Field note of personal impression of wetland plant


【第三話】星草物語
◇星草狂想曲◇


ホシクサ科というカテゴリーの植物があります。このサイトでも水田雑草で2種類ほどご紹介させて頂いておりますが、日本にも相当な種類があって、そのへんはしんぺーさんのサイトを読んでください。

さて、この科に於いて困ったことが2つあります。
第一に挙動不審なこと。一般的な知識として共有されているのは「一年草で、開花すると枯死する」と言う事ですが、同じ種と思われる株でも水槽生活にフィットする奴がいるのです。何気なく水中で開花せずに株分けで増殖するライブドア的な奴がいたりします。「水温は××で硬度が××、で肥料を窒素分多めに..」などと言えないのです。同時期に導入した同種でもすぐに開花して枯死する株もあります。
これが地域変種の遺伝的特質なのか水中生活に特化可能な未知の酵素等によるものか全く分かりませんが、しんぺーさんは「個体選別を繰り返し改良し水草として扱える品種を作っていく」と仰っています。凄いですね。水中育成できるロゼットが少ない国産種では貴重な試みなので、ぜひ頑張って欲しいものです。
第二に投機的な水草になってしまったこと。「珍種ホシクサ」と言えば目も眩む価格がついてしまい、それでも買う方が居ること。マトグロッソ・スタープランツが上陸した時など、繊細で綺麗な草姿もさることながら福沢選手が出場しなければならない価格にびっくり。水草1株にそれはないでしょう。

尚困ったことに「ホシクサブーム」のお陰で産地の名前のついた正体不明種が溢れてしまったこと。ゴイアス何たらとかペナンだサラワクだ...。で一体なんやねん、と。
クリプトに嵌った経験のあるワタクシですが、これはついて行けません。インヴォイスからして出鱈目で、トニナの上陸の際の訳分からなさが増幅されてしまった感があります。そうこうしているうちに国産ホシクサにも魔の手が伸びたようで、sonsiさんが経験された南九州の自生地乱獲など悲しい事件も多発するようになってしまいました。
「アクアプランツ」は良く出来た本で、特に存じ上げている方々が作られているホシクサカタログは世に出ている如何なるホシクサ本よりも綺麗で情報量が多いですね。唯一懸念があるとすれば今までそれほどメジャーではなかったゴマシオやアマノが知られてしまったこと。変なことにならなければ良いのですが..。
たしかに魅力的な草かも知れませんが、端から見ると騒ぎすぎです。ここでは身近で手に入りやすい種類と育成について語ってみたいと思います。

◇形質変化?◇


現在(2005年4月)2種類のホシクサを水槽に沈めて育てています。左はtomoさんという方とトレードした鹿児島県産の不明種、右のやや大きいのがHOUさんに頂いた「ヒメシラタマホシクサ」です。
どちらも現在は沈黙して作り物の水草のようです。動きは何ヶ月か無いのですが苔にやられることも無い様です。不明種は素人目にはホシクサEriocaulon cinereum R. Br.)に見えますし、ヒメシラタマホシクサはしんぺーさんに拠れば「キネレウム改良品種=ホシクサ」との事で、要はホシクサなのでしょう。
ではなぜ水中で開花せずに長期維持出来ているのか?遺憾ながらまったく分かりません。「ホシクサのなかには水中育成可能なものがある」としか言えません。
興味深いのは、「種の内包する形質変化」ではなく、「個の内包する形質変化」としか思えないことなのです。マトグロッソ産殖えました、流通価格5000円のところ特別に3000円で〜と意義の無い事をするよりも、本当にホシクサが好きなのであればこのあたりの研究をされた方が世のため人のためになりますね。(私は長らく放置してきた科なので基本的な知識も分類同定の技術もありませんが)
そうは言っても実験できる環境にある方は限られるでしょうし、いくら四方山話でも放置できないテーマなので少し思うところを。
植物の形質変化で有名なのは食葉昆虫による摂食によって形質を変化させる「誘導防御反応」です。昆虫のお食事が形質変化DNA(造語です)目覚めのトリガーになっているわけですね。
では水生植物が冠水することがトリガーたりうるか。答えはNoです。

少し前にseabass3の画像掲示板で武さん、fumirisuさんにリクエストされた「リシアと沈水リシア」の違いを例に話を進めましょう。(あの場所でこの話をするのは激しい違和感がありましたので..すいません)
とりあえず画像を再利用しますが、野外で沈んでいるリシアは良く見かけます。一方水面近くに浮いているリシアも。ところが我が国に自生するカズ(ヅ)ノゴケの学名はRiccia fluitans のみなのです。沈んでも浮いても種としての相違は認められない、ってことです。
特にこのような苔類は何をどう形質変化させたのか明確に分からない部分が多く、どのような個体が沈むのか分かっていないというのが現状です。
高等植物たるホシクサも実は同じで、「沈むホシクサ」「開花して枯死するホシクサ」の違いは「個の内包する形質変化」としか思えないのです。これがDNAによるものであれば、しんぺーさんの仰るように「水中生活型に改造した株同士の交配」によって完全な水草が出来上がることでしょう。
このあたりがミズネコノオやヒメミソハギが水中化する際に「クチクラ質捨てました」「気孔を変化させました」という分かり易さと大きく違う点で、植物としての興味が尽きない点でもあります。だからこそcarex校長やしんぺーさんなど優秀な頭脳が引き寄せられるのでしょうね。

◇入手のポイント◇


水中生活に馴れた(これしか言い様がない)ホシクサは前景に使える数少ないロゼットで、とても好ましい水草となります。
ぜひ入手されお楽しみ頂きたいと思いますが、自分で採集するためには数多くの水田の観察が必要になります。どの水田にも発生する草ではないこと、発生する水田のパターンが特定出来ないこと、などがギャップとなります。
お薦めなのは10月頃稲刈りが終了してやや時間が経過した(3〜4週間)水田を数多く見て周ることです。見通しが良くなり水田にも踏み込めますので、開花しているホシクサはかなり目立ちます。うまく行けばミズネコノオなども見つかります。(トップ画面と水田雑草のミズネコノオの写真はこのパターンで10月に発見したものです)
背の低いキクモやキカシグサのなかから白い花がポツポツ〜という感じで見つかると思います。やや花が上向き開き加減、褐色のものはヒロハイヌノヒゲです。運が良ければクロホシクサなども見つかるかも知れません。

ただし、すでに開花していますのでそのまま水槽には入れられません。小型の水鉢やトロ箱などで抽水状態で育てましょう。種が多数収穫できます。種の収穫ですが、花茎が茶色くなり始めると結実しているようなのでタッパーなどを準備して揉み出すように小さな種を落とします。(sonsiさんに教えて頂きました)
寒さと乾燥を経験させれば発芽率はかなりのものなので翌年には数多くの子株が入手出来ます。ある程度の数を水中育成すれば水中で生育する株が入手できると思います。
ホシクサはかなりの地域変種がありロカリティが重要だと云うことです。特に研究者には重要な事ですので、トレード等で入手された場合は逸出することの無いようにしたいものです。


さて、ついでに永久に失われてしまったホシクサの話も少し書いておきます。分布が極端に限られていたオクトネホシクサPaepalanthus kanaii)はダム建設によって絶滅しました。
また、群馬県の多々良沼付近でのみ自生していたタカノホシクサEriocaulon cauliferum)も野生絶滅しています。本種については奇跡的に種子が保管されており(保管されていたのは東京農大の宮本先生だったと記憶していましたが、曖昧です、すいません)2004年にビアスパーク下妻という施設の疎水で復活しました。(*)時間が無く見に行けませんでしたが、機会があればぜひ見学したいと考えています。(わりと近所なのですが用事が無いと行きにくい距離でして^^;)
一般的なホシクサでも自生地が限られており、種が明確に特定もされていない、種または個の内包する形質変化もあるという儚くも興味深い植物です。今後の新種の発見も十分期待できますので、採集の際には十分な配慮が必要だと思います。

(*)ビアスパーク下妻で復活したのはコシガヤホシクサEriocaulon heleocharioides Satake)でした。ご指摘下さったしんぺーさん、ありがとうございました。やはり「記憶があいまい」でした(汗)

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