Field note of personal impression of wetland plant


【第四話】謎草続々
◇同定不可能◇

2004年は正体不明の草が複数見つかった年でした。自分でもかなり調べましたが正体が分かったのは1種のみ。
困り果ててツテのある研究機関や団体にもサンプルを送ったのですが、確定的な回答は得られませんでした。そのまま終わっても寂しいので自分の覚書として記録しておきます。
かなりしょぼいですが一応Webサイトなので、ご覧になった方からアドバイスを頂ける可能性もあるかも知れませんし(^^;藻草さんの画像掲示板にも一部アップして皆様からご意見を頂きました。ありがとうございました。
今更ですが植物の写真だけで「何者か」と判断するのは難しいですよね。逆の立場だったら何も答えられないと思います。無理な要望にお付き合い下さった方々に重ねて御礼申し上げます。

今になって(2007年2月に加筆しております)思うのは、同じ植物でも誰も気にしない小さな雑草は意外と真面目に調査されていない、ということです。もちろん我々の立場は「アマチュア」であって調査や論文で対価を得ているわけではないので「真面目か?」と聞かれれば答えに窮しますが、誰も気にしないまま地味だが希少な植物が絶滅して行くことに強い危惧を覚えます。
研究機関や研究者と多少なりともお付き合いするようになり、「日の当たる」研究は諸々メリットがあるらしい、誰も気にしないような地味な研究は様々な面で苦労があるらしい、ということを薄々ですが感じました。アウトプット(成果)の質量はインプット(研究費や自由に使用できるリソース)の質量に比例するのは仕方がなく、一方的に「研究者(機関)なのにこんなことも分からんのか」という姿勢はいかんですね。
サンプル提供や自生情報などは趣味者ながら責務ではないかとも考えるようになりました。研究者側も「車軸藻のページ」掲示板でやりとりさせて頂いたように、山室先生をはじめ姿勢に共感できる方が増えました。某NPO立上げ当初のような木で鼻を括ったような研究者の方々も減ってきましたしね。

◇謎ミソハギ科1◇

見るからにミソハギ科で、科は間違いないと思います。質感、大きさがキカシグサです。違いは葉形だけ。某研究機関から「確実な同定ではないがヒメキカシグサ」とご回答を頂きました。
ミソハギ科でもアマニアとロタラの違いが今一つ分かっていないので何ですが、印象としてはロタラのような気がします。水中育成もしてみましたが、かなり長期間異形葉を出して頑張りました。最後は他種に覆われて光量不足になったためか成長が止まり根本から溶けてしまいました。ちょうどキカシグサ(=アマニア・ボンサイ?)と同じような挙動でした。
自生していた場所が不思議なのですが、休耕田の1枚だけなのです。ここには下で書くスズメハコベ、ベンケイソウ科タイプなどもあって他の休耕田と植生がやや異なっていました。
予断で語るのもナニですが、この休耕田の隣が「市民農園」なのが非常に気になっています。市民農園はいわば無法地帯で、輸入種子でも何でもあり、カオス植生の場所です。もし外国産の種子が混入していて逸出したのであれば大きな問題です。特に田んぼの雑草の種類で一喜一憂している私にとっては。
ヒメキカシグサは文献でもネットでも極端に情報が少ないのですが、図書館で調べた牧野植物図鑑では非常に似ていました。ミソハギ科を草姿で(しかもイラストで)判断出来ないのは重々承知の上ですが。

(*)その後の情報で、ヒメキカシグサとヒメミソハギの矮性株は形状が酷似するが、前者は葉一枚に対し葉の付根に花一厘、後者は花が多数付く、という重要な同定ポイントをご教授頂きました。今のところヒメキカシグサ90%、未知の帰化(世代交代を確認しておりますので「帰化」という表現も差し支えないと思います)ミソハギ科植物10%というところです。

◇謎ミソハギ科2◇

これもまずミソハギ科に間違いないでしょう。キカシグサの海に一本だけ太くて草姿の異なるキカシグサが混じっているのがお分かりでしょうか。
これは実は写真を撮った際には気が付かず、かなり後になって写真を見ている時に気が付きました。従って実物は見ていません。「木は森に隠せ」とはよく言ったものです。
ちょうどsonsiさんに宮崎県産ミズキカシグサを頂いて育成していましたが、そっくりと言うか「そのもの」に見えます。もちろん近辺にはフロラ記録が無く、この1枚の休耕田(謎ミソハギ科1とは別の場所)以外では目に付きませんでした。
非常に大胆な仮説をお許し頂ければ、埋土種子からの発芽ではないかと。状況証拠ですが休耕田になった時期と農薬の使用が激減した時期が一致しています。いかに爆殖系ミソハギ科と言えどもこれほどのキカシグサ群落は見たこともありません。たまたま条件が一致したのかも知れませんね。
もちろん翌年に発芽する保証もなく、放棄田遷移もあり陸地化が進行していますので、また見られるかどうかは微妙ですが、シーズンに入ったら探してみようと思います。しょせん雑草ですがミズキカシグサであれば希少種で記録の無い植物なので相当な発見だと思います。

(*)残念ながらこの放棄水田は2005年には遷移が進み、キカシグサも全く見られなくなりました。他の場所では発見していませんので本当に残念なことをしました。

◇ベンケイソウ科?◇

当初はスズメ(ノ)ハコベかと思っていました。謎ミソハギ科1と同じ休耕田にありましたが、良く見ると2種類のスズメハコベタイプが混在していました。
1種類は水中で生育し、2003年採集株、2004年に頂いた宮崎県産と同じ草姿になりましたのでスズメハコベに間違いないと思います。ところがもう1種類は少し小型、やや肉厚で水槽に馴染むことはありませんでした。噂に聞くアズマツメクサかと思いましたが確証はありません。これも資料が極端に少なく参照数が足りませんでした。謎ミソハギ科1とともに研究機関にお送りしましたが、「分からない」という回答でした。

少し見方を変えて「種子が運ばれて来た」可能性を考えてみました。私の居住地は利根川、鬼怒川、小貝川に囲まれた歴史的な洪水地帯にあります。過去何度も河川が氾濫し、冠水しています。この時に種子が上流から運ばれた可能性を考えると群馬、栃木を含む北関東一円が自生地調査の対象となってしまいます。知りうる限りでは利根川上流の渡良瀬遊水地に自生の記録があるので可能性の無い話ではないと思っています。
洪水による種子運搬、埋土種子、低農薬化・多雨による発芽条件、様々な偶然が重なって未知の、フロラ記録の無い植物の発芽。こう考えると狭いエリアで植物の自生が云々と考えている事自体矮小な方法論だな、と考えるようになりました。未知の植物との出会いは想像力を刺激してくれますね。

(*)これはその後の調査でスズメハコベと確定しました。そして従来確認出来なかった多くの水田で発芽、成長も確認しています。数年前と条件が異なるのは除草剤の使用量ぐらいなので因果関係があるのかも知れません。

Field note of personal impression of wetland plant
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送