Field note of personal impression of wetland plant


【第七話】水辺植物群書類従

公開 2005.7.9
追記 2005.9.17

◇はじめに◇

最近強く思うことですが、Webサイトの植物図鑑というのはいまいち情報量が足りない気がします。このサイトの「水辺の獲物」も自分が一訪問者として客観的に見た場合、重要な同定ポイントが写っているか、という点で写真の大きさや角度に不満がありますし、ご覧になって頂いている方も、野外で見たい場合どういう場所に行けば見られるんだ?屋外育成はどういう環境で?など調べる目的それぞれによって情報の不足が多々あると思います。
文献はある意味「時代遅れ」と見られなくも無いのですが、こと植物図鑑の類については著者は概ね専門の研究者であり、数次の校正によって正しい情報が記載されていますので素人Webサイトの図鑑とは比較にならないクオリティーを持っていると思います。
但し個人的に不満なのは、かの名著にして水辺探索者の聖書とも呼ぶべき「日本水草図鑑」にもタデ科やホシクサ科の情報が少ないこと。これは言ってみれば我々趣味者の「同じ水槽で育てば水草」という一方的な価値観からの要望であって「どこまで水草として扱うか」という命題が前提としてある事を考えなければなりません。
これらを網羅するにはそれぞれのジャンルに特異性を持つ文献を揃えて手元に置く(ここ重要)ことだと思います。図書館で借りられる文献もありますが、日々疑問に思ったことを繰り返し調べられますので知識が自分のものになると考えています。ここではその意味で一般に入手し易い(価格は別として)文献のご紹介をいたします。
もちろんご紹介するからには自分で所持していることは言うまでもありません。

◇水辺植物群書類従◇

文献名 著者・出版社 個人的書評
日本水草図鑑 角野康郎◇文一総合出版 日本に自生する湿地植物のうち沈水植物を中心に扱った図鑑で、現在入手可能な水草図鑑としては最もクオリティーが高いものだと思われる。特にヒルムシロ科は見事で、調査に費やした労力と時間が感じられる出来栄えである。ズブズブするなら無理してでも買うべし。
水辺の植物 堀田満◇保育社 文庫サイズの手軽な図鑑。植物のイラストが原色で描かれているが、やはり特徴を伝えるという点では写真に譲るものがある。湿地植物全般を扱っている点、ホソバノウナギツカミ、ナガバノウナギツカミなどマイナーなタデ科の解説がある点が評価できる。
野に咲く花 林弥栄監修◇山と渓谷社 最近の使用頻度が最も高い図鑑。個人的に野草も好きなので、野草・湿地植物の掲載数が多く、花で植物の同定をするのに便利に使える。ヒメハッカは所持している図鑑では本書にしか写真、解説が無い。スミレや水田雑草も多く扱っている良書。
ミニ雑草図鑑 廣田伸七◇全国農村教育協会 水田、畑地など発生場所別に纏められた雑草図鑑。注目すべきは発生時期の写真と成長後の写真があることで、発生直後の同定が困難な水田雑草の見分けのガイダンスとなっている。ミニとは言え掲載数、解説とも十分な文献である。
水草の観察と研究 大滝末男◇ニュー・サイエンス社 やや記載内容の年代が古いが、その分湿地植物が豊かであった時代が偲ばれる好著。著者は採集と屋外育成に造詣の深い方で日本水生植物図鑑(絶版)の共著者でもあり、我々の趣味の大先輩である。やや入手し難いが、ぜひ読んで頂きたい。
野草図鑑1〜8 長田武正/長田喜美子◇保育社 ご夫妻で日本全国を旅され写真に収めた野草がカラー写真で掲載され丁寧な解説も付いている力作。形態別に各巻に纏められた使いやすい図鑑。極めて実用的であるが、スズメハコベなど希少種については掲載されていないのが残念。
里山図鑑 おくやまひさし◇ポプラ社 里山観察会などのイベントに参加される若いお母さんが必ず持っている好著。植物だけではなく、里山で見られる様々な生き物を著者一流のユニークな文章で紹介している。何より「里山」がテーマになっているのが嬉しく中身を確認せず即購入した。
霞ヶ浦の水草 レイモン・アザディ◇筑波書林 かなり入手難であるが、地方小出版等で入手可能。霞ヶ浦付近に自生する水生植物全般をイラストで紹介する。ネジレモの目撃情報など画期的なことも書いてあり、古き良き霞ヶ浦が偲ばれる内容となっている。著者(茨城県在住)にはぜひお会いしてみたいと思う。
茨城の野草
春〜初夏編
鈴木昌友◇茨城新聞社 茨城県内で撮影された野草(水草・湿地植物含む)を撮影地情報をつけて公開している。私が地元を探索する際のおおよその分布の目安になっている。希少種はピンポイントで場所を特定できないまでも目星がつけられるだけでも有り難い。
世界の水草T〜V 山崎 美津夫/山田洋◇ハロウ出版 いわゆる水草カタログであるが、日本に自生する湿地植物も数多く掲載されており「育成」という観点から解説がなされている。「水中育成可能」という言葉に勇気を得てチャレンジした植物は数多い。かなりのレアな種も解説されている。
田んぼの生き物図鑑 内山りゅう◇山と渓谷社 タイトルが「子供向け」でさほど期待していなかったが、内容を見て驚愕。豪華執筆陣に加え、動植物ともかなりマイナーレベルまで解説がある。特に私が弱い魚類や昆虫類については大きく役立っている。水田探索に必携の一冊である。
ため池と水田の生き物図鑑 植物編 浜島 繁隆/須賀 瑛文◇トンボ出版 ため池や水田に自生する植物が紹介されている。特に間違い易い植物の見分け方(同定ポイント)について記載があり、利用価値が高い。「動物編」も出ているので、この二冊でほぼ湿地生物は網羅できると思う。

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