利助おじさんの探検絵日記

【その49】病中湿地探訪記 Part1


◆6月の悪夢再び◆

2006年6月に不幸な偶然が重なって重篤となりましたが、2007年5月末から6月上旬にかけて再び体調不良に襲われました。
体調不良2006年版は不調を自覚しながら深夜まで仕事をしたり出かけたりと、自分が悪い部分もありましたが2007年版は言ってみれば「薬害」という自分にとっての不可抗力です。医師や弁護士は暗示的に「信頼」という看板を上げているわけで、その医師から処方された薬を自分の判断で飲まない患者はいませんからね。
初っ端から脱線しますが弁護士は好きで、ある裁判で受任して頂いたT弁護士は非常に気が合って今でもメールのやりとりがあります。読書家の私は(汗)ジョン・グリシャムの邦訳版はすべて読破しておりますが、グリシャムネタで盛り上がって「日本の裁判には懲罰的判決がない」という事を残念がっておられました。民事裁判なんてのはどっちが正しいってことは司法の判断というか事情(小銭のことで裁判起こすなよ、忙しいんだから)ではあまり関係無いのですが正義感と理想を持った弁護士もいるんですね。このT弁護士は本当にお薦めで、何か御困りの案件がございましたらご紹介させて頂きますので私にご一報下さい(^^;



さて、何だか調子が悪い5月末の日曜日、体温を測ってみると38.5度でした。今まで肝機能で発熱したことは無かったので、快晴のこの日、睡蓮鉢の手入れや庭の雑草駆除など屋外作業を長時間行ったための熱中症かと思いました。熱中症なら1〜2日で復帰できるはずですので翌日の仕事の段取りや自分主催の会議の中止指令などをメールで行い安静にしていました。
ところが3日経っても熱は下がらず40度近辺を行ったり来たり。鼻や喉の粘膜は乾いてひび割れ食欲は全く無し、一日バナナ一本がやっとの状態でさすがにこれはおかしいぞ、と言う事で近場の個人病院に行ったのが敗因。そこで処方された「ユナシン」というペニシリン系の抗生物質(解熱剤)が激しいアレルギーとなって全身の発疹、激しい倦怠感(肝機能で経験するやつ)が起きました。
地元の総合病院で検査したところ、発疹も肝機能障害も「薬害」と言う事でまったく酷い目にあいました。酒は最初の発病以来飲んでいませんし疲れを溜めるような仕事の仕方もしておりませんでしたが、節制努力を無意味にする薬が存在するとは・・。

と言う事で梅雨入り前のフィールド探査を棒に振り、楽しみにしていた方々を裏切る結果ともなり、倒れていた2週間+その後更なる節制期間を強いられる始末ともなってしまいました。そんなこんなでやや回復した6月下旬、どうしても欠かせない義理もあって県央の知人の家に長男を連れてご挨拶に行きましたが、途中にあるんですね、勝手知ったる魅力的な湿地が。
車にはバケツと網が常時積んであり、最近の長男のライフワークである「魚捕り」がスタンバっております。「んじゃ少しだけな」ってことで前後も分別もわきまえない病人の湿地探訪記です。


◆まさに水溜りは湿地だ!の生態系◆


知人の家を病中という事で(言い訳ですが^^;)早々に辞去し、ちょっと寄り道で某ため池に寄り道。駐車場(近場の施設の駐車場を借用^^;)から池までは香ばしい雑木林の道が続き、炎天下でも涼しい風が吹き抜けています。独特の広葉樹林の香り、フィトンチッドかアレロパシーか、ここをまったり歩いて行くのは最高のリハビリです。長男はクヌギでクワガタを探し空行くチョウトンボを追いかけ、ナナフシを見つけて喜んでいました。
毎度の話ですが里山はヒーリング効果がありますねぇ。特に私にとっては四季折々、スミレや昆虫、キノコやアケビなど宝の山ですので最近滅多に出ないアドレナリンの元でもあります。ホウキタケなどを見つけようものなら胸がドキドキし、続いて芳しい炊き込み御飯の香りを連想しうっとりします。パブロフの犬です。
ところがこのような宝物がある里山は人間が手入れを行う里山に限られます。放置された里山は下草が笹に覆われたり植生が遷移してしまいますので昆虫類や小さな野草、キノコが生きて行けない環境になってしまうのです。まさに二次的自然の意義ですね。近場では放置され荒れた里山だらけですのでここに来ると獲物が無くてもほっとします。
なぜ手入れしないのかって?そりゃ今時どんな田舎でも電気やLPGが普及したからですよ。里山の手入れをしろ、と言う事は手軽に撒ける化学肥料を使わずに下草落ち葉で堆肥を作れ、ガスコンロ止めて竈と粗朶で煮炊きしろ、と言うことで山林を持つ農家に文化的に後退しろ、たまに都会から楽しみに行ってやるから、と言っているのに等しいのです。
そうは言ってもこうした里山の賜物を楽しむ文化を次世代に残したい、と思えば最早NPOなどで維持するしかありません。近頃自分の利益しか興味の無い方々も増えましたが、自然や文化を残すための無償の奉仕も立派な社会貢献だと思います。個人の考え方の問題ですが・・。

さて、里山を訪れる度に湧いてくる感慨も池に近づくにつれ期待感に吹き飛ばされる水草野郎の頭脳と観察眼は池手前の水溜りに釘付けとなりました。
以前も見ましたが、空き地に出来た水溜りにオタマジャクシが泳ぎ、イヌタヌキモが育っているのです!晴天が続けば干上がる一時的な水溜りに何故?オタマジャクシはともかくイヌタヌキモはどこから?様々な疑問が湧き上がるのと同時にラムサール条約を持ち出すまでもなく「恒久的な湖沼湿地と一時的な湿地に生態系の決定的な差が無いのではないか」と思えて来ます。
まさに最近アップさせて頂いた「消えたふじみ湖」で推進者側が論拠とした「一時的な」水溜り以下の道路上の窪みに生態系が出来ているのです。公的な場で「一時的な」言い逃れをすれば後々まで色々な場所で非難されてしまいますね。こんな水溜りに比べればもちろんふじみ湖は重要な湿地であったし生態学的にも価値があったことは間違いありません。
しかし・・ため池なので水門もありとても大雨で溢れるようには思えませんが、氾濫時に運ばれたものなのでしょうか?それとも誰かが面白半分で採集したイヌタヌキモをここに捨てて行ったのでしょうか?この池の周囲の水溜りでは例外なく見る光景なのでそれも考えにくい状況ではあります。
そもそも水溜りが出来た要因はいないのに釣りに来るバサー(ブラックバスをルアーで釣る連中の総称)が乗るでかい4駆の轍の後で、違法な密放流を繰り返し自然分解されないソフトルアーを放置していく連中の作った唯一の自然環境ですね。さて今回、ほぼ例外なくダメダメな釣り人のなかで、これは!という恐るべき釣り人を見ました。


◆外来生物法的釣り人の話&エビモ踏ん張る◆


池に到着すると餌釣りの釣り人が一人いました。都会近くではちょっとした自然環境でも「釣り禁止」とか「動植物採集禁止」など五月蝿いもんですが、田舎では採集圧が影響するようなヤワな自然ではないので節度を守れば楽しめる場所は多々あります。
釣り人の方は10〜20cmの魚を次々と釣り上げていましたが、我々が到着した後に来たうるさい家族、特に小学生低学年の子供が「オオヤマトンボだ!」「ウチワヤンマだ!」とお構いなしに網を振り回して騒ぎまわるので仕方なく帰って行きました。色々な場所で見ますが子供が他人に迷惑をかける事を何とも思わない親は多いですね。もちろん私は注意してあげるような親切な人ではありません。ぜひアホのまま育って世間の洗礼を受けて欲しいと思いますので。
それはともかく、この釣り人が帰り際に取った行動には驚かされました。釣った魚はフナとブルーギルが半々だったようですが、ブルーギルをリリースしたのです、雑木林に!。そして子供達が居る手前というか残酷な大人だと思われたくなかったのか、「これは持って帰っても放流してもいけない魚だから・・」と呟きました。
言うまでもなく外来生物法の特定外来生物に対する作法通りの扱い方です。そしてブルーギルは特定外来生物となっています。遵法下の当然の行動なのですが、驚いたのはこんな田舎のため池で釣り糸たれている方が正確に外来生物法の作法をご存知だったこと。一応小学生の長男にも分かりやすく意味を説明してフォローしておきました。

さて、池には予想に反しまだエビモがありました。温暖化の影響か、すでに5月から真夏並みの天気が続いていましたので殖芽となって姿を見られないと思っていましたが、今年も止水型の大きく立派な株を見ることができました。
エビモは画像でも分かる通り葉に入ったウェーブが魅力的で育成したい草ではありますが、夏場に殖芽になってしまう、育成環境下では殖芽からの発芽率が悪い、などの気難しさがありあまり育成に向いていません。家で世代交代しているのは湧水河川で採集したもので、こちらは条件によらず殖芽になることはありません。草体も止水型に比して小柄、両者が同一種であるとは信じられないぐらいですね。
もう一点画像で分かる通り、ため池の傾向として透明度が低く、20cm無い場所が大半です。ハスやヒシ、クロモなど強力な生命力を持つ水草、ウキクサ類やタヌキモ等は影響が無いのでしょうが、エビモの密度の薄さには危惧を覚えました。
危惧と言えば以前ここで採集し、色々な方にお分けし終いには神戸大学の角野先生にまで送ってしまったオオトリゲモが見られませんでした。自宅睡蓮鉢で発芽したヒロハトリゲモの草体を見ていると、まだ発芽まもなく水面から目視できるレベルまで育っていないのかも、と思いました・・・と言うよりもそう信じたいですね。昨年水面を埋め尽くしていたサンショウモも見当たりませんでしたので時期が早かったのでしょう。


◆無農薬水田の放棄始まり植生遷移する◆


池の隣、NPOのイベントで水田体験等を行っていた田んぼは今年は休耕のようでした。昨年まではスズメノトウガラシ、フタバムグラなどわりと希少な植物も畦道にありましたが見当たりませんでした。
幅をきかせていたのはカヤツリグサ科の植物でぱっと見イヌホタルイやクログワイに見えました。カヤツリグサ科が無い場所に肩を寄せ合うようにヘラオモダカが頑張っていました。別記事でも触れましたがカヤツリグサ科の植物が繁茂するのは休耕田遷移の第二段階ですが、もともと無農薬で除草もさほどしていなかった事が原因なのでしょう。
何らかの事情によるものと思いますが個人的には残念です。現在の情勢では休耕から復田することは稀で、復田する際に攪拌し埋土種子が目を覚ます、スブタやミズニラが見られた、というのも当地の出来事です。しかし経済活動そのものである農家の耕作、教育プロジェクトの一環である水田体験は「自然度の高い水田で水田雑草を見る」事とは別次元の話なので仕方ありません。この放棄水田も湛水はしていないようですが池のすぐ脇ということで地下水位はあるでしょうから暫くは湿地性の植物が見られると思います。しかし数年以内にはセイタカアワダチソウの進入が始まり陸地化してしまうでしょう。

私としては腹一杯、というかこんなに動いて明日が心配な状況でしたがクワガタは捕れず池にいた動きの早い小魚を散々狙って一匹しか捕まえられなかった長男は不完全燃焼なようで、この地から程近く魚も捕まえやすい別な湿地に行きたい、と言います。まぁ車で移動してちょっと動くだけだから良いか、ってことで第二ラウンドへ。

Part2へ続く





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