Field note of personal impression of wetland plant


【第二話】憧れの琵琶湖
◇二つの淡海◇

琵琶湖には水草が豊富なようですね。私は残念ながら水草採集はおろか、岸辺にも立った事が無いので話に聞くだけですが。(悲)
ご当地の霞ヶ浦は琵琶湖に次ぐ国内第二位の面積を持つ湖ですが、水生植物は感覚的には絶滅寸前と言っても良いと思います。なにかの拍子にササバモやリュウノヒゲモが復活するとニュースになるぐらいの惨状です。
琵琶湖と霞ヶ浦、何が違うのでしょうか。一説には水量の違いによる汚染の影響度の違い、ということが言われていますね。琵琶湖約278億立方メートル、霞ヶ浦9億立方メートル、一目瞭然の違いがあります。面積で見るとそこまでの違いは無いのですが、琵琶湖が断層湖で平均水深41mなのに対し、霞ヶ浦は海跡湖で平均水深4mなのでこのような差となっています。
加えて霞ヶ浦は水量を維持するために水門(常陸川水門)を建設してしまい、水の入れ替え日数を増やし、汚染が留まりやすい湖になってしまったという説も有力なようです。要するに日本を代表する二つの淡海はまったく違う環境に置かれているということです。

いつまで霞ヶ浦の愚痴をごぼしていても始まらないので、今回のテーマ琵琶湖の植物について。
上記のように私自身琵琶湖に行ったことが無いのですが、我が家の水槽には琵琶湖産の水草が相当あります。ご縁がありまして京都の藻草さんや滋賀のICHIさんに頂いた水草たちです。この面々を見ているだけで「多様性に満ちた湖だなあ」と実感することが出来ます。

◇ネジレモ◇

まずは琵琶湖と言えば、ということでネジレモVallisneria natans var. biwaensis )。学名からして琵琶湖特産種であることを伺わせます。セキショウモVallisneria natans (Lour.) Hara)の地域変種ではないかと言われているようです。興味深いことに「以前霞ヶ浦で目撃した」との記述が見つかりました。レイモン・アザディという方の書いた「霞ヶ浦の水草」(筑波書林、1995年)です。今やセキショウモも見当たりませんので証明するのは不可能に近いのですが、著者はバリバリのフィールドワーカーらしいので私は信用します。去年まででしたらシニカルに無視したでしょうが、フロラに無いスズメハコベと謎ミソハギ科を自分で見つけた事で「記録や公式資料はあてにならん」と思うようになりましたので。
ネジレ状態のみ画像を押さえようと思ったのですが失敗してますね(^^;もともと水槽の水草や魚の写真は非常に苦手にしております。と言うか肉眼の印象通りの水槽(水草、魚含めて)写真は見たことが無いので何かを抑える(反射か外光か)ことが必要なのでしょう。PLフィルター程度では難しいですね。

これは熱帯魚屋でも良く売っていますが、琵琶湖の岸辺に行けば普通に拾えるようなので本物なのでしょう。よりネジレが強い外国産のコークスクリューバリスネリアというものもありますが、ネジレモも肥料や光なのか、条件によってはきつくネジレます。

◇ヒロハノエビモ◇

これもネジレモ同様藻草さんに頂いたものです。私のフィールドでは見た事がありません。やや自然の残る霞ヶ浦東岸もしくは北浦西岸あたりにあるそうですが、なにせ広範な沿岸部なので調べきれておりません。
「ヒロハノ」と名乗る割にはエビモのほうがサイズ、葉幅とも大きいのですが、茎を抱く独特の葉の付き方が面白く、ぜひ一度野外でも見てみたい草です。
以前ショップでこの草を購入した際に、必要以上に早口で頼もうとして「ヒロハロホロヒレ..」と噛んでしまった人が居たことは秘密です。関係ありませんが、某有名店で「エノキのオリエンタルありますか?」とうら若き女性が口にされている場面に遭遇したことがあります。「八百屋に行け」と突っ込みたいのを必死に我慢しましたが、店員の方は私以上に我慢が必要なご様子でした。余談ですが懇意なショップの店長によれば、どうしても我慢できず噴出したのが、「ネオンテトラ100g下さい」(・▽・;

*この種はその後北浦で発見することが出来ました。繊細で透明な印象と異なり群生する姿は硬質のかなり「ゴワゴワ」した印象でした。ただし非常に小さな群落で、汚染に強いトチカガミに圧迫されているようで、霞ヶ浦水系では間違いなく危急種だと思われます。

◇オオササエビモ◇

関東地方ではまず見る事の無い珍種オオササエビモPotamogeton anguillanus Koidz.)です。ササバモPotamogeton malaianus Miq.)とヒロハノエビモ(上記参照)の交雑種と言われています。(*)
琵琶湖近辺ではわりと普通種であるようです。これも藻草さんに頂いたものです。ササバモの存在感とヒロハノエビモの繊細さがミックスされたとても良い水草だと思います。葉がピンク色に透き通り先端が微妙にカールする点が気に入っています。
環境省RDBには交雑種は記載されないようですが、この水草も間違いなく危急種でしょう。さらにササバモとヒロハノエビモの自生も減少し続けていますので今後新たな自生が見られることもないはずです。入手することがあったら大切に維持したい種です。

(*)ササバモとヒロハノエビモが両親種であるという説は神戸大学の角野先生と飯田女史による遺伝子解析によってほぼ特定されたということです。こちらもご参照ください。

◇イバラモ◇

こちらはICHIさんに頂いた>イバラモNajas marina Linn.)。近辺では汽水湖でのみ採集したことがあります。marina、マリーナという種小名を持つわりには関西では淡水に多いようですね。
イバラモ科はイバラモに限らず徐々に自生地が少なくなりつつあるようです。ムサシモ、イトイバラモなど今後も発見できる可能性が低い種はもちろん、水田で稀に見ることが出来たイトトリゲモやホッスモもこの数年間でもかなり減少しています。
沈水植物としては珍しくイバラモ科では唯一雌雄異株なので実生させるには両方必要です。私の水槽はやや硬度が高いせいか栄養増殖によって次々と枝分かれして増殖します。残念ながらこの種も一年草、一時的には増殖させることが可能ですが、2〜3年で力尽きるように枯死してしまいます。屋外でも雄株、雌株がないと世代交代させられません。意外と維持が難しい水草でもあります。

他の水草と違ってこれは硬質ですね。下手に扱うとポキポキ折れてしまいます。作り物のような印象ですが、盛んに光合成の気泡をつけて成長するのが何となくアンバランス。実はその辺りが気に入っているのです。

◇センニンモ◇

数ある水草で最も好きです、センニンモPotamogeton maackianus A.Bennett.)。
好きな理由は幼少の頃、小さな水槽に色々な魚や水生昆虫を飼育していた際に使っていた水草(だと思う)だからです。実家近くの河跡湖にたくさんあった記憶があって、年と共に気になるようになり実家に帰った際に行ってみました。団地になっていました。(涙)
まあ、そういう個人的ノスタルジーと「二度と確認出来ない事実」のもどかしさ、そんな思いがある水草です。残念ながらご近所にはありませんので採集できません。2007年には渡良瀬遊水地で細葉のヒルムシロ科を発見し、センニンモではないか、と心が躍りましたが大きく成長したヤナギモでした。ヤナギモとの判別は茎がやや硬質な点、葉先が凸型になる点です。

屋外育成では冬でも枯れることがなく、そのまま成長を止めて耐えているようです。

◇ヒロハノセンニンモ◇

こちらは交雑種のヒロハノセンニンモPotamogeton leptocephalus Koidz. )。ヒロハノエビモ(上記)とセンニンモ(同)の交雑種と言われています。琵琶湖には他にサンネンモPotamogeton biwaensis Miki.)という交雑種があり、霞ヶ浦にも正体不明のイサリモPotamogeton nakamurai )というヒルムシロ科の交雑種があったようです。自分でも何やらヒルムシロ科正体不明種を見つけたことがあり、交雑種が出来やすい科であるのかも知れませんね。
オオササエビモを小型にしたような種です。地下茎からばんばん新芽を出しますが、水槽では光量不足のためか枯れてしまうか、枯れないまでも成長は非常に遅くなるようです。他の水草と一緒に藻草さんに頂きました。
透明感のある葉や葉脈はヒロハノエビモの形質を受け継ぎ、葉が細く反り返る形質はセンニンモのものを受け継いでいると思いますが、交雑種の表現形は様々なので手元にある株がたまたまこのような表現形となっている可能性もあります。


藻草さんとICHIさんには本当にお世話になりました。お陰様で家にいながらミニ琵琶湖を鑑賞できます。インバモとかセキショウモ、ササバモを添えれば完璧ですね。一昔前ということでガシャモクがあっても良いかも。
こんなに獲物が豊富な水場に一度は行ってみたいものです。その時は宜しくお願いします。

Field note of personal impression of wetland plant
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