を採ってくると仮根にアブの幼虫やヒルが付いて来ることが多く、このような生物の住処として利用されているのかも。
浮草は他にもウキクサ、アオウキクサ、ミジンコウキクサ、イボウキクサなど田んぼで多くの種類が見られますが、爆発力に辟易してしまうと思いますので育成はお奨め出来ません。この手の浮草があっても興味を引かれることもありませんが、以前近所の小河川で浮草があるなと思っていたら実は希少なミズハコベの浮葉だったことがありました(^^;
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