水辺植物育成入門第三部 植物編 |
私個人の考え方なので押し付けるつもりも強調するつもりもありませんが、法的枠組み以外の部分で、外来種なら逸出の危険、国産種なら遺伝子の地域性という理由で、極力自分で、自宅周辺で採集した植物を使用するようにしています。 外国産の水草を水上化させてどんな花が咲くのか、という知的好奇心も分からないでもないのですが、それを容認するには多くの事例を見過ぎてしまった経験があります。危険性の認識共有という事は重要な見識であると思います。くどいようですが。 実はそんな難しいことを考えなくても水田や川の無い都道府県はありませんので、意外に身近にある植物でビオトープを楽しむことが出来ます。買ったり送料かけて送って貰ったり、というのは最後の手段で。 さて、植物の選定時に考えなければならないことがあり、一年草か多年草かという事は最低抑えておく必要があります。 多年草であれば根茎は冬でも残りますので環境さえ残せばまた発芽してきます。ところが一年草は種子となって越冬しますので、種類によっては採種しておかなければならなかったり、発芽できる環境を考えてやる必要が出て来ます。私の自宅周辺、徒歩圏で採れる水生植物を中心に分類してみました。
続いて一年生植物ですが、採種と種蒔きに注意が必要な種があり、開花・結実時期の見極めが重要です。勝手に落ちたところから生えてくる種もありますが、基本的にはそれなりの管理が必要となります。
植物の組み合わせですが、水槽のレイアウトとは異なり、維持の基本(放置なのか、採種か)を抑えておけば、単に好きだから、花の色の組み合わせが綺麗だから、という理由で構成しても何ら問題はありません。フィルターやヒーターが無く光も太陽まかせということで簡単ですが、その分発想は自由です。 睡蓮鉢で始めた場合、40cm程度の直径のものでも広大なイメージがあり、あれもこれも植栽してしまいがちですが、育って殖えた場合の配慮が無いと持て余してしまいます。終いにはメダカが泳ぐスペースも無い有様となり、競合に負ける植物も出てきますので余裕を持って植物を選択しましょう。 また、ホテイアオイは他種に対する排他的な物質(アレロパシー)を分泌するという話もあります。多種類を同時に育成する場合、このようなヤバげな植物は避けた方が賢明なようです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
たまにご質問頂く話ですが、睡蓮鉢の底土がドブ臭いが植物の生長に影響が無いのか、という点に付いて。 ドブ臭いのは嫌気状態で好気性のバクテリアが機能していない状態に他なりませんが、これは水槽の理屈がそのまま当てはまらない部分でもあります。結論を言えば「問題なし」で水草が調子良く生長している睡蓮鉢でも底土を触るとドブ臭さがあります。少し深く考えてみます。 嫌気での主な害は還元鉄(二価鉄)やガスによる発根の抑制です。(一般的な根のある)植物は発根出来なければ生長出来ません。この点をクリアーするために植物体は活動開始と同時に酸素呼吸を行い、根の部位に酸素を送り続けます。根の周囲を好気的にしているのです。この動きによって還元鉄が比較的無害な酸化鉄になったり鉄バクテリアを呼び寄せたりして防衛を行うわけです。 言い方を変えれば、根が張って行く部分は自動的に機能するようになりますので何ら問題はありません。事実睡蓮鉢の用土を交換する際など非常にドブ臭く、用土中にはグレーがかった粘土状の塊(グライ)があったりしますが、それが原因で植物が生長しないということはありません。 水そのものが嫌気(死に水、水が腐る)ではこれも不可能ですが、実はそんな環境でもウリカワやヒルムシロは育ってきます。これは酸素呼吸の重要な目的、生長エネルギーの確保を植物体内のアルコール発酵によって代替しているからだそうです。このような特性を「嫌気耐性」と呼ぶことがありますが、通常の植物をディーゼル推進で定期的に浮上、空気の入れ替えが必要な潜水艦とするとウリカワやヒルムシロは原潜ですね。 横道にそれましたが、ドブ臭い用土になっても問題なし、です。肥料の入れ過ぎなど別な要因で嫌気的になるのは問題です。還元鉄よりもダメージが大きいメタンなどのガスが発生しますので。
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湖沼での水草の密度を推し量る術として、沿岸に水草の切れ端が打ち上げられているかどうかを調べる、という方法があります。 この切れ端は「流れ藻」「切れ藻」などと呼ばれていますが、千切れて朽ち果てて行くものではありません。それどころか水草の有力な無性生殖の手段となっているのです。もちろん打ち上げられたものの中には不運にもそのまま朽ち果てるものもあるでしょう。しかし本来は次の波で帰って行き、根をおろして新たな群落のパイオニアになるはずなのです。 非常に短期間に琵琶湖に広がってしまったオオカナダモは実は日本には雄株だけしか帰化しておりません。有性生殖(種子形成)は不可能ですが、流れ藻だけであれだけの繁茂がなされてしまったほどです。もはや「無性生殖の一手段」ではなく「版図拡大の主たる手段」とも言えるでしょう。 水草がこのような繁殖方法を行うようになった理由は分かりませんが、植物生理として分化全能性(一部の切れ端から根や茎、葉など各部位を再生する性質)を持っていますので合理的と言えなくもありません。 さて、このような事情ですので実は「水草を採集する」という点に於いて生えているものを引っこ抜くのも流れ藻を拾うのも本質的には何ら変わりません。水槽で水草を育てた事がある方なら「ピンチカット」とか「差し戻し」はご存知だと思いますが、これも人為的に流れ藻の状態を作り、分化全能性を利用していることに他ならないのです。 私自身は第一部に書いたように採集にネガティブイメージ、特に「絶滅」という言葉は結びつきませんので引っこ抜くのも拾うのも問題はないと考えていますが、採集に絶滅を絡めたネガティブイメージを持っていると思われる方からご自分の採集に関して「流れ藻を拾ったものなので・・」というお話がありましたので「そうじゃないよ」ということで書かせて頂きました。それだけの話ですが・・ |
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